第2話
ザワッ
エドワード様を馬鹿にしているとしかとれないこの言葉を口にした私に、貴族達はざわめく。それもそうだろう、だって今まで私が、エドワードに対してこのような物言いをしたことはなかったのだから。
(なんか少しスッキリしたわね)
「私を愚弄するのか!ヴァイオレット」
案の定、エドワードはこちらを思いっきり睨んで、怒鳴った。
「それだけのことをしたのはあなたですよ。エドワード《第一王子殿下》」
この言葉を放った私の目は、我ながらかなり冷めていた。
「っ、なんだと」
私の軽蔑するような視線に気付いたエドワードが少したじろぐ。
「まぁ、いいですわ。私も婚約者がいながら浮気をするような殿方とは、結婚したくありません。婚約破棄の件同意します」
私はそれだけ言うと、エドワード殿下達に背を向けた。さっさとこの空間から出たい。だが、会場から出ようとする途中、一度だけ振り返ってこう言った。
「殿下、リース伯爵令嬢。どうぞお幸せに」
笑顔で、思いっきり皮肉を込めて。
☆ ☆ ☆
私は大急ぎで馬車へ向かう。が、その途中でアルベルト殿下と会った。第二王子アルベルト殿下。エドワードの双子の弟で、爽やかな腹黒イケメン。自身の婚約者を溺愛していることで有名だ。
「ヴァイオレット嬢?まだ舞踏会の時間のはずでは?」
なぜかニッコニコのアルベルトが尋ねてくる。当然だ。第一王子エドワードの婚約者である私がパーティーの最中にこんな所にいるのだから。
「それが…」
私は先程あったことを話した。すると、アルベルト殿下は一つため息を吐き、
「ヴァイオレット嬢。この度の愚兄の行いお詫びします。本当に申し訳ない」
突然の事に、私は戸惑う。だって、王族が公爵令嬢に頭を下げるなんて前代未聞だ。
(どうしよう…と、とりあえず頭をあげてもらわなきゃ!)
「頭をお上げください、殿下。アルベルト殿下が悪い訳ではございません!」
そう言うとアルベルト殿下は、やっと頭を上げてくれた。
「王家からは後日改めて、今後の事を説明いたします」
これはエドワード殿下、後でこってり絞られるでしょうね。
「ふふ」
そう考えると、私は思わず笑ってしまった。
「アルベルト殿下」
私は彼に向き直った。しっかりと彼の目を見て、
「リリーを大事にしてくださいね」
そう言った。まぁ彼に対しては要らぬ忠告だろうが。彼の婚約者である可愛い従姉妹にはこんな思いはさせたくない。
「えぇ。それに関しては心配ございません。リリーが嫌だと言っても、離すつもりはありません。…えぇ、二度と逃がさない」
アルベルト殿下がとても良い笑顔で頷く。最後の一言が怖い…
この間聞いたのだが、リリーは一度アルベルト殿下から逃げたらしい。自分が彼に相応しくないと思ったかららしいが…その頃はもうアルベルト殿下がリリーを溺愛して、外堀を埋めようとしていたのに。
(これで気付かないって、リリー鈍すぎでしょ…)
私は心の中で、一つ下の従姉妹の鈍さに苦笑する。
「頼もしいですね。でもリリーを泣かせたら、王子だとしても許しませんわ。それでは失礼します」
そう言って私は帰路に着いたのだった。
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