第25話 燃やして撃ちました(アンナさんが)。

 虫って案外、生命力強いよね、と思いました。


 クモは肢を切られて緯糸に絡まってアンナさんに燃やされたにも拘わらず辛うじて生きていて、糸に延焼して巣も焼けたけど、一部は残って葉っぱに落ちてクモを固定する縄みたいな感じになっていた。アンナさんの力加減を称賛しつつ、ボクが魔力を吸い尽すことにする。


【熱いのでお気をつけください】


 ボクの移動速度じゃ移動してる間に冷めるでしょ、きっと。


 ところでこの糸って蛋白質だよね、栄養素とか魔力の素になったりする?


【鑑定中──、結果を表示します。栄養素としては蛋白源には成り得ますが、現在の天羽様は魔微毒蝶の幼体なので不要ではあります。また魔力としては緯糸の一部に粘着力強化の為に使われており、回収するかは天羽様次第になります】


 うーん、糸はクモ本体を処理してからにしようか。怖いし邪魔だし、落ち着いて試したい。魔力を吸ってる間の索敵とかはお願いね。


【畏まりました】


 というわけでのそのそとクモのところまで移動。相変わらず機動力に恵まれないボクなので、漸くクモのところに着いた時にはやっぱり冷めてました。そして自分の巣に絡まりながら、諦めずに何とかしようと糸を噛み切っている最中のクモとばっちり目が合いました、コッワィ!!


【追加で電撃を放ちますので、結界の万全維持をお願いします】


 はぁい、と返事をした矢先にバリィッ、と音がしてクモに雷が直撃した。多分、人間からしたら静電気くらいの規模なんだろうけど、きっと常識的なサイズのクモなので結構効いたらしい。見るからに眼が澱んだ。


【天羽様を怖がらせるなど万死に値します】


 それでも半殺しに留めてくれるなんて、お嫁さんの気遣いが素敵過ぎる。


【妻の為、夫として当然のことをしたまでです】


 ここで反論を諦めると大変なことになりそうだから何度でも言うね、ボクが夫!


 さて置き、クモの腹部分にへばりついて魔力を吸い出す。気絶しているからかカマキリの時みたいな抵抗はないんだけど、アンナさんが成体って言ってたし量が多そう。クモが起きる前に吸い尽さなきゃ。


 そういえば終齢幼虫になったら共食いも辞さない大食漢になるんだけど、若齢幼虫ってこのクモ食べられる?


【検索、及び鑑定中──、結果を表示します。可食ではありますが、魔微毒蝶の幼体では胃の容量に難がありますので、どうしてもお食べになるのでしたら私が一時的に保存し、終齢幼虫まで昇化した後に改めてお出しします】


 食べたい、っていうか毒が欲しいんだ。2割じゃなくてもっと、出来ればまるまる欲しい。


【全てにはならないかもしれませんが、死骸から毒袋、及び毒腺を回収しますか?】


 出来るなら、お願い。残りの残骸は少し離れた場所にでも捨てちゃって、アリにでも回収して貰おう。


【畏まりました】


 よし、毒も回収が出来そうだし、さっさとこのクモを斃しちゃおう!

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