第43話
「ふふっ、フランソワーズにそう言ってもらえるなんて、ステファンお兄様も幸せね」
「そうかしら」
フランソワーズはそう言って首を傾げた。
「自信持っていいのに……! あなただって同じよ?」
「……でも」
「あんなに愛されているのに。ステファンお兄様にアピールが足りないみたいって言っておこうかしら」
「オリーヴ!」
「あはは、冗談よ」
フランソワーズは笑うオリーヴを見て唇を尖らせた。
「ステファンお兄様は、ああ見えてこだわりが強くて、一度決めたら諦めたりしないからフランソワーズも大変ね」
「……え?」
オリーヴの言葉の意味がわからずに、詳しく意味を聞こうとした時だった。
「オリーヴ、フランソワーズに余計なことを吹き込むのはやめてくれないか?」
「あら、ステファンお兄様!」
フランソワーズの背後から現れたのは、正装したステファンだった。
どうやら公務を終えて、そのままここにきたらしい。
「余計なことなんてとんでもないですわ。それに今はわたくしがフランソワーズとお茶をしているのよ?」
「僕もフランソワーズと一緒に過ごしたいな」
「ステファンお兄様はいつもフランソワーズと一緒にいるではありませんか!」
「それならオリーヴもだろう?」
「わたくしだってフランソワーズが大好きなんだから!」
「僕だっていつもフランソワーズ不足だよ」
フランソワーズの目の前で言い争いをしているいるオリーヴとステファン。
大抵、二人はどちらがフランソワーズと一緒に過ごすかを争っている。
しかしタイミングよく彼女の婚約者、アダンがオリーヴを迎えに来たことでその争いも終わった。
「アダン……わざわざ迎えに来てくれたの?」
「ああ、今日の体調は大丈夫かい?」
「えぇ、とても元気よ!」
オリーヴは立ち上がると、満面の笑みを浮かべながらアダンの元へ。
アダンはステファンとフランソワーズに挨拶をしてからオリーヴの手を取った。
愛おしそうに見つめ合う二人を見ていると微笑ましい気持ちになる。
少しだけ四人で話した後に、二人は今からデートに行くと去っていく。
フランソワーズはオリーヴたちが見えなくなるまで手を振っていた。
手を下ろすと、隣にいたステファンが優雅にフランソワーズの手を取る。
そのまま愛おしそうに手の甲に口付けた。
触れている手から熱が伝わって、ほんのりと頬が赤らんでいく。
「今日も綺麗だよ。フランソワーズ」
「あ、ありがとうございます……! ステファン殿下」
相変わらずフランソワーズはステファンから熱烈なアピールを受けていた。
最近ではステファンに押されっぱなしである。
「今日もフランソワーズにプレゼントがあるんだ」
「わたくしにですか?」
「フランソワーズに似合うと思って……」
「……素敵!」
フランソワーズに渡されたのは美しい真紅の薔薇だった。
ステファンから薔薇を受け取ったフランソワーズは嬉しさから自然と笑顔になる。
ステファンはこうしてフランソワーズに似合うから、好きそうだから、という理由で様々なものをプレゼントしてくれる。
「帰り道に馬車で通っている時に見かけたんだ」
「そうなんですね」
「一緒に買い物に行かないか? フランソワーズにドレスやアクセサリーをプレゼントしたいんだ。それから今度のパーティーに僕のパートナーとして出席してくれないか?」
「ステファン殿下、待ってください!」
フランソワーズはステファンの言葉を遮るように声を上げる。
「本当にわたくしにでいいのですか……?」
「そうだよ。僕はフランソワーズがいいんだ」
フランソワーズはステファンの婚約者でもないのに、こうしてもらうことに罪悪感を感じていた。
こちらの気持ちを察してか、ステファンは困ったように笑う。
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