第56話 マドレーヌside3
(どうしてわたしがこんな風に責められないといけないの!?)
もうマドレーヌの知っている物語とは違う道に進み始めている。
このままどうしたらいいのかなんて、わかるはずもない。
(もうこんなの無理よ……!)
シュバリタリア国王や父の説得にも耳を貸さずにいたのだが、二週間経って限界が訪れたらしい。
あんなにも優しかった父や母も『宝玉を浄化してこい!』と、怒鳴り声を上げるようになった。
マドレーヌを味方するものなど一人もいない。
宝玉を理由にマドレーヌに責任を擦り付けようとしている。
そして、ついにマドレーヌの部屋の扉が蹴破られてしまった。
「──マドレーヌ、いい加減にしろ!」
「キャアアァァッ! やめてぇ……!」
今度は父に引き摺られるようにして部屋に出される。
母に助けを求めようとしても、冷たい視線を送られるだけ。
そのまま身なりも整えることなく、無理矢理城まで連れていかれてしまう。
宝玉の間に行くまでに、マドレーヌに向けられる殺意が込められた視線。
案内された部屋の中には、怒りに顔を真っ赤にしたシュバリタリア国王と顔面蒼白なセドリックの姿。
そこで告げられたのは信じられない言葉だった。
嘘をついていたこともバレたマドレーヌは、その罰として永遠に宝玉に祈りを捧げることを命じられる。
(信じられない……っ!そんなことできるわけないでしょう!?)
シュバリタリア国王の隣にいるセドリックに視線を向けても、もちろん助けてはくれない。
仄暗い表情で「俺は悪くない」と、ブツブツと呟いている。
父も母も、マドレーヌを見捨てたそうだ。
マドレーヌが知らない間に、何もかも壊れてしまったのだ。
(なんでわたしだけこんな目に遭うのよっ……!)
宝玉の間に投げ込まれるようにして、閉じこめられたマドレーヌはひたすら扉を叩いていた。
マドレーヌが振り返ると、そこには王妃や複数の令嬢たちの姿があった。
フランソワーズを追い出した時に、マドレーヌに協力して嘘をついた令嬢たちだ。
どうやら嘘をついたことで罰を受けているようだ。
涙目でこちらを睨みつけて、暴言を吐いてくる。
彼女達が囲んでいる宝玉は半分以上、真っ黒に染まっている。
あまりの禍々しさに「ヒッ……!」と、引き攣った声を上げた。
王妃はマドレーヌに掴み掛かる。その顔は怒りに満ちていた。
「──あなたのせいよ!」
爪が皮膚に食い込んで痛みからマドレーヌは叫んだ。
「い、いた! 離してっ!」
げっそりとした王妃の頬はこけて、以前の面影がないほどにひどいものだった。
血走った目は見開かれており、殺意のこもった視線は恐ろしい。
「今すぐに宝玉を浄化しなさいっ! でなければお前を処刑してやる……!」
どこにそんな力があるのか。
マドレーヌは王妃に髪の毛を鷲掴みにされて、引き摺られるように宝玉の前へ。
マドレーヌは痛みに泣き喚いていたが、誰も助ける者はいない。
「きちんと自分の役目を果たしなさいっ!」
「……っ!」
「こんなことになるくらいなら、あなたじゃなくてフランソワーズの方がずっとよかったっ! フランソワーズを返してちょうだい!」
フランソワーズと比べられたマドレーヌは唇を噛んでいると、皆は休憩のために部屋から出て行くようだ。
一方的に暴言を吐きかけられて、マドレーヌは手のひらを握り込む。
重苦しい空気の中、鍵が閉まる音が聞こえた。
宝玉がある部屋に閉じ込められてしまう。
こんなところで一生過ごすなんて考えられなかった。
次第に怒りがマドレーヌの頭を支配する。
次の日も代わる代わる入ってくる令嬢たちと一緒に、徐々に黒く染まる宝玉の力を押さえていた。
回復したのか、王妃も宝玉を抑えるために部屋に入る。
そこで衝撃的なことを聞かされることになった。
王妃は皆を集めて真剣な表情でこう言った。
「今、隣国のフェーブル王国にいるフランソワーズを取り戻すために動いているわ」
それを聞いた令嬢たちの表情がパッと明るくなる。
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