第5話 筋トレ
「柊!もっと歯を食いしばれ!筋肉は血反吐を吐いた後についてくるぞ!」
「はい!」
「返事ははいじゃない、イエッサーだ!」
「イエッサー!」
魔法の勉強をしようとしていたところカリンさんに首根っこを掴まれ、俺は筋トレをさせられていた。
「さぁ!次は腕立て伏せだ!地面に顎がつくまで腕を下ろせよ!じゃないと筋肉はついてこない!」
「イエッサー!」
筋骨隆々なその腕に逆らえるわけもなく俺は仕方なく”カリンの筋トレ講座”に参加している。
「ぜぇはぁ、ぜぇ、はぁ、まじ、きつ、はぁ」
「どうした柊!何を弱音を吐いている次はランニングだ!あの夕日に向かって走れ!」
「い、イエッサー、はぁ」
そして3時間後
「よし!今日のトレーニングはここまでだ、筋肉に無理させすぎるといかんからな!帰っていいぞ」
「………い、さー」
もう無理、この筋肉達磨のせいで俺の体はもうボロボロだ。指一本たりとも動かない。あれぇ、やばい視界がぐらぐらだ。まともに焦点が合わない。空がぼやけて見える。さっきまで刺すように痛かった太陽の光が今では少し合叩く感じるくらいだ。
「やば、い」
「ん?どうした柊まだ筋トレが足らんのか?」
死ね!この筋肉達磨!な訳ないだろ!
「水が足らないんじゃない、その人尋常じゃないくらいの汗をかいているもの」
あ?この声はリューナ、か?微かに聞こえる声色はリューナに似ている気がする。
「あぁ、そうかそれならそうと言ってくれ」
「い、はぁ、ない」
疲れすぎて声が出ないんだよ!
「よし、じゃあ持ってくるから待ってろよ!」
どたどたと最早人間とは思えない足音を奏でながらカリンさんは多分水をとりにいってくれたのだろう。
あーガチで助かった。もうこのまま放置されたら死ぬところだった。脱水症状で死ぬとか考えたくもない。
「………治れ」
「ふえ?」
遠くから聞こえる短いその声とともに俺の視界は少しづつもとに戻っていく。今まで揺らいでいた視界が鮮明になっていき、だるかった体も徐々に軽くなっていった。包み込むような温かさとともに少しづつ体の疲れが取れていったような気がした。
「ん、あ、れ?」
気付けば起き上がれるくらい体力が回復していた。
「おーなんだ起き上がれたか、よかった、よかった、とりあえず水を持ってきたから飲め」
「ありがとうございます」
状況がのみこめないけどとりあえずカリンさんから渡されたコップに入った水を飲み切る。
「よし、危なく私が殺人犯になるところだった」
「ほんとまじで気をつけてください」
これだけはちゃんと言いつけておかないとな。今のは三途の川が見えていた。
………にしてもあの”治れ”ってもしかしてリューナ、か?
「あの、さっきまでここにいたのってリューナですか?」
「ん?あぁそうださっきまではいたんだがいつの間にかどっか行ってしまったな」
「………やっぱり」
「リューナがどうかしたのか?」
「あ、いやなんでもないっす」
「そうか」
ありがとな、リューナ。本当に助かったよ。
いつかお礼をしないとな。食事でも作ってやろうか、直接お礼を言うのは恥ずかしいからな。
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