孤独の星から愛する人々へ
たけのこ
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生命体に共通して存在する感情は紛れもない、寂しさである。
ましてや、私のように闇の中を何万年もの間、漂っていると、それは命を絶つ凶器となる。
誰かと話したい、誰かに私の存在を認識してほしい。
私を見てほしい。
だから、私は観測者を育む環境を創った。
そして、その観測者が孤独に耐えるだけで終わる命とならないように、一人では生きられないように二つの不完全な形を創った。
その二つでなければ生きていけないようにした。
その二つでなければ一が生まれないようにした。
それらはいずれ意思を持ち、球体の星の全てを埋め尽くすだろう。
そうすれば、どこを見つめても、彼らは私を見つめ返してくれるだろう。
ああ、幸せだった。
彼らは私たちを見つめ名を与えてくれた。
時には私たちを神と崇め畏れた。
そして、祈りの言葉を私たちへ届けてくれた。
愛しい人よ、私を見つめてくれるのなら、いくらでも神秘を与えた。
時には奇跡だって起こしてみせた。
全てはあなたのために。
───それなのに、どうして。
あなたたちは互いを殺し合い、生命を支える土壌を汚していく。
地上に紛い物の星を作り、私たちの輝きを掻き消してしまう。
私はここにいる。
今もなお、あなたたちを見つめている。
気づいて。
私を見つめてくれるのなら、無知という幸福を与えよう。
科学に侵されない自然と安寧を与えよう。
私なら、あなたの苦しみを取り除くことができる。
私だけが、あなたの心の傷を癒してあげられる。
あなたの悲しみを全て忘れさせてあげる。
私を見つめて。
私はいつだって、あなたを見つめている。
孤独の星から愛する人々へ たけのこ @takesuno
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