第10話

次に空を見上げたら真っ暗だった。後ちょっとだけ…

「あ」

そこで私は、夕食をすっぽかしてしまったことに気づいた。やっちゃった…

前世でも、小説を書くのに夢中になってご飯を食べ損ねたことがある。あの時は、めちゃくちゃお母さんに怒られたなぁ。

「マリア、今何時⁉︎」

おそらく、ずっと待っていてくれたマリアに時間を聞く。

「9時でございます」

マリアは無表情で言うけど、明らかに呆れてる。表情は変わらないけれど、幼い頃から一緒に過ごしてきた私には分かる。

「あー、やらかした」

ボフッ

私はクッションに顔を埋める。もう眠い。しかも、何時間も文字を書いていたから目が疲れた。ショボショボしてる。

「もう疲れた〜。このまま寝る〜」

「せめて、湯浴みはしてくださいませ。それにしても、こんな何時間も何をしていたのですか?」

マリアはもう呆れかえっている。

「あー。小説書いてたの。そこの机の上にあるやつ」

私は、机の上を指差す。もうここから動きたくない。ソファー柔らかいぃ。

「これでございますか?」

原稿を手に取ってマリアはこちらを振り返る。相変わらず無表情ねぇ。

「そうそう。ちょっと読んでみて〜」

ちょっと感想も聞きたい。二食も抜かして書いたから結構進んだのだ。すると、マリアが手元に目を移して、原稿を読み始めた。マリア、意外と本好きだから、気に入ってもらえたらいいんだけとなぁ。

「お嬢様…」

「あ、読み終わった?」

「すごいです‼︎とても面白かったです!続きはないのですか⁉︎」

原稿を読み終えたマリアが、食い気味に詰め寄ってきた。いつも無表情のマリアが、ここまで表現を露わにするのはのは珍しい。随分とお気に召したみたい。

「そう?ありがとう。これで、マリアが面白くないって言ったら没にする予定だったけれど」

「この作品が没⁉︎ありえません!というか、この作品は本当にお嬢様が書いたのですか?」

「そうよ。こんなに褒めてもらえれなんて嬉しいわ」

私は思わず笑った。だってここまで絶賛してくれるなんて思わなかったのだもの。

「ところで、お嬢様。ここの部分に出てくる『学食』とはなんでしょうか?」

「あぁ、それはね…」

こんな感じで、私とマリアは物語について、夜通し語り続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る