第22話 錬金術の工程①
第3騎士団がお店を出た後、ミリアとキャロットが座り込んでから暫く無言の時間が過ぎた。
「もう心臓が止まるかと思ったわよ!」
「私も生きた心地がしなかったです。」
ミリアとキャロットはお互いを手を握り合い喜んでいた。
その2人の姿を見ていた明菜は、大騒ぎする理由がわからないままその場にいた。
「なぜそんなに大騒ぎするの?」
「アキナさんは知らないかもしれませんが、騎士団のお偉い方の機嫌を損ねると商売が出来なくなるんですよ。そうなったら美味しいご飯が食べれなくなるんですよ!」
キャロットが明菜がわかるように簡潔に説明した。
(なぜか?美味しいご飯が食べれなくなるのは困る明菜であった。)
「騎士団長さんが優しい人で助かったわ!」
「アキナさん!工房に戻りましょう!残りの作業について説明します。」
キャロットはまたトラブルになったらミリアとアンダーソンに迷惑をかけると思い、早々にお店から引き揚げた。
お店に残ったミリアとアンダーソンは、アキナの対応に驚いてはいたが、事前にノーマンからアキナに知識と情報を与え、守ってほしいと頼まれていた。
「これからが大変だな~本当に何も知らないお嬢さんみたいだな?」
アンダーソンがミリアに問いかけるが、ミリアはアキナが作成しただろうと思われるポーションを手に取り眺めていた。
キャロットから催促されて店を出た明菜は、そのまま工房に連れ戻された。
「ネェ~キャロット・・・そんなに急いでどうしたの?」
「アキナさん~その場の空気を読んで下さいよ~仕事が無くなったら私クビになりますから!!」
キャロットは一刻も早く店からアキナを連れ出し、他の客に合わせないようにしたかった。
ノーマンから説明は聞いていたが、ここまで世間知らずのお嬢さんとは思わなかった。
息を整え落ち着いた所で、キャロットはアキナにポーション作りの説明を始めた。
「アキナさん、それではポーション作りの最初の工程を説明します。」
キャロットは棚になおしてある小さな箱から、乾燥した薬草を取り出した。
「この薬草は・・・」
「都市の周辺に生えている薬草です。最近は森の奥まで探しに行かないと手に入らなくなってきて入荷数が少ないです。」
棚には薬草を保存する箱がいくつも並べてあるが、半分以上はカラだそうだ。
「鮮度の良い薬草を魔法で乾燥させ、次にすり鉢ですり潰して細かく砕き、瓶の容器に保存して置きます。」
「鮮度が良くないとダメなの?」
「鮮度が悪いと効果が低くなります。薬草の効果は乾燥した時点で決定します。」
「私のバックは鮮度が変わらないから問題は無いわね!」
「えっ!アキナさんはアイテムバックをお持ちなんですか?」
「就職活動に使うバックでしょう・・・何でも入る不思議なバックで、採取した薬草も魔物の死体も腐らず出し入れができるから便利よね!」(下着の乾燥は内緒!)
「アイテムバックをお持ちだなんてアキナさんは凄いお人なんですね!」
「このバック、そんなに凄いの?みんな持ってないのかな?」
「何を言っているんですか!アイテムバックは過去に作られた幻の魔道具と言われており、現在は作れる錬金術師は存在しません。現存するアイテムバックは数も少なく国宝級ですよ!」
「アイテムバックが作れる錬金術師になるのが私の夢なんです~」
キャロットが目を輝かせながら力説する。
このバックの事はギルドの受付でも指摘されたわね!
「錬金術のレベルが上がれば、作れるんじゃないの~」
「アキナさん、簡単に言わないで下さい~アイテムバックの製作には上級レベルの実力と、空間魔法や時空魔法等の上級魔法が必要で、さらに膨大な魔力が必要と聞いています。今の私にはそこまでレベルを上げるにはとうてい無理です。」
「レベルを上げるにはどうすればいいの?」
「魔法と錬金術をひたすら使い、回数をこなさないといけないんです。」
「それのどこが大変なの?」
明菜は受検勉強・就職試験とひたすら勉強をしてきて、努力した分は自分の夢の為に近ずくと信じている。
キヤロットは明菜の言葉にキョトンとしている。
「1日の魔力を使って作れる数は初級ポーションであれば10本~20本が限界です。この作業を2年間繰り返してきても中級ポーションは出来ません。」
「王都にいる中級錬金術師は20年以上かけてやっと中級ポーションが出来るようになったと聞いています。」
「でも・・・回数をこなせば必ず出来るとも限らないんです。」
「何か問題があるの?」
「錬金術師が本来持っている魔力の量です。」
「魔法の威力や使用回数はレベルが上がれば増えていきますが、その人が1日に使用できる魔力は生まれた時に決まっているんです。」
「魔力量は増やすことは出来ないの?足りなくなったら他の人からもらう事は出来ないのかな?」
「マジックポーションで減った魔力を少し戻せますが、最大量を超える事はありません。それに他の人から分けてもらえるなんて事は、聞いた事がありません。」
明菜の疑問に、首を傾げるキャッロトであった。
「話がそれてしまいました!錬金術の続きを説明します。」
「はい!先生お願いします。」
2人は錬金術の話しで打ち解けた様子で、お互い笑いながら作業の続きを始めた。
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