第22話 悪寒がしました。

 カマキリと格闘(?)すること暫く、漸く抵抗が弱まって一気に魔力が吸い易くなった。


 他の捕食者が来る前に一気に片付けてしまおう! ってことで、へばりつく為に使っていた体力を魔力を吸い出す方へ回す。急いで吸い尽してトドメを刺さないと、


【警戒を要請します。すぐには此処へ到着しませんが、アリ複数個体が接近中です】


ほら来たぁ……。弱った生物がいるとすぐに捕食者が寄って来る。弱肉強食、貴重な蛋白源だもんね、仕方ない。


 でも魔力を諦める訳にはいかない、肉体の方には用はないけど。


 アンナさん。


【如何しますか?】


 ギリギリまで粘るから、葉っぱ出して、また風で飛ばして。


【承知致しました、いつでも離脱可能な状態になるよう、準備します】


 イモムシの機動力でアリから逃げられるとは思わない。魔微毒蝶の幼虫が不味い、ってことを周知されるには、少なくともボクと同種の個体が何体も犠牲になる必要があって、この辺りにちょっとでも無茶して昇化したボクの同種固体がいる可能性は低いんじゃないかな、必然的にボクより毒か魔力の強い昇化先の個体も。


【ご推察の通り、魔微毒蝶の幼体の別個体および魔微毒蝶の三齢幼虫の昇化先候補個体は付近に存在しません】


 じゃあやっぱり、この辺りで一番不味いイモムシはボクで、他のイモムシと同じく美味しくいただけるものだと思って寄ってくるだろうね。簡単に食われてやると思うなよ!


【私が絶対にお守りします】


 ボクのお嫁さんが何処までも心強い。


【私の妻が今日も可愛い】


 ボクは夫の座を諦めないから!! とか言い合いをしながらも魔力は吸い続ける。死活問題だからね。アンナさん、今までもだけど、ちゃんと構ってあげられなくてごめんね。


【必要なことですし、睦み逢いは天羽様が成虫になってからでも遅くはないので】


 うん、それまでに夫の座を奪取しないと拙いね、一瞬だけど悪寒が全身を駆け巡ったよ。


【成虫まであと12~15日程度でしょうか、楽しみですね】


 お嫁さんの肉食度合いが過ぎる、骨の髄までしゃぶられる気しかしない……、骨ないけど。


 ……、あ、成虫で思い出した。


 アンナさん、ボクの身体に干渉出来る?


【宜しいのですか?】


 また悪寒がしたけど、お願いだからアレなところはいじらないでね、フリじゃないからね。


【軽い悪戯、冗談です】


 ボクの精神衛生の為にもそういうことにしておくね。


 で、六齢幼虫まで幼虫期間を延ばして欲しいんだ。成虫になったらどれだけ昇化が出来るか分からないし、回数を出来るだけ増やしておきたい。ボクが自力で調整が出来るならそうするけど。


【鑑定中──、結果を表示します。栄養の問題ですので、天羽様ご自身が可能か否かで言えば可能ですが、確実性を増す為に私に任せていただくことをおすすめします】


 それじゃあやっぱりお願いするね。念の為にもう一回だけ言うけど、アレなところはいじらないでね。


【天羽様に嫌われるようなことはしません】


 その言葉は素直に信じられるから、やっぱりアンナさんとは相思相愛なんだな、って思う。


【成虫になる時が楽しみですね】


 それまでに解決しなきゃならない問題はあるけどね。

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