第23話 再確認しました。

 粘りに粘ってアリが視界に入り始めた頃、カマキリが動かなくなって一気に魔力が流れてきた。


【魔蟷螂の幼体の生命反応が消えました。生命核を抽出して保存します】


 コイツも幼体だったのか。言われてみれば確かにカマキリ、っていうか虫とはいえ魔物のイメージに比べて小さい気はする。ちょっと気の毒だけど、ボクに目をつけたのが運の尽き、ってことで。


 さて、トドメを刺せたからには長居は無用。アンナさん、お願いします。


【葉っぱから絶対に離れないようにして下さい。また不測の事態に備えてその葉っぱは移動先で収納へ入れますので、今は魔力を吸わないようにお願いします】


 定型のアナウンスらしき言葉の後に何処からか現れた葉っぱへ跳び移ってしがみついた途端、突風が吹いてボクが乗った葉っぱは宙へ舞い上がった。こういう時だけ足がたくさんあって良かったな、と思う。最近になって漸く慣れてきたんだけどね。


 葉っぱが空中でくるくる回転する間にちら、っと見えたカマキリの残骸にはアリが至近距離まで接近している。危なかった、もう少しでカマキリ諸共に餌認定されるところだった。


【そうなった場合、アリを殲滅して生命核を確保します】


 魔力の消耗が激しそうだから、今は撤退しようね。


【畏まりました】


 さて、この調子で魔物を狩りたいんだけど、移動先の候補って、また同じ葉っぱ?


【探索中──、結果を表示します。ご推察の通り、同じく魔魅夢酩妄毒草になります】


 数日はまた少しの食餌(毒)と吸えるだけの魔力になるかな。うーん、ボクの移動適性が低過ぎる、迎撃はアンナさんがどうにかしてくれるから何とか出来るけど、こっちから仕掛けられないのは思った以上に痛手だ。


【現在使用中の手段はお気に召しませんか】


 ジェットコースターは好きだよ。でもこの移動方法は魔力を使うし、魔力も葉っぱもなくなったら長距離の移動が出来なくなるし、不便ではあるよね。運んで貰っておいて文句言うな、って話になるけど。もう少ししたら終齢幼虫だし、ボクも少しは動けるようになるかな?


【鑑定中──、結果を表示……、正直に申し上げた方が宜しいですか?】


 大丈夫、成虫と比べたら終齢幼虫の移動能力なんてタガが知れてるのは分かってるから、悔しいけど。


 でもそうなると向こうから来て貰うしかなくなるのに、クモみたいに待ち伏せ型ってわけでもないから罠なんか張れないし、張れたとしても大群で押し寄せられたら対処に困る。考えれば考える程、結局は魔力の残高の問題に戻ってしまう。苦い葉っぱを全滅させるわけにもいかないし、終齢幼虫になった時の宛ては後で食い荒らす予定だから前倒しは避けたいし、魔物は定期収入にはならないし。


【提案します──】


 すっごい嫌な予感がするけど、念の為に、どうぞ


【魅了を使って移動性の魔物を誘き寄せるという手段があります】


 ねぇ、それ、ボクは対象からどういうふうに魅力的に映るの??


【食餌的か性的かの二択になります】


 どっちも嫌なんだけど!?


【私も嫌です】


 何で提案したの????

 あと使われたアンナさんはボクをどういう目で見てるの????????


【繁殖可能な対象としてこれ以上なく魅力的に見えています】


 性的な目で見られてる! 知ってたけど!! ボクが原因だから責任持ってアンナさんは幸せにするけど!!!!


【それだけでなく、心通わせる相手として、添い遂げる相手として、天羽様しかいない、と思っています】


 ……うん、ボクも、責任だけじゃなくて、アンナさんが大好きだよ。

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転生してイモムシ(♀)にされたボクが案内係さん□嫁に□るまで ヒコサカ マヒト @domingo-d1212

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