第2話

 声がしたと思われる二階にたどり着く。

「——こっち」

 また声が聞こえる。

「……あっちか」

 曲がり角を曲がった先だということが分かった。

 その声の正体は誰なのか、少し怖いが歩き出す。

 声を聞く限り、海斗と同じくらいの年齢の少女だと思う。

「音楽室……」

 曲がり角を左に曲がった先には、「音楽室」という札が扉の上に掛かっていた。

「……」

 怖いと思いつつも、ゆっくりと扉を開ける。

 すると、電気はついていなかった。


「——来た」


「!」

 暗闇の中から声がした。

 海斗は身構える。

「怖い者じゃない。電気つけて」

「…………」

 海斗は言う通りに音楽室の電気をつける。

 電気をつけても、その声の正体は見当たらない。

「どこ見てんの。こっちだってば」

 そう言われ声のした方を振り返るも、誰もいない。

「はぁ……見えてないんだ」

 声からするに、少し落ち込んでいるように聞こえる。

「……お前は誰なんだ」

 はたから見れば、空気人間と喋っているような感じである。いわば、独り言。

遠藤由猪えんどうゆいだよ」

 聞いたことのない名前だった。

「とにかく。私が見えないってことは異常事態だしー……どうしよっかなー」

 何かブツブツ言っている。

「待てよ。お前は、なんで俺を呼び寄せたんだ?」

「あー、別に深い意味はない。学校に一人残ってたから、ちょっと声かけてやろうって思って」

「……そんな理由で、ここに呼んだのか」

「そうそう」

 そんな話をしていると、窓の外が完全に真っ暗になっており、終いには雨も降っている事態となっていた。

「そろそろ帰らないといけないんだけど……」

「えー……はぁ、また明日来るよね?」

「……さあな」

 海斗はそう言って、音楽室の電気を消さず足早に、暗い廊下へと消えていった。

 


 

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