第21話 へばりつきました。
異世界のカマキリ、って漫画とかラノベだとよく鎌で相手を斬り飛ばしてるんだけど、アレもそうなのかな?
【検索中──、結果を表示します。鎌部分に魔力を通すと、刃物上に変質する種族特性を持っています】
フィクションだと見た目からそうなり勝ちだろうし、演出的に恰好良いのも分かるけど、現実になると、えー、だね。ボクの身の危険もなくはないけど、地球のカマキリの捕食動作を考えると、地球出身の生物好きとして残念が過ぎる。
あの鎌状の前肢は捕食対象を捕える為のものなのに、斬り飛ばすならもうそれは別物でしょ。
現れたカマキリに白い眼を向けながら、ボクはただじっとしている。
虫は、というか動体視力に特化した生物は、静物を視認出来なくなる傾向がある。動きが遅ければ遅い程に見えなくなる。鳥の糞に擬態している外見で土の上にいることも相俟って、動かなければボクがカマキリに見つかることはまずない。動かない、っていうのも長時間になればストレスだから長くはもたないかもしれないけど、短時間なら大丈夫。この時間は観察に宛てよう。
外見はほとんど地球のカマキリと変わらない。微妙に鎌の部分が鋭くて刃物っぽさに磨きがかかっているような気もするけど、逆三角形の頭も細い胴体も短い触覚も、ボクの記憶にあるカマキリだ。カマキリは捕食対象であるボクを探してうろうろと歩き回り、きょろきょろと頭をうごかしているけど、ボクを発見した様子はない。結界は展開したままだから、きっと魔力を認識する能力もないんだろう。何かを感じたのか近づいてきたり、見当違いの方向へ離れたりを繰り返してる。
【天羽様】
そうこうしている内にアンナさんが戻ってきた。
【提案します──、極狭い範囲に攻撃を展開し、翅と肢を斬って行動不能に追い込みます】
出来るだけ根本から、同時にね。逃げられたり居場所を勘付かれたりしたら面倒だから。
【承知しました】
言い終わるのとほぼ同時にカマキリの翅が胴体からスパッ、と離れた。痛覚はないのか鈍いのか、カマキリは翅がなくなったことに気付きはしても逃げる素振りはなく、怒りに任せて前肢の鎌を滅茶苦茶に振り回し始めるけど、その前肢を含む右側の肢が翅と同じように胴体から斬り離された。バランスを崩したカマキリは地に倒れ伏つつも残った左前肢の鎌を振り回し続けている。
とはいえその鎌もアンナさんがすぐに斬り落としてしまう。これでもうこのカマキリは逃げられないし、攻撃も出来ない。だというのにカマキリは残った胴体だけでジタバタと藻掻いていて、近寄ってもへばりつけるか分からない。この世界でも虫は意外に生命力が強いらしい、あのカマキリは魔物だからきっと余計に。
【肉食生物が来る可能性が高いです、可能な限り迅速にお願いします】
確かに動物でも魔物でも、他の捕食者が来たらボクまで餌認定にされてしまう。胴体だけで暴れているカマキリに近づいて、意を決してその身体に跳びついた。何かにへばりつかれたと気づいたカマキリは余計に暴れるけど、ここで放す訳にはいかないから、カマキリに噛り付いて魔力を吸う。当然ながらカマキリの抵抗が強くなる。余計に暴れるし、魔力の吸収もうまくいかない。カマキリも生きているから必至だって分かるけど、ボクだって将来がかかっている。
ボクとアンナさんの幸せな未来の為に! 犠牲になれ、カマキリ!
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