第14話 救世主

 尿意を我慢できなくなり、忠告をされていたのも忘れて人通りのいない暗い路地に入った私は、ゴロツキの男達に襲われてしまった。


「1人で連れもいないようだし、早いとこかっさらおうぜ!」

「高く売れそうだぜ~その前に味見しておかねぇか?」

 男2人が近寄ってきた。

「誰か助けて~」

 無我夢中で大きな声を出したが、あっという間に押さえ付けられ布で口を塞がれた。

男達は縄で手と足を縛り運び出そうとすると、足を縛った男が一旦地面に降ろした。

「おい!どうしたんだ!」

「冷てっ!こいつ小便漏らしてやがる!」

「我慢しろ!早くしねえっと誰かに見つかったらマズイ!」

 口を塞がれ声を出せなくなったが、足をジタバタさせて必死に抵抗した。

 担がれたまま路地の裏側に運ばれるようとしたした時、一番後ろにいた男が声を荒げながら転がって来た。

「何しやがる~」

 誰かが、見張り役で立ってた男を投げ飛ばした。

 飛ばされた男ともう1人りの男が飛びついたが、あっという間にねじ伏せられた。

「貴様らはここで何をしている!」

 リーダーらしき男が手にナイフを持って、2人を投げ飛ばした騎士に向かって行く。

「なめるなよ!」

 騎士はナイフの攻撃を避けながら、相手の腕を掴んで投げ飛ばした。

 投げ飛ばされた男はそのまま地面で気絶した。

 私を担いでいた2人は、私を放り投げ悲鳴を上げながら一目散に逃げて行った。

「この男達を連行しろ。」

 騎士の男は後ろにいる部下に指示を出し、放り投げられた私の元にやった来た。

「お嬢さん、お怪我はありませんか?」

 助けてくれた騎士は、私の手と足の縄を解きながら心配してる様子だ。

「危ない所を助けて頂き、有難うございます。」

「こちらこそ申し訳ない!町の治安を守るのが我々の務めなのに、お嬢さんを危険な目に合わせてしまって!」

 騎士は礼儀正しく謝罪する。

「とんでもありません!私こそ人の忠告を忘れて暗い路地に入ってしまいました。」

 鎧に身を包んだ男前の騎士に、暗い路地に入った理由は言えなかった。

「逃げた2人も捕まえますので、ご安心して下さい。」

「申し遅れましたが、王国第3騎士団長のオルフォースと申します。」

「度丁寧に・・・私は明菜と言います。今日この町に来たばかりで浮かれ過ぎてこのような目に遭いました。」

「それは偶然ですね!私も今日この町に赴任した所です。」

 明菜はオルフォースの顔に、つい見とれていた。

「アキナ殿、私はまだ仕事の途中の為これで失礼します。」

「はい!ありがとうございました。」

 オルフォースの後ろ姿を、見えなくなるまで目で追っていた。

「男らしくてかっこいい人だわ!もろ私の好みだわ!」

 明菜は襲われた事や、漏らしたことすべてを忘れていた。


 表の通路に出ると遠くに騎士団の騎士が数名歩いていたが、自分と同じような若い娘2人が先ほどの騎士団の話しをしているのが耳に入って来た。

「今度赴任してきた騎士団長~とても美男だわ~」

「前任者が収賄事件で捕まって、代わりに王都からきた有名な貴族だそうよ。」

「王国第3騎士団は貴族出身者が多く、若くて有能な人達の集まりだから私達にも出会いがあるかもよ~」

 彼女らの会話を盗み聞きして、自分にもチャンスがあると思い込んでいた。

 女らしい体を作るには、美味しい食事に適度な運動、自分を磨くためには大人の恋も必要だわ!

 今度お礼を兼ねて会いに行って見よう!

 

 日が暮れ始めたので、町の探索はやめて宿舎に帰る事にした。

 明るい時はあまりいなかった若い娘の姿が、道端の花壇で花摘みをしている。

「そうよね、明るい時は恥ずかしいわよね、それにしてもホント花を摘んでる姿にしか見えないわ!女の人は隠すのが上手ね!」


 あまり暗くなると危ないので、速足で宿舎に戻った。

 夕食の事を考えると、お腹が【グッ~】と鳴った。

 町中であれ程買い食いしているのに、不思議な現象はまだまだ起こるようだ!



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