第24話 錬金術の工程③
キャロットと一緒にポーション容器作成が楽しく、つい色んな形の瓶やキャップを作ってしまった。
キャロットも日頃作成に参加出来ないので、ここぞとばかりに作成していた。
「アキナさん!まだ作るんですか?・・・私の魔力が少なくなりました。」
「キャロットは何本作ったの?・・・私は瓶とキャップの組み合わせで8本だわ!」
「8本!・・・私は3本です。」
アキナと同じ材料を使い同じ要領で作ったのに、この差は何だろう?
「ガラス溶液が無くなりましたので、これで終わりにしましょう!」
キャロットは容器の窯を片付けてから、2人が作成した瓶とキャップを並べた。 「キャロットが作った瓶、綺麗で可愛いわ!」
キャロットが作成した瓶は、通常より丸みを帯びて少し透明度が増してるように見えて綺麗だ。
「アキナさん色んな形の瓶を作られたのですね?」
「最初は絵を見ながらイメージして、コツを掴んだので思いつく形の瓶を作って見たわ!」
「見たことも無い瓶もありますね!」
キャロットはアキナが作った色んな種類の瓶を手に取り、真剣な眼差しで見ていた。
「凄いです!この透明感は!!今まで見たことがないです!!!」
キャロットは手に取った瓶を高く上げて眺めていたが、何か違和感に気付いた。
「アキナさんが作成した瓶の、劣化防止検証をしましょう!」
キャロットが突然大きな声を出して、赤色の液体が入った瓶を取り出した。
「その液体は何んなの?」
「この液体は瓶に付与された劣化防止の性能を検証する実験液です。」
キャロットは商品用の瓶と、今しがた作ったアキナの瓶と自分の瓶の3本をテーブルの上に並べて、実験用の赤い液体を入れてキャップをした。
「液体の赤色がピンク色に変わり始めると、劣化が始まった事になります。さらに薄くなり透明になったら、劣化防止の付与が消えた事になります。」
「しばらく観察して、瓶の性能を検証しましょう。」
キャロットは、3本の瓶を棚の上に置いて日付を記入した。
「アキナさん、瓶の作成はこれで終了です。次は魔道具を作成しましょう!」
何故かイキイキした表情で、私の手を握り特化型工房へ移動した。
キャロットの案内で特化型工房室へ入った。
「ここは私しか使用しませんので、アキナさんも自由に使って下さい。」
「有難う、とてもいい部屋だわ!落ち着くわね~」
部屋の中央に大きな作業台があり、壁には材料を置く棚とキャロットが作ったと思われるいろんな魔道具が置いてある。
そして一番気になったのは、ゆったり座れるソファーとテーブルの上に置かれたクッキーに釘付けになった。
アキナの視線に気が付いたキャロットは、魔石を利用してお茶の準備を始めた。
「アキナさん、少し休憩しましょう!そこのソファーに掛けて下さい。」
キャロットに勧められてソファーに座ると、キャロットがお茶をテーブルの上に置いて反対側のソファーに座った。
「ここが一番落ち着きます。アキナさん、お菓子もどうぞ~」
キャロットの言葉に甘えて、お茶とお菓子を頂いた。
「美味しい!ハーブティーね、いい香りがするわ・・・このお菓子も美味しい!!」
「ハーブは工房の庭で栽培しているの!」
「菜園があるの!凄いわね~今度見てみたいわ!」
「昔は薬草や魔法素材になる物を栽培していたのですが、今は出来ないです。代わりに観賞用の花にハーブや香辛料などの植物を栽培しています。」
「なぜ出来なくなったの?」
「薬草や魔法素材の植物の苗を植えても育たなくなったのです。」
「いろいろ試してみたのですが、育たない原因がわからないです。」
「土が合わないのかな?」
「採取した場所の土を持って帰り、植えてみたけどダメでした。」
農業の事は詳しくないので、これ以上はやめておこう。
お茶の時間も終わり、魔道具の作り方を教えてもらうことにした。
「魔物を倒すとたまに体内に魔石がある事があります。」
「キラキラした宝石みたいな石ですね!」
「魔石にはいろんな性質をもっている物があり、その一つに魔力を封じ込める石があります。その石にいろんな魔法を付与して魔力を封じ込めます。」
「付与された石を、アクセサリー等の道具にはめ込んで使用するのが魔道具です。」
「直接道具に魔法を付与できないのかな?」
「出来ないことはありません!アイテムバックも直接付与したものです。」
キャロットがそう言いながらも、歯切れが悪い。
「直接付与出来るのは、上級錬金術師で膨大な魔力が無いと作れません。」
「仮に上級錬金術師は可能としても、人が持つ魔力には限界があります。その魔力の代わりになるのが魔石です。」
「魔石に何種類かの魔法を付与して、いろんな組み合わせで魔道具を作ります。」
「それじゃ~キャロットもアイテムバックを作れるんじゃないの~」
「アイテムバックに必要な付与は、上級錬金術の魔法付与が必要なのでまだまだ先の話になります。」
「でも、キャロットはそれを目標にしているんでしょう?」
キャロットは、恥ずかしそうにうつむいた。
顔を真っ赤にしてうつむいているキャロットはとても可愛いよ!
抱きしめたくなるのをグット我慢した。
「私も手伝うね!」
キャロットは呆れたような表情で、魔石の説明を続けた。
「魔法を付与して使用する魔石の他に、魔石に魔力を与えると発動する石と、魔石自体が魔力を持っている石があります。」
「どういうこと?」
「魔力を与えると発動する石は、加熱や発光等の動力になる物で、魔石自体が魔力を持っている石は、石自体に魔法が封印されており、魔法を使えない人でも石を使えば魔法が使えます。」
「魔石は便利な石だわ!」
「はい!利用価値が高いので、高値で取引されます。また武器や防具にも加工されますので、アキナさんも魔物を倒したら手に入れて下さいね。」
キャロットの魔力が残り少ないので、魔道具の作成は次回にして、今日は説明だけにした。
「アキナさん、今日はこれで終わりにします。続きはまた明日にお願いします。」
キャロットは工房の片付けがあるというので、私は1人で町に出かけた。
「そういえば勝也を見ていないわね!目を離すとすぐ何処かに行くんだから!」
彼の事はほっとくとして、まだ日が高いので散歩がてら薬草採取の依頼でも受けようかと考えながら、足はギルドに向かっていた。
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