第5話 城壁都市
ノーマン達の一行に誘われ、一緒に付いてきた明菜と神獣フェンリルの姿になった勝也。
しばらく移動していると、町の出入口の城壁の門にたどりついた。
石の城壁は結構高くまである。
甲胄姿の門番が槍を構えて荷馬車を確認する。
「ご苦労様です。ニーデル商会のノーマンです。」
門番に通行証を見せて、他の冒険者達もカードを見せている。
「あと後ろのお二人方は、私の連れでしてこの町に入るのは初めてなので通行料はこちらでお支払い致します。」
ノーマンが門番にお金を渡して、私達を紹介してくれた。
「エッ!」
門番は私達を見てビックリして大きな声を出した。
「フェンリル!なぜここにいるんだ!!」
門番の声は震えており、何人もの衛兵が槍を構えて囲んできた。
「これ以上は近ずくな!」
門番達の威勢はいいが、腰が引けて後ずさりをしている。
私は勝也から降りて(スカートがめくり上がらない様に注意しながら・・初対面は身だしなみが大事よね!)、門番に面と向かって話をする。
「私達は皆様方に危害は加えませんよ!」
「君はこの魔獣を管理できるのか?」
「衛兵の皆様、魔獣は彼女の従魔です。それに暫くは私がお世話をさせていただきますので、住民の方には危害を加えることはありません。私が保証いたします。」
ノーマンの説明が効いたのか、責任者らしきの衛兵が私達に要求をしてきた。
「従魔であれば、ギルドで従魔登録をする必要がある。」
ギルド・従魔登録?
私の知らない単語が出て困った表情をしていると、またノーマンが助け船を出してくれた。
「私が責任を持って冒険者ギルドまで案内して、従魔登録の手続きまで見届けますのでご安心下さい。」
「ノーマン殿がそこまで言われるのであれば、町に入るのは許可しよう。」
衛兵の人達の表情がホットしたように見えたのは、私の気のせいなのかしら?
明菜の後ろで神獣フェンリルの睨み付ける形相に、衛兵達は心穏やかでなかったはずだ。
この場に衛兵が100人いてもかなうはずがない相手に、衛兵の責任者が私達に念を押す。
「くれぐれも町の中ではトラブルを起こさない様に!」
ノーマンさんのおかげで無事町の中に入れた。
「アキナ様、フェンリルはとても恐れられている魔獣です。しかし冒険者ギルドで従魔登録をすれば人々は安心して受け入れてくれるでしょう!」
「そうですか?(勝也が人を襲うことはあり得ないんだけど!)ノーマンさんよろしくお願いします。」
私はノーマンの提案をそのまま受け、冒険者ギルドに登録することになった。
「ノーマンさん~ひとつお尋ねしてもよろしいですか?」
「アキナ様、どうされましたか?」
「ギルド・・とは何ですか?」
明菜の言葉に、ノーマンの表情は変わらなかった。
城壁の門を通過すると、広大な草原が目に映る。
「門をくぐると町の中かと思ったけど、まだ先なんですね!」
「そうですね、もう少し先に町があります。」
「城壁の中であれば魔物に襲われることはありませんので、安心できて農作物を作れます。」
所々で畑仕事をしている農人を見かける。
しばらく進んでいるとまた城壁の門がある。
先ほどの門よりは高さは低いが、しっかりした門構えの作りだ。
先ほどと同じ様に門番に驚かれたが、連絡が伝わっていたのですんなり通れた。
町の中に入ってからは、ノーマンは私に並んで歩き始めた。
荷馬車は屋敷に先に戻り、護衛の冒険者達はここで別れた。
「町の中を案内しながら、ギルドの場所までご案内します。」
ノーマンは紳士らしい振る舞いで対応してくれる。
商人には見えないし、貴族の雰囲気がある。
「町の回りに二重の城壁とは、ものものしいですね!」
私はノーマンに2回の通行料の立て替えのお礼と、この町がなぜ厳重なのかを尋ねてみた。
「この町は、隣国との境界線に一番近い場所であり、魔物が棲みついている魔の森にも隣接しています。」
「国の最前線ですので守りは当然ですが、それよりも厄介なのが魔の森から溢れ出でくる魔物から町を守る為に城壁を高くしているんです。」
「魔物と言いますと、荷馬車を襲ったオオカミですか?」
「そうです!ダイヤウルフという凶暴な魔物です。普段は街道には出現しないのですが、近ごろ魔の森の魔物が異常に発生しているとの事で物騒になっています。」
町の中心部に行くと人通りが多くなってきた。
「思っていた以上に人が多くて賑やかですね。」
「守備隊の他に冒険者が多く集まっています。」
「ギルドを仲介して冒険者には魔の森の魔物を討伐してもらっています。」
「ギルドとは、全大陸にネットワークをもつ独立した団体で、如何なる干渉を受けない組織であること。内容は冒険者の登録や依頼の取次や魔物の買取、飲食のサービス提供までやっているのが冒険者ギルドです。」
「ギルドの事はなんとなく理解しましたが、ノーマンさんの商会は何をされているんですか?」
私の質問に、一瞬目が輝いたのは気のせいだったのか、ノーマンは間を持って答えた。
「それではギルドに行く前に、私のお店に案内致しましょうか!」
なんだか嬉しそうに話すノーマンだったが、取り敢えず彼のお店に行くことになった。
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