第4話

「いやっ!」


そこで目が覚めた。


「なに、なんなの。誰⁉︎なんでこんな夢…!」


私は少しパニックになった


「ちょっと待って、落ち着きなさい」


深呼吸をする。私はヴァイオレット・スプリング。スプリング公爵家の次女で、第一王子エドワードの婚約者……だった、昨日までは。


「そうだ私、エドワード殿下に婚約破棄されたんだった……ってなんかどっかで聞いたことあるような」


私は必死で記憶を掘り起こす。エドワード、マーガレット、ヴァイオレット、婚約破棄……


「あっ‼︎『聖女と王子の恋物語』!」


そうだ、思い出した。エドワード王子と聖女マーガレットの恋物語。前世の愛読書だ。悪女ヴァイオレットを断罪するシーンもあったはず。


「ん?ってことは、ここは小説の世界…さっきの夢はやっぱり前世の記憶…」


そう理解した途端、頭の中にたくさんの情報が入って来た。桜の記憶だ。でも、幸せな記憶ばかりで、辛い記憶はない。それこそ、夢の最後のような…

ズキッ

思い出そうとしたら猛烈な頭痛に襲われた。痛い。頭が割れそう。


「っ。……しょうがないか」


私は、考えることを放棄した。


「でもまぁ、せっかく新しい人生が始まるんだし、頑張りますか」


こうして私の第二の人生が始まったのだった。

☆ ☆ ☆

前世の記憶を思い出してから、一週間が経った。その間、何もなかった……とは言えない。

なぜなら、お父様が本当に出仕しなかったのだ。宰相であるお父様がいなかったので、王城は大混乱。その日の午後に使者が来た。手紙には古めかしい文面で書かれていたが、要約すると、


「うちの愚息が本当にすまなかった。婚約は即破棄する。慰謝料も払うし、エドワードは3ヶ月謹慎させた。だから、出仕して‼︎お願い!君がいなきゃ本当に国が回らないんだ‼︎」


みたいな感じ。なんとも頼りない内容だった。でも、宰相がいないと国がまわらないって大丈夫なのか?

でもこの様子だと、国王も第二王子の頑張って働いているのだろう。


「お父様、私は婚約さえ破棄されればいいので、王城に出仕してくださいな」


正直、笑ってしまったけど、流石に国王や役人がかわいそうだったので、私はそう言ってお父様を送り出した。

そして、婚約は無事に破棄され、晴れて私は自由の身になったのだった。

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