第5話 食べました。

 ところでアンナさん、この葉っぱ食べても大丈夫?


【鑑定及び解析中──、結果を表示します】



星虹橘樹の葉

 植物型魔物の一種、地球産柑橘類に似た性質を持つ。

 夜間に天空から降り注ぐ魔力を吸収するのでとても高い魔力を蓄える。

 状態:良好



 何かに寄生されているわけでもなさそうだし、この樹が死なない程度に食べさせて貰おう。


 いただきます。


 うーん、仄かに甘い。人間だったら青臭いというか葉っぱの味しかしなかったと思うんだけど、何というか香りがすごく良い、多少の苦みもあるけどえげつない程じゃないし、普通に美味い。卵の殻とは雲泥の差。


 あと魔力がすごい勢いで増えている感覚がする。え、これって貴重な樹だったりする?


【はい】


 はい、て。現在地って何処?? あとさっきは流しちゃったけどアンナさんは今何処にいるの??


【人の生活圏からやや離れた森林地区の、かなり奥まった場所ですね。星虹橘樹自体はこの辺りに散見されますが場所が場所なので貴重ではあります。私の現在地は異界ということになっています】


 誤魔化してそうだからアンナさんの現在地には触れないでおくけど、行動範囲が広がったら地図が欲しいね。


【作成しておきます】


 世界の真理への接続権を持っているアンナさんが作る地図って凄そう、今から楽しみでしかない。


 さて置き、状態良好な葉っぱを食べ続ける。うーん、一齢幼虫だからかそんなに食べられない、葉っぱ一枚すら食べ終わらない内にもうお腹一杯だ。けど安易に休むのも怖いし、魔力はとにかく貯めておきたい。とはいえこれ以上に食べても吐き戻す未来しか見えないし、最悪は身体を壊す。


 ……あ、壊れたら治癒か回復で治せば良いのか。


【治癒や回復にも魔力は必要ですので、お考え直し下さい】


 でも使えば技量は伸びるよね?


【はい】


 じゃあ、食べる。食べて魔力を貯めて、敵を倒して、早くアンナさんに逢う!


【お気持ちは嬉しいのですが、やはりお考え直しいただき、今はお休み下さい。その間になんとかします】


 ええー、ボクのわがままなのにアンナさんが働くって……。


【天羽様がお身体を悪くされたら嫌だという、私のわがままですよ】


 ぐぬぬ、アンナさんがボクを甘やかし過ぎる……、ダメになってしまう……。


【ダメになってもずっと傍にいますね】


 違うこれダメにされるやつだ。そんなアンナさんも愛してるけど、ボクだってアンナさんをダメにしたい!


 小さな反抗心で葉っぱに噛り付くけど、本当にお腹一杯で口に入れただけで飲み込めない。うぐぐぐ……。


 ……ん? 少しだけど魔力が増えた?


【口に入れたからですかね? 食べるよりは遅いですが魔力が吸収されています】


 じゃあ、吸う、吸いながら寝る! 誤飲してもこの葉っぱなら問題ないし!


 口に葉っぱを入れたまま、またのたのた歩いて上の葉っぱの影になっている場所まで移動する。


【お休み中の索敵はお任せ下さい、此方の判断で魔力を消費する可能性がありますが、絶対にお守りします】


 うん、ありがとう……、何か急に眠くなっちゃったから寝るね、お休みなさい……。

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