第23話 錬金術の工程②
キャロットは普段1人で作業する事が多いため、アキナと会話を交えながらの作業を特別に感じていた。
それに、アキナの頭の回転の良さに驚いていた。
作業はすぐに覚えるし、工程の疑問もその場ですぐに尋ねられる知識を持っている。見た目は平民なのに、教養はどこか貴族のお嬢さんだと思わせる。
キャロットはアキナを観察しながら、普通に接っしていていいのかなと考えるが、アキナと話すのはとても楽しいし新鮮な気持ちになれていた。
「粉末にした薬草の次は、聖水の作成です。」
「聖水?・・・教会の儀式で使う水のこと?」
「教会で使うかどうかは知りませんが、この窯に水魔法で水を貯めます。」
一番最初のポーション作りで使用した窯が、棚に何個も置かれている。
「窯がたくさん在るけど、まとめて作らないの?」
「そうですね・・・注文があれば全員で作りますが、普段は私1人が作成するだけの分しか準備しません。」
キャロットはそう言いながら、工程の続きをする。
「水を貯めた窯を浄化魔法で、不純物を消し去されば聖水の出来上がりです。」
「この後は朝行った手順で、窯を沸騰しない程度に沸かし、粉末の薬草を入れてかき混ぜながら魔力を注ぎます。」
「出来上がった窯を冷やして、ろ過した液体を小瓶に詰めて完成ですけど、この小瓶もポーション専用の容器で手作りです。」
「この小瓶も手作りなの!」
「ポーションは鮮度が大事です。時間が経過するほど効果が薄れてきます~なので劣化を防ぐ為にポーション専用の瓶が必要になります。」
「一般のポーションは、町の道具屋で売っているガラス瓶を購入して、劣化防止の付与魔法を掛けて販売していますが、以ても1週間程度しか効果がありません。」
「賞味期限が1週間ね~それを過ぎるとどうなるの?」
「日にちと共に効果が薄れて、味が苦くなり飲みにくくなります。」
「中級の錬金術師の付与魔法であれば1ヶ月は保存できるそうですが、私達初級錬金術師では無理なので、工房では材料に劣化防止の付与魔法を施してからガラス瓶を作成することで、2週間程度保存できるように改良しています。」
「ガラス職人の仕事もしないとイケないのね!体力と技術が必要ね!!」
「魔法を使用するんでそんなに大変な作業ではないですよ!ただ時間と材料費が掛かるので他の店ではしないんです。」
「魔法で作るの?」
私はてっきりガラス職人が熱い工房の中で息を吹き込み、手回ししている姿を思い浮かべていた。
「そうよね!魔法があるんだから簡単だよね!」
「実際ここではどうやって作るの?」
「そうですね~今から一緒に作りましょう!」
「面白そうだわ~」
「普段は、ヨーデルさんとフラットさんが主に担当して、作り置きしています。」
2人のお兄さんね!
一番年長のヨーデルさんと次に年を取っているフラットさんは、ここでは古株で発言力が有るみたいだ。
「結構作り置きしているわね!」
棚の木箱に容器とキャップの部分が別々に置かれてある。
「容器は同じだけど、キャップの部分は何種類か違う形で作られている。
「ポーションの種類でキヤップの形も変えているんです。色も違いますけど、現場では緊急性が必要な場合手探りでも分かるようにしています。」
ガラス瓶の容器を手に取り、もう少し透明感があればオシャレなのにな~と考えていたら、キャロットから一度作ってみましょうと勧めれらた。
なぜかウキウキしながら準備をするキャロット!
「キャロット!なんだか嬉しそうだね?」
「そうですか?ポーション容器の作成は、通常は男性の方しか作成しないんですが、私も作って見たいと思っていて!」
「この容器を見たら、もっと可愛らしい容器が作れたならいいな~と」
「キャロットも思った!私もセンスないな~と思ったのよ~」
男性陣が一緒懸命作った容器を、あっさりと否定した。
今回はノーマンから、アキナにイチから工程を教えるように依頼されているので2人から怒られることはない。
ガラス容器の材料に使われる、珪砂・ソーダ灰・石灰石の3種類に劣化防止の付与魔法を施し、高温に熱した窯に順次入れてかき混ぜながらドロドロの液体上にする。
次に作成したい最大値の型枠に液体を流し込む。
流し込んだ型枠に容器をイメージした魔力を与えると、型枠の液体がイメージしたガラス瓶になるそうだ。
ちなみに商品用の瓶を作る時は、一度に大量の瓶が出来るように型枠が格子状になっており、最大で20個が出来る。
利点は一度に同じ物が量産でき、欠点は魔力の消費量が大きく1日1回しか作成できない事である。
「壁に貼られてある、ポーション瓶の絵と3種類の数字は何かしら?」
明菜が壁に貼られてある張り紙を指さして尋ねる。
「同じ種類の瓶が作れるように、絵を見ながらイメージすると同じ物が出来ます。」
「3種類の数字は、材料の配合です。検証の結果、この配合比が強度的にいいそうです。」
「配合比を変えれば、薄くて透明感のある瓶が出来るわね!」
「そうですね!でも耐久性がなく、すぐ割れてしまいそうです。」
だったら、強化ガラスにすればいいんじゃないかな?
グラスは透明の方が中身が綺麗に見えて、お洒落だわ!
「今日は実験の為、1本用の枠で作りましょう!」
キャロットが嬉しそうに準備をする。
キャロットに言われるままに作業を行い、ポーション瓶をイメージしながら魔力を与えた。
思ったより魔力制御が難しく、最初はなかなかイメージ通りの瓶にならなかったが、キャロットのアドバイスで何とか完成した。
「出来たわ!キャロット見て出来たわ!!」
「アキナさん!凄いですよ!絵の形とは少し違いますが、コチラの方がゴージャスに見えますよ!」
最初の1本がうまく作れたので、調子に乗って何本も作成してみた。
キャロットも日頃ポーション瓶の作成は出来ないので、一緒になって作っていた。
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