若齢幼虫期
第4話 孵りました。
女体化と魔物(虫)化され攻撃手段を封じられて異世界へ送り出されました甘城 天羽です、こんにちは。
【これまでの説明をありがとうございます】
これで済む説明ってどうなんだろうね。あと幼体のおかげで女体化している実感が湧かなくて良いのか悪いのか……。
【成体になったらわからせられるやつですかね】
言わないで忘れていさせてていうかこれだけでも解呪して!
さて置き、さすがにもう逆戻りはないと思うし、卵と思われる薄い殻を破って改めて森の中という天国へ。人間の時とは違って聞こえる鳥や虫の声、有体に言って恐怖を覚える。天国がいっきに人外魔境へ早変わり。
【私が守りますので、ご心配なく】
とても頼もしいけど、アンナさん、召喚が出来ません。
あと守るとかそういう以前にふれあいが出来ません、今のボクが虫だからアンナさんが嫌かもしれないけど。
【どんな天羽様でも愛しています】
ありがとうアンナさん、ボクも愛してる。問題ないならふれあいたいので原因究明お願いします。
【原因解析中──、天羽様の技量が足りていないようです】
うっそでしょ、初っ端詰んだ!? 身を守る手段が1つもないんだけどどうするの!? さすがにアンナさんに逢う前に死にたくない!!
【どうにかしますので少々お待ちください】
アンナさんが黙ってしまったので、卵の殻をもりもり食べながら置かれた状況の把握に努める。現在地は何かの葉っぱの上、かな。低い視界のすぐ下から艶々した緑色が広がっている。比較的には柔らかい卵の殻から出る時に見えた自分の身体は黒っぽいし、動きから推測するにアゲハチョウの幼虫だと思う、一齢の。いや、虫型魔物ってなっていたから厳密に言えばイモムシではないのか、チョウ型の魔物の幼体ってだけで。
それにしてもこの卵の殻、味がない。触感はまぁ多分、悪くないんだけど、本能的に食べているだけで食べたいか、って訊かれたら否、って答えるね。不味くはないけど美味しくもない。
あとね、いくらアンナさんの召喚が出来ないって言っても他の何かを使役する心算がなくなっちゃったんだよ。ほら、アンナさんを幸せにすべきじゃん。アンナさんを召喚するまでの繋ぎとして他の何かを使役して、でもその何かを捨ててアンナさんの手を取るのって何か違うと思うんだ。だからボクはアンナさん一筋で行く。でも、そうすると攻撃手段が、なぁ……。攻撃が出来ない、っていうか攻撃魔法は覚えられず、攻撃力も上がらない、結果的に殺傷不可が成立する、っていう呪いのような気がする。あとでアンナさんに確認しよう。
食べ終わったし考えながら身体を動かすんだけど、手足は多いし短いし胴体ばかり長いし、人間の時とは感覚がまるで違う、率直に言えば動き辛い。これで外敵に襲われでもしたらあっさり食べられてしまう。
人間だったから食べられて死ぬ、っていう実感が薄い。しかも現代人、都会在住だったから野生動物と触れ合う機会すらほとんどなかった。さすがにクマが街に出て暢気に写真撮影するようなタイプでもなければ、射殺を否定するようなタイプでもなかったから自分を狙ってくる捕食者に何もしないとは思わないけど。
のたのた動いて葉っぱの縁に到着した。何でかって? この葉っぱを食べる為です。とはいえ外敵は捕食者だけにあらず、寄生虫も怖い。有名なカタツムリに寄生するアレとか、ね、我が身のことになりかねないんですよ。
【ご心配なく、私が守りますので】
アンナさん、お帰りなさい。
先程の倒置法のような台詞でアンナさんが戻って来た。ということは何とかなったのだろうか?
【召喚は無理ですが、私の現在地から主様の現在地へ干渉し、攻撃魔法を構築して敵を倒すことにしました】
アンナさんが攻撃に使うのはボクの魔力?
【はい。ですので魔力は常に貯めておいていただけると助かります】
おっけー、まりょくだいじに。
……で、アンナさんを召喚するには何がどのくらい必要なの?
【召喚魔法★7級の技量、そして魔力が必要です】
待って、★7、って今のままじゃどう足掻いても無理じゃん? 今の限界値☆5だよ?
【敵性生物の生命核を集めてください、それを使って召喚可能な技量まで能力値を改編します】
……つまり、魔力を貯めて敵を倒し、生命核を集めて能力を改編し、の繰り返し?
【そうなります】
大人しくもしていられない、か。せめて成体になれたら移動の範囲も広がったんだけど。
…………いや待てその前に!
寿命!! チョウだと長くても3カ月くらいしかない!!
【魔物ですので、その辺りは考慮いただかなくても問題ないです】
あ、そうですか。
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