第24話 先客がいました。

 アンナさんとの相思相愛を再確認している間に、新たな餌場に到着しました。

 ……したんだけど。


【好都合ですね、倒して魔力と毒の糧にしましょう】


 先客がいました、ボクからするとバカでかいクモです、人間からすればそんなに大きくもないんだろうけど。


 アンナさん、アレ、何?


【魔蜘蛛の成体です。若い個体ですので老齢のものに比べ生命力、及び魔力は劣りますが、それ故に今の天羽様が倒すなら丁度良いかと】


 もしかしなくてもアンナさん、コイツがいるって分かっててこの葉っぱを選んだよね?


【はい】


 どうやって倒すかの算段、ってついてる?


【魔蟷螂の幼体を同じく、私が肢を切り落とします】


 先ずそれは最優先事項だけどその後に糸を使われる可能性もあるし、毒も消化液も使われるだろうから万が一にも噛みつかれたら不味い。


 それ以前にどうやって近づこう。ある種のクモの雄は雌に近づく為に、振動が伝わらないように少しずつ巣の糸を嚙み切って進む、っていうのを真似するしかないかな。でも経糸はベタベタしないとしても、バレて暴れられて落ちて緯糸にくっついたら目も当てられないしなぁ。


【浮気は許しません】


 あとアンナさんが怖い。ヤキモチ妬いてくれるのは嬉しいけど、交尾じゃなくて殺す為に近づこうとしてるんだからね、ボクにはアンナさんだけだからね。


【そう言ってくださるととても嬉しいです。しかしあまりにも危険ですのでお考え直し下さい】


 あのクモ、本当に命懸けで子孫を残すんだなぁ、と男として感動すら覚える。


【天羽様には不要な懸命です、今は女性ですし】


 命懸けても男の身体と夫の座は取り戻したいんだけどね?


【お言葉ですが、夫の座については一瞬たりとも天羽様のものだった時がありません】


 アンナさんとしてはそうなるんだろうけど、ボクの認識ではずっとボクが夫なんですよ!


【敗色濃厚の自覚がおありなのに?】


 取り敢えずあのクモ狩ろうか。


【話題転換、及び天羽様においての現実逃避と問題の先送りの気配がしましたが、概ね同意です】


 言わないで欲しいこと、って多いよね、悲しいことに。


 で、とにかくあのクモを倒さないとこの餌場が安全地帯にならない。ないと思いたいけど、ボクが餌として魅力的に見えたら巣から離れて食べにくることも考えておかないと後手に回って手遅れ、なんて事態になりかねない。


 避けられる危険は避けたい。


【提案します──、巣ごと焼き払いますか?】


 この葉っぱに延焼とかは? あと魔力はどのくらい使いそう?


【延焼も魔力も、火力によります】


 肢を切り落として緯糸に落下させてクモだけ燃やせそう?


【鑑定中──、結果を表示します。比較的に細かい制御が必要になりますが、可能です】


 じゃあそれでいこうか。


【魔力、及び毒の回収率が下がりますが、よろしいですか?】


 命には代えられないよ。もしそれだけやって生き残ってたらボクが魔力吸い尽してトドメ刺せば良いし。


【畏まりました】


 さて、ボクはクモが襲ってきた場合に備えて結界を今出来る万全の状態にしますか。

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