第7話

(ヴァイオレット視点)


「暇だわぁ」


私は、ソファーに座ってクッションを抱きしめながら、ポツリと呟く。最初のこそ、中世ヨーロッパ風な世界にはしゃいでいたけど、1ヶ月すれば飽きてくる。


「この間、学園は卒業しちゃったし。婚約が破棄されて王妃教育もなくなったし。婚約破棄されたせいで社交界にも出にくいし。異世界に転生したら、もっと忙しい感じじゃないの⁉︎学園生活をキッキャウフフと謳歌するもんじゃないの⁉︎」


私は思わず叫ぶ。だって、本当に極楽みたいなものがないんだもん。


「本も勉強でしか使わないし、物語って神話だけだし」


前世、本が好きだった私としては、ダメージが大きい。自分で書いていたほどなのに。


「ん?そうだ、ないなら自分で書けばいいじゃない」


私は、手のひらをポンっと叩いた。ないなら作ればいい。


「何にしようかなぁ」


異世界もの書いてもここ異世界だし、冒険ものは書くの難しいし、他もイマイチだし。


「あ、日本の高校の話とかいいかも。前世現役だったし。友情と恋愛を混ぜればネタ尽きにくいし」


そうだそうだ。いいじゃないか。こっちから見たら、日本は異世界になるし。


「よっし、暇だし今から書き始めよう」


私が意気込んだその時…


コンコン


ドアがノックされた。


「お嬢様、失礼します。フォール公爵令息がいらっしゃいました」


バノスが入って来た。タイミング悪…


(せっかくやる気になったのに)


流石に公爵令息の訪問を無視する勇気はないので、すごくゆっくり着替えて、すごくゆっくり応接間まで歩いていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る