第13話

「まぁ、ヴィオちゃんもそんな浮気者とは無事婚約破棄できたんだし、この話題はやめて、リリーちゃんの惚気話聞きましょ〜」


ルピナスがニヤニヤしながら、リリーを小突く。本当に恋バナ好きね。


「わわわ、私ですか!?いいい、いえ特になにも…」


リリーの顔が一気に赤くなる。可愛いなぁ。


「あら?そういえば、この間アルベルト殿下に会った時、すごい浮かれてたけど何かあった?」


あの舞踏会の時だ。私と同い年であるアルベルトは卒業パーティーにいたはずなのに、別方向から歩いてきて私と会った。あの時の笑顔からリリーと居たんだろう。アルベルトが他人から見てもわかるほど浮かれていたんだし、確実に婚約者絡みだ。


「なんですって、あのアルベルト殿下が!ますます気になるんですけど!」

「リリー、諦めなさい」


ますます前のめりになるルピナスと、興味がないような顔をしつつも、気になる気持ちを隠しきれていないメイプルにも押されて、少し抵抗していたリリーが顔を真っ赤にしながら小さく告白した。


「ア、アルベルト様と…キ、キスしました」

「あらぁ」

「まぁ」

「へぇ」


なんだ。キスか。


「っ!なんでそんなに反応が薄いんですか!一大事です!」

「だって…」

「ねぇ?」

「もうそんなのとっくに済ませてるのかと…」

「いまだにとって食われてなかったのね…あの人、リリーと一緒になるのにはなんでもするのに」

「そんなことないです!!」


リリーは真っ赤だが、あんなに溺愛されていて、まだキスもしていなかった方が驚きだ。あの人、どれだけ慎重だったのか。


「何年婚約してるのよ…」

「八年ですけど、それを言うなら姉様だって十年婚約していたじゃないですか?姉様はキスとかしてたんですか?」

「そんなの…」


「してるわけないじゃない」

「人のこと言えないじゃないですか!」


リリーがこんなに感情の起伏が激しいのは珍しい。よっぽど恥ずかしかったのかしら。でも…可愛いんだよなぁ。ルピナスじゃないけど、揶揄いたくなっちゃう。


「ところで、ヴィオちゃんは新しい人いないの〜?」

「そういえば聞いたことありませんね」


これ以上リリーからは情報を引き出せないと悟ったのか、ルピナスは話の矛先をこちらに向けてきた。ニマニマしていて楽しそうね。


「そんなのいないわよ。大体、屋敷に引き篭もっていて出会いなんて…」

「でも、結構な頻度でユリアスがスプリング公爵邸に言ってるわよね?」


それまで、傍観していたメイプルが新たな情報を投下してきた。また余計な情報を…随分とあなたも楽しんでるわね?目がキラッキラだわ。


「え〜。なになにそういうこと〜?ユリアスいいじゃない!ヴィオちゃんも隅には置けないわね〜」

「ユリアス様って確か婚約者がいませんでしたよね?」

「勘違いしないの。私たちはただの幼馴染!それ以上でも以下でもない!大体あの人…」

「いいじゃな〜い。ユリアスってすごいモテるし?メイプルと双子なだけあって、綺麗だし?嫌な要素ないじゃない?」

「そうそう、ユリアスは優しくてかっこいいじゃない」

「お似合いだと思いますよ?」

「恋バナ大好き人間とブラコン姉はいいの!」


こうして、このお茶会中、ルピナスからは揶揄われ、リリーからは援護は受けられず、ブラコン姉に弟をおすすめされ続けたのだった。

地獄…

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元悪役令嬢、ただいま小説執筆中です! 〜ですので、邪魔しないでいただけます⁉︎〜 衣末(えま) @ema_s

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