第17話 居場所

 1人ソファーに座って今日の出来事を、思い返していた。


「今日一日いろんな事が起こって大変だったわ!」

 就職活動の面接に出かけたと思えば、バス事故に遭い、知らない場所で怖い目に遭い、親切な人に巡り合い、なぜか就職が出来て居場所まで与えられてる。

 何だろう!・・・私の人生は何なの!

 この先どうしたらいいのかわからない!

 元の場所に戻れるのかな?

 不安が募っていき、ソファーから立ち上がり窓を開けてテラスにでる。

 空を眺めると、月が二つ見える。

「ここは地球じゃないみたい!!」

 月の明かりで外は明るく見える。ふと真下を覗くと、厩舎の屋根が見えた。

 明菜は自然と部屋を出て、厩舎に向かったいた。


 食堂の勝手口から外に出て、厩舎で寝ている勝也を見つけた。

 勝也をおこさない様に、そっとお腹あたりに座り込む。

「ここは私達が知っている地球じゃないみたい!」

「勝也はこんな姿になっているけど、私達はまだ生きているわ!これからも生きて行かないといけないのかな~」

「もしかしたら、バス事故で死んだのかな?」

 自然と涙が流れていたが、モフモフしたお腹を撫でながら顔を埋める。

「元の世界に戻る方法があるはず、必ず勝也を助けるからね~お姉ちゃんに任せて!」

 目をつぶったまま勝也は、明菜の独り言を聞いていた。

 疲れが出たのか、それとも勝也の温もりを感じて安心したのかはわからないが、そのまま深い眠りについた。

 勝也は明菜を抱きかかえる感じで、見守っていた。


 翌朝、リリーは大慌てをしていた。

「アキナ様~アキナ様~アキナ様はどちらにいらっしゃいます!」

 部屋の扉をノックしても返事がないため、部屋に入った所姿が見えないし、ベットで休んだ形跡が見当たらなかった。

 リリーの慌てた声に、他のみんなも起きて明菜を探し始めた。

「各部屋を探しましたが、どこにも見当たりません。」

「工房の部屋も見てきたが、いないな!」

「散歩に出たかもしれませんよ!」

「厩舎の方を探しに行きましょう!」

 宿舎にはいないと判断し、リリーと宿舎に寝泊まりしている5人は明菜を探して厩舎に向かった。

「アキナ様!」

 リリーが思わず声を出したが、フェンリルのお腹でぐっすり寝ている姿を見て、声を掛けるのを止めた。

 後から追いかけて来た人達にも状況を説明して、そのまま寝かせておくことにした。

 「アキナ様なら大丈夫だと思いますので、このままにして差し上げましょう。」

「でも何かあったら大変だよ!」

「心配ないと思います。お友達のフェンリルが傍にいますので安心です。」

 リリーは明菜を守るように包み込んで、こちらを見ているフェンリルに気が付いていた。

 

 どれぐらい寝ていたのか目が覚めると辺りは明るかった。

「ヤバイ!寝過ごしたわ遅刻・・・」

 周りの景色がちがう!昨日の夜の事を思い出したが、すぐ冷静になった。

「おはよう勝也!ぐっすり眠れたかな~私はよく眠れたよ!」

 目を閉じている勝也に声を掛けて、手足を伸ばしながら暖かいモフモフに抱きつく。

 勝也はくすぐったいのか、お腹に力を入れて膨らませた。

「もう少し抱きついててもいいじゃないの~」

 勝也から起こされた感じの明菜は、仕方なく起き上がりスカートの裾をまくり上げホコリを落とした。

「そういえばこの服、体を洗った時にリリーから借りた物だったわ。」

 明菜は周りの目を気にせず、服を脱ぎ始め下着姿になった。

 バックから自分の服を取り出し、乾いているのを確認してから服を身に着けたが、勝也は恥ずかしいのか目をつぶっていた。

「何照れているの!別に見てて構わないわよ♡」

 どちらかと言うと、ワザと勝也に見せているようにしている。

「今日は工房のお手伝いをするから、勝也はここで休んでいてね。」

「退屈なら、町の外に出ても構わないわ。首に付けてある標識を見せれば通れるそうだから自由にしていいよ!」


 勝也にそう言うと、勝手口から宿舎の食堂に向かった。





 

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