第13話 事件
ギルドの受付で出されたお金を見て、初報酬にしては高額すぎて驚いていた。
「アキナ様、どうされました?」
ミラは放心状態の明菜の顔を見て、報酬金額に不満があるのではと困惑していた。
「ごめんなさい。あまりにも高額すぎて査定を間違っていませんか?」
喜ばさせておいて、後で間違っていましたから返して下さいなんて嫌ですよ。
「アキナ様のギルドカードを確認しましたが、間違いなくブッラクボアの討伐記録があります。報酬金額に間違いはありません。」
ミラは報酬金額が少ないから機嫌が悪いと思い込んでいた。
「新人でパーティーを組まない冒険者が、いきなりDランクの魔物を討伐するなんて前代未聞で聞いたことがありません。」
たしかに狂暴そうなイノシシのような気がしたけど、お漏らしの方が気になって魔物の方はあまり覚えていない。
「倒したのは彼だから、私は何もしていないわ!」
「従魔の功績は全て、アキナ様の功績になります。」
「そういう事なら、報酬金は貰ってもいいという事ね。」
「はい、是非受け取って下さい。」
ミラは、心を撫でおろしていた。
ギルドを出て、町の中を少し探索をしてからニーデル商会の宿舎に戻る事にした。
「就職初日でこんなに給料が貰えるなんて、冒険者も悪くないわよね!」
町を歩くといろいろなお店から声が掛かる。
「お金もあるし、少しぐらいなら使ってもいいよね勝也!」
勝也に声を掛けて後ろを振り向くと、誰もいない。
辺りも探すけど、勝也の姿が見当たらない。
「もう~どこにいったのよ~私と一緒に買い物にいくと必ずいなくなるんだから!」
「いいわよ!美味しい物を買って1人で食べるからね!」
明菜は美味しそうなお店を見つけては、買い食いをして楽しんでいた。
ギルドを出て町の中を探索しながら歩く明菜の姿を、悪そうなゴロツキが目を付けていた。
勝也は、明菜の買い物は退屈で疲れる思いがあり、町の中では大丈夫だし、人々を驚かせては悪いと思い明菜からはぐれ厩舎に戻っていた。
「見た目はいまいちぱっとしないけど、食べたら美味しい!」
お店の誘惑に負けて次から次へと買い込む姿を、何人かの男達が見つめていた。
「ホントに美味しい!勝也にもあげたかったけど、いつもいなくなるのよネ!」
明菜は手に持った食べ物と果実水を、すべてお腹の中に収納して満足していた。
「お腹がいっぱいになったら、トイレに行きたくなったわ!」
トイレを探して少し歩き回ったが、見つからない。
そもそもトイレという物があるのか疑問に思っていたので、歩いている主婦の1人に訊ねてみた。
「すみません~この辺りにトイレはありますか?」
「トイレ?なんだいそれは?そんなものはここにはないよ!」
「用を足すにはどうしたらいいんですか、教えて下さい。」
だんだん我慢が出来なくなってきて、必死に訴えた。
「花摘みの事かい!それなら通路の端に所々に花壇があるだろう!そこでするんだよ。」
「恥ずかしいのかい!ここではそれが当たり前だよ!間違っても路地裏の暗い場所に行くんじゃないよ!ゴロツキに何をされるかわからないからね!」
「嫌なら、教会にある穢れの部屋の庭か、川辺に行くんだね!」
予想してた通り公衆トイレは存在しない様だ。
協会にある穢れの部屋は何だろう?すぐ近くに川は見つからないし、家の中ではどうしているんだろう?
排泄は自然の行為だし、みんな気にしないで其処らで行っているという事ね。
でも私は嫁入り前だし、若き乙女だし・・・人前では気が引けるな~
注意はされたけど、そろそろ限界だ!人通りのいない路地を見つけて周りを確認してから入っていった。
念の為下着は脱いでバックにしまい、しゃがみ込もうとしたその時、後ろから声を掛けられた。
「お嬢さん!こんな場所で何をしているのかな~」
ビックリして後ろに振り向くと浮浪者みたいな姿の男が5人立ったいて、不気味な笑い声が聞こえた。
「何でもありません!」
ヤバイ感じがしたので、すぐに反対方向に走り出したが、男の1人に腕を掴まれ逃げられなくなった。
3人がかりで私の体を押し倒し、真上から見下ろしながらリーダーらしき男が手を差し出す。
「バックの中にある有り金を全部出しな!」
「お金はありません!」
尻もちをついた格好でジリジリと後ずさりしながら返事をしたが、恐怖で声は上ずっていた。
「まあ~金を持っているようには見えねえな~可愛い顔をしているんで高く売れるかもしれねぜ~」
男達の嫌らしい笑い声に、体が固まって動けない!
顔は引きつり笑顔はなく額から冷や汗が出てきている。
どうしょう!私これからどうなるの~勝也・・・お願い助けて~
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