第6話 ニーデル商会
ノーマンから町の中の説明を受けながら、ノーマンのお店まで案内してもらった。
歩いている途中は、行き交う人々は驚いた様子で勝也を見ていたが、私の後ろを大人しくついてくるのに騒ぎ立てる事はなかった。
「アキナ様、冒険者の中には魔物を従魔として仕事を請け負うテイマーという職業があり、この世界では当たり前です。ただ、フェンリルが従魔とは大変珍しい事ですので驚いているんです。」
この世界では当たり前という事は、私がこの世界の人間とは違うという事を知っているのかしら?
ノーマンが私達を利用しようとしている事は解るけど、私達が何の役に立つんだろう?
ただ今の状況から判断して、ノーマンに従うしかないと考えて慎重に行動しよう。
「アキナ様、こちらが私が経営していますニーデル商会のお店です。」
「厳密に言いますと、ここは支店兼研究所がある施設になります。」
確かに建物は大きく宿泊施設も兼ねているようだが、それに比べてお店は小さい作りになっている。
「本店は王都に構えていて、こちらの研究所ではポーションや魔道具の製作や開発が
メインになる工房です。」
「ポーション?魔道具?」
私が全然知らない単語が出てくる!勝也がよくやってたゲームの事かしら?
難しい表情をしていたためなのか、ノーマンが詳しく説明してくれた。
「アキナ様はご存知ではないかもしれませんが、この世界には魔法が存在します。」
「魔法があるんですか?」
おとぎ話の物語か、ゲームの中での話だと思ってビックリした。
「はいございます。ただ使用できる人は限られていて人数も少ないです。」
「特に聖魔法は貴重で、怪我や病気を治す魔法です。」
「魔法で治せるのなら、医者は要らなくてとても便利ですね!」
「使用できる方は、教会の殉職者か聖女様、宮廷の魔導士に限られごくわずかです。」
「その魔法の代わりになる物が、ポーションであり魔道具です。」
「どうやって使うんですか?」
「ポーション液は専用の小瓶に詰めておき、怪我をしている場所に掛けます。」
「また飲むことも可能で、体力の回復が出来ます。」
「とても便利ですね。」
「魔法が使えない冒険者や騎士団にも需要があり、貴重な商品になります。」
「我ニーデル商会では、色々なポーションを研究し製作から販売まで行っています。」
「それでお店より工房の施設が大きいのね。」
「お店は試作品の販売と宣伝用で、主に冒険者が利用されます。」
「魔道具とはどういうものですか?」
「色んな魔法を付与した道具の事を魔道具と言います。これもここで製作しています。」
「お店の中を案内しますので、現物を見て頂ければ分かるかと。」
ノーマンに言われるまま、お店の中に案内された。
お店の中は思ったより広く綺麗に整理整頓がされており、正面のカウンターの後ろにある棚に色んな種類の小瓶が並べてある。
カウンタには受付の女性が1人と、左側にあるテーブル席の横に男の人が座っていた。
「いらっしいませ!アッー・・・」
受付の女性は私に声を掛けた後、ノーマンの姿をみて驚いた様子でお辞儀をした。
今まで座っていた男性もこちらに気付くと、すぐに立ち上がりお辞儀をする。
ノーマンは2人に対して手で合図して私を紹介してくれた。
「こちらは私の大切な友人でアキナ様だ。」
「明菜と言います。今日はお店を案内してくれるという事で、こちらにお邪魔しています。どうぞよろしくお願いいたします。」
社交辞令のあいさつをしたが、2人共表情は硬く無言でお辞儀をしている。
ノーマンはそんな2人の事は気にしないで、そのまま奥の部屋に私を案内した。
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