300年前に魔王が斃れすっかり平和が訪れた世界に転生した現代人たち。ある日神によって、そんな彼らに命令が下される。その内容とはこの平和ボケした世界を盛り上げるべく魔王に続く新たな巨悪となれというもの。しかも最終的にはわざと敗北して勧善懲悪を成り立たせなければいけないのだ!
こんなろくでもないミッションを進めるために神から与えられたのが、仲間内で情報交換をするための匿名掲示板のスレッド。しかし、異世界にはインターネットもスマホもないので、スレッドはそれぞれの脳内で直接展開される。うーん、この。
脳内掲示板では匿名掲示板特有の軽いノリで話している彼らだが、悪役なので実際の行動は平気で人を殺したり、新たなモンスターを作る実験台にしたりとかなり邪悪。物語は現地人の視点も交えて繰り広げられ、掲示板でバカな話ばかりしている主人公たちが、現地側の視点からでは正体不明の恐ろしい集団として描かれるギャップがすさまじい。
また、主人公たちは自分たちが敗北するために、自作自演で敵となる勇者を育てようとするのだが、所詮は匿名掲示板に集まった烏合の衆。中には流れを無視して勇者を始末しようとしたりする者が現れたりと、一筋縄ではいかないストーリーも面白い。掲示板の馬鹿馬鹿しいやりとりと、異世界で暗躍する悪役たちによるシリアスな物語という、全く異なる二つの要素を同時に楽しめる異色のファンタジーだ。
(「掲示板に集まる人たち」4選/文=柿崎憲)
神は飽きていた。魔王も倒され魔物も減り続け、国々も牽制するが戦争は起こさず平和な世界に。そして神は英雄譚が見たい。
だから世界の敵(クズ判定された被害者達)を呼び、彼らに全てを任せて楽しむ事にした。
逆らえば魂を抜かれ死ぬまで玩具にされるか、英雄譚の物語で敵として死ぬか選ぶしかない。
授けられた力は全盛期の姿での不老と、死後でも使える掲示板だった。
そして彼らは開き直った。好きに生きて、英雄譚を達成しようと。
多くの被害と死者を出し苦しめる彼等だが、クズなりの生き様を貫き通し英雄達と相対する。
表の話は英雄達の話。裏は英雄譚にしようと暗躍し翻弄し、見届けようとする世界の敵達の話である。