第7話 工房
ノーマンの案内でニーデル商会のお店を見学して、すぐに奥の工房に案内された。
「こちら4ヶ所の部屋は製作をする工房で、奥の小部屋は研究室になります。」
ノーマンが説明する工房の1ヶ所を見せてくれた。
部屋の中には4人の男女がいて、大きな窯を火にかけながら混ぜている姿と、小瓶に液体を流して栓をしている姿だった。
「ここは、低級用ポーションを作成する工房です。」
「低級用と言いますと、他にもあるんですか?」
「ポーションには低級用・中級用・上級用・特化型用とあります。」
「残りの3部屋がそれぞれの工房になります。」
「用途に合わせて色んな種類を作るんですね。」
ノーマンは少し険しい表情で答える。
「実は、ここで作っているのは初級用ポーションのみで数もほんの僅かしか作れません。」
「初級用ポーションだけですか?」
こんなに設備も整っているのに勿体ないと感じたが、ノーマンの説明で納得した。
「ポーションを作るのに、魔力を注げる錬金術師がいなければできません。用途に合わせた魔力持ちの錬金術師が、ここでは低レベルの人材だけでそれ以上のレベルを持つ錬金術師がいません。唯一、大都の本店に中級レベルの錬金術師が1人いるだけです。」
どこも人材不足という事かしら!
「ここには何人の錬金術師がいるんですか?」
「全員で5名在籍しています。」
「後の1人は、お休みですか?」
「いえ、特化型用の工房で魔道具の製作を行こなっています。」
「そちらを見ることは可能ですか?」
ポーションよりも魔道具に興味があったので尋ねてみた。
「もちろん構いません~ご案内します。」
ノーマンの案内で、特化型工房に案内された。
部屋に入ると、部屋の中央に若い女性が1人椅子に腰かけている。
こちらに気がついたのか、立ち上がりお辞儀をする。
「初めまして、明菜と言います。魔道具に興味がありまして、間地かで見させてもらってもよろしいでしょうか?」
「初めまして、キャロットと言います。」
「キャロット!忙しいところすまないが、アキナ様に魔道具の作成方法を説明してくれないか。」
キャロットは驚いた表情でノーマンを見つめたが、ノーマンの態度で状況を理解したみたいで丁寧に説明を始めた。
「アキナ様、特化型とは、ここにある魔石に魔法を付与する事で色んな用途の魔道具を作ることを言います。」
「魔法を付与するんですか?」
「核となる魔石に炎の魔法を付与すると、この魔石を使用すると魔法が使えない人も炎の魔法が使えます。同じく聖魔法を付与するとポーションを使わなくても回復ができます。」
「すごい!キャロットはこれを作れるの?」
つい呼び捨てで会話をしたが、歳も同じぐらいだしいいよね!
「私はまだ低レベルの錬金術師です。付与の威力も小さく、難しい付与はできません。」
「5人の錬金術師の中では、キャロットだけが付与魔法が使えます。」
ノーマンがキャロットを自慢すかのように話すが、さっきからずっと私を見ている。
男の人に見つめられるのはとても恥ずかしいし、変に意識して困ってしまう。
明菜がかってに思い込んでいるのとはノーマンの考えは違っていた。
ノーマンは明菜を鑑定のスキルで覗きながら、明菜がもっている素晴らしい能力をここで使ってもらうにはどうすればよいか思案していた。
今の時代では、失われた大聖女の能力をもつ人物が目の前にいる。
記憶もなく彼女の事をしる者もいない。
彼女の力を借りれば、今まで作ることが出来なかった上級ポーションや、喉から手が出るほど欲しかった魔法を付与した魔道具が作れる。
ノーマンの頭はアキナの事で破裂しそうな状況になっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます