第9話 ギルド
ノーマンとのやり取りで、ニーデル商会の宿舎を無料で借りることになった。
「アキナ様の部屋と厩舎の準備をするまで少し時間がかかりますので、その間ギルドで冒険者登録を済ませましょう。」
「冒険者ギルドの事ですね!彼と一緒に登録をお願いします。」
ノーマンの案内で冒険者ギルドの受付に向かった。
ギルドの建物に入ると、色んなコスチュームみたいな服装の男女が大勢いて賑やかだったが、 私達が入ると一斉にこちらを見てビックリした表情で固まっていた。
ノーマンが受付のカウンターに目が点になって固まっている女性に声をかけた。
「彼女の冒険者登録と従魔登録をお願いできますかな。」
ノーマンの言葉で我に戻った受付嬢は、すぐに仕事モードの顔付に変わった。
「私は受付のミラと言います。冒険者登録ですね!こちらの用紙に記入をお願い致します。」
一通りの記載を済ませると、一枚のカードを渡された。
「こちらのカードに、血を一滴流して下さい。」
言われるままに人差し指に針を刺し血を一滴流した。
「このカードは身分証明書になりますのでなくさないように管理して下さい。また町に入る時は必ず提示して下さい。通行税が免除されます。」
そういえば護衛の人達はカードを提示していたわね。
「カードにはクエストの達成記録や魔物の討伐情報が自動で記録されていきます。尚、従魔登録をしたフェンリルの功績もこのカードに記憶されます。」
「またカードには、自己鑑定スキルが付与されていますので、クエストを受ける際の目安に使用して下さい。」
「自己鑑定スキル?・・・どんなスキルですか?」
「カードの表には発行したギルドの情報、冒険者の氏名と現在の冒険者ランクが表示されています。裏には本人しか見えない冒険者レベルやステータス等の個人情報が自己鑑定スキルを付与していることで確認する事が出来るようになります。」
凄い!どういう仕組みになっているんだろう?
カードを手にして表裏と色んな角度から眺めた。
「あの~初めてみたいなので冒険者ギルドについて説明いたしましょうか?」
「はい!よろしくお願いいたします。」
ミラの説明をまとめると、ランクにはF~Sランクまであり、ランクが上がれば難易度の高いクエストが受けられる。通常は同ランクのクエスト依頼しか受けられないらしいが、パーティーを組めば一つ上のランクまで受けられること。
クエストは常時依頼と随時依頼の二つがあり、随時依頼は冒険者が張り紙を受付に持っていくことで依頼の受領となり、常時依頼は受領の必要がなく供給過多になった時点で張り紙が剝がされるという仕組みだそうだ。
受付嬢から詳しく説明を受けてるいる間、周りの冒険者から騒めきの声が聞こえる。
そう言えばノーマンの姿が見えない。
勝也は、私の後ろで小さくうずくまっている。
ちょうど説明が終わったタイミングで、ノーマンが2階から体格のよい男の人と降りて来た。
「アキナ様、登録はお済みになりましたか?」
「はい無事に手続きは済みました。Fランクのレベル1から勝也と一緒に始めます。」
「アキナ殿の従魔はカツヤと呼ばれるんですか?」
ノーマンの横の並んでいる男が私に尋ねた。
不審そうに男を見つめていると、私が警戒していると察した様子で挨拶をしてきた。
「申し送れました、私はここレイフォース支部のギルド長をしておりますバッカスと言います。」
「ご丁寧にどうも、私は明菜で彼は勝也です。」
「アキナ様、バッカスは私とは古い付き合いで、ぜひアキナ様に紹介しておきたかったのですが、お気に召しませんでしたか?」
「いえ、ギルド長といえばここの一番偉い人ですよね!そんな方がわざわざあいさつに来るなんておかしくないですか?」
「冒険者として活動するんであればギルド長と面識があった方が仕事がやり易くなりますし、正直に申し上げればバッカスはアキナ様の従魔に興味がある様子です。」
私が疑問に感じている事を、ノーマンが答えてくれた。
「そうでしたか!彼に興味があるなんて、女の私ではなく男に興味があるなんて、それはそれで警戒しますけど!」
「勘違いしないでおくれ!男に興味があるのではなく、伝説と言われているフェンリルに興味があるんだが!」
「どちらでも構いませんが、私達の邪魔だけはしないで下さいね!」
ノーマンもバッカスも困った様子を隠し切れない。
このやり取りを見ていたギルド職員や、その場に居合わせた冒険者達は口を揃えてつぶやいていた。
【この女性!取扱い注意!!】
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