第2話
俺のクラス――5年2組はA棟校舎の3階にある。
担任は30代の男の先生で、
俺が小学五年生の時代が好きだった大きな理由の一つだ。
みんなの前では冗談をよく言い、豪快にふるまうが、一人一人に合わせた接し方をするためどんなタイプの生徒からも信頼されていて人気があった。
授業もほかの先生とは一味違い、理科の授業では頻繁に外に出たり、算数では先生は黒板を使わずに児童同士で教えあうのを主にしたりと当時にしても現代にしてもなかなか斬新なことをやっていた。
それでもテストの点が周りのクラスよりも低いなんてことはなかったから、よっぽどすごい先生だったのだろう。
俺と大介と明香里ちゃんは全員5年2組。
俺の絵具セットのせいでギリギリの登校になったため、席の周りの友達に「おはよ」とあいさつを交わすだけで席についた。
教室に入ってすぐに俺の防災頭巾が置いてある席が目に入ったから助かった。
朝読書に机の中に入っていた本を懐かしんで読んでいると、途中で林先生が現れる。
大きくてがっしりとした体に、少し後退気味の頭。「はげかけてる」って自虐して生徒からもいじられてたっけ。
「はい、朝読書終わり!今日日直の人、朝の会お願いしまーす」
8時40分になると、先生も読んでた本をパタリと閉じてそう言った。
日直は男子一人、女子一人が順番でローテーションしていく。
今日の日直は、活発そうな男子の
あれ、前に出てから気が付いたけど確かこの二人って……。
「……夫婦コンビだ」
教室の後ろの方からポツリと声が聞こえた。
「ちょっと!今なんか言った!?」
そう夏帆が返すと「だってさあ~」などと茶化す声が教室中で上がる。
そうだった。
この二人は幼馴染で息もぴったり。
仲が良くて一緒にいることも多いため、カップルを茶化したい小学五年生の格好の的になっていたんだった。
でもこの二人って結局付き合ってたんだっけ?
さすがにそこまでは思い出せない。
「はーい、今は朝の会、朝の会。始めるぞー、勇雅号令よろしく。」
先生が軽く流して先を促すと、会はつつがなく進行した。
それにしても、朝の会の懐かしさといったらたまらない。
健康観察の「今日元気です」といい、今月の歌といい、プログラムが進むたびに小さな感動を覚える。
時間割は図工、図工、算数、国語、学活。
それも学活はお楽しみ会らしい。
なかなかのあたりだな。
今日一日、俺は懐かしいこのクラスで学校生活を送ることになる。
ずっと「戻ってみたい」と思っていた時代のど真ん中なのだが……。
胸の中ではわくわくする気持ちと不気味に思う気持ちが複雑に混じっていた。
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