第12話 初報酬

 初仕事の依頼を終えて、城壁の門まで戻って来た。

 門番からはさっきと同じ驚きの表情をされたが、ギルドカードを提示したらすんなり通してくれた。

「お疲れ様です。」

 冒険者に就職したという意味では私は社会人だ。

 恥ずかしい振る舞いだけはしない様に気お付けよう!

 門番や衛兵も槍は立てに添えているだけで敵意は無いが、相変わらず緊張はしているみたいだ。

 勝也も一応お辞儀をしているように感じられた。(勝也も姿は違うけど、社会人だからね!)


 城壁の門を通り抜け広大な草原を過ぎると、町の城壁の門にたどり着いた。

「ご苦労様です。冒険者としての初仕事はどうでしたか?」

 町の門番はやや歳のいった感じの男2人で、気さくに声を掛けてくれてとても感じが良かった。

「お疲れ様です。初仕事、無事こなして来ました。」

「そうですか、最近は魔物が多くて怪我をされる冒険者が多いので、ご無事で何よりです。」

「ご心配有難うございます。」

 やさしい門番にギルドカードを提示して、勝也と町の中に入った。

 

 町の景色をゆっくり眺めながらギルドに戻ると、受付嬢のミラから声を掛けれらたのですぐカウンターに向かった。

「お帰りなさいアキナ様。初仕事は如何でしたか!」

「ミラさんのお陰で、無事終了しました。」

 ミラにお礼を述べながら、採取した薬草の束をカウンターに並べた。

「凄い量ですね。一ヶ所ではこんなに採取できませんよ!」

「はい、草原とは別に、森にある川辺の近くにたくさん生えてありました。」

「川辺の近く!・・・アキナ様、魔の森の中に行かれたのですか?」

 ミラの突然の大きな声に、出かける前に注意された言葉を思いだした!

「すみません!採取に夢中になり、いつの間にか森の中まで足を運んでいました。」

「それで川を見つけたので、どうしてもそこに行く必要性があったんです!」

 必死に言い訳をしていると、ミラが言葉をさえぎった。

「魔物に遭遇しなかったのですか?」

「エッ!魔物・・・たしか・・・イノシシのこと?」

「襲われたんですね!無事だったったんですね!!怪我はしていませんか?」

 目の色を変えて聞いてくるミラに、明菜は圧倒されていた。

 ミラは、ギルド長のバッカスからアキナの専属担当を言いつけられ、アキナに何かあれば即クビになる脅しをされていた。

 それほどの重要人物だと、ミラはバッカスの言葉で感じと取っていたが、ここでアキナが怪我でもしていようなら!

 ミラは冷や汗を隠し切れなかった。

 当の明菜は、用を足そうとした時にイノシシに襲われ漏らしたことは恥ずかしくて口に出せないでいた。

 明菜の後ろで小さく丸まっているフェンリルは、2人の会話を黙って聞いていた。

「大丈夫だよ!イノシシとは遭遇したけど、彼の爪で瞬殺だったわ!」

 後ろに隠れている勝也を指差し、ミラに説明した。

「瞬殺!・・イノシシとはこの魔物のことですか?」

 ミラがカウンターの下から魔物図鑑をテーブルの上に広げ、イノシシの絵を指差した。

「そうそう、このイノシシで間違いないわ!」

「ブラックボア!Dランクの凶暴な魔物ですよ!!・・・瞬殺ですか!!!」

 ミラはカウンター越しにフェンリルを覗いて、呆気にとられていた。

「そうですよね、フェンリルですもの、瞬殺でもおかしくはないですよね。」

 ギルド長が一目置いてる理由が、おとなしくしているフェンリルであることは間違いない。そしてこのフェンリルに唯一指示が出せる・・・少しズレている彼女!

 そんな彼女の専属担当者になった、可哀そうな私!

 彼氏は出来ないのに、疫病神はやってくる。

 ミラは心の中で泣いていた。

「アノ~この薬草いくらになります。」

 遠くを見ているミラをみて、早くこの場から移動したい為買取を催促した。

「すみませんでした。今すぐ清算いたします。」

「アキナ様!瞬殺したブラックボアは何匹でした?」

「1匹です。」

「ギルドカードで討伐の確認をします。」

 おまたせしました、清算が出来ました。薬草10束で1銀貨です。今回50本で5銀貨、ブラックボアの討伐に20金貨になります。」

 ミラはカウンターに金貨20枚と銀貨5枚を並べた。

 ノーマンから教えてもらったこの世界のお金の価値。

 1銅貨が日本円で約100円、1銀貨が約1000円、1金貨が約10000円、1白金貨が約1000000円と教えてもらった。

「20万と5千円!こんなにお金くれるの!!」

「ブラックボアは買取も出来ますので、解体してもしなくてもアイテムバックに入れて持ち帰るといいですよ!」

「もしかしてイノシシ肉が手に入る事かしら?」

 ・・・初仕事に初給料!ヤバイ、この世界マジでヤバイよ~



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