【ケリ】中ボス戦観戦待機場【付けようや】

34:元副隊長@爆発系男子

ぬわああああん疲れたもおおおおん

 

35:名無しの悪党@荒らし活動中

きったな

 

36:名無しの悪党@荒らし活動中

お疲れ副隊長

 

37:名無しの悪党@荒らし活動中

 

38:名無しの悪党@荒らし活動中

お帰り

 

39:元隊長@殉職中

よーアレ止めたな

 

40:名無しの悪党@荒らし活動中

副隊長のおかえりだー!

 

41:名無しの悪党@荒らし活動中

敬礼( ̄^ ̄)ゞ

 

42:元副隊長@爆発系男子

強さだッピ!

 

43:名無しの悪党@荒らし活動中

む、り

 

44:名無しの悪党@荒らし活動中

ロリババアほんまw

 

45:名無しの悪党@荒らし活動中

意外でもなんでもない当たり前の結果で草

 

46:名無しの悪党@荒らし活動中

完・敗!

 

47:名無しの悪党@荒らし活動中

アレは勝てんて

 

48:元副隊長@爆発系男子

なんで固定砲台みたいな役職のくせにバリバリ前衛職みたいに殴ってくるんすかねぇ?

 

49:名無しの悪党@荒らし活動中

脳筋ババア

 

50:名無しの悪党@荒らし活動中

攻めってよりかはカウンターに近いけどそれでもなぁ

 

51:名無しの悪党@荒らし活動中

加重、加速、加硬の三拍子で殴ってくるのは違うやん?

 

52:名無しの悪党@荒らし活動中

仮にも賢の名を持つ奴が拳ですかそうですか

 

53:名無しの悪党@荒らし活動中

ワイ前衛やが近接でも勝てる自信が無い

 

54:名無しの悪党@荒らし活動中

クソが!

 

55:名無しの悪党@荒らし活動中

>>52

賢(けん)じゃなくて拳(けん)ってか

 

56:名無しの悪党@荒らし活動中

 

57:名無しの悪党@荒らし活動中

HAHAHA

 

58:名無しの悪党@荒らし活動中

あれ、誰か氷天下使った?

 

59:元副隊長@爆発系男子

おい止めろよ死体蹴りか?

 

60:名無しの悪党@荒らし活動中

凍った上に蒸発した可哀想な男

 

61:名無しの悪党@荒らし活動中

ジュワッ

 

62:名無しの悪党@荒らし活動中

ウルトラマンかて

 

63:名無しの悪党@荒らし活動中

アレ半分隊長のせいやろ

 

64:元隊長@殉職中

え、ワイ?

 

65:名無しの悪党@荒らし活動中

なんや太陽て

 

66:名無しの悪党@荒らし活動中

隕石の次は太陽ですか

 

67:名無しの悪党@荒らし活動中

天文部長

 

68:名無しの悪党@荒らし活動中

確かに副隊長にとどめ刺したんって隊長の魔術では?

 

69:名無しの悪党@荒らし活動中

まだ生きとったかもしれんのに!

 

70:名無しの悪党@荒らし活動中

こーの人で無し!

 

71:名無しの悪党@荒らし活動中

鬼悪魔隊長!

 

72:元副隊長@爆発系男子

ソウダネ(ホントは凍った時点で死んでたとか言えない)

 

73:名無しの悪党@荒らし活動中

あんなもん部下に押し付けるとか人の心無いんか?

 

74:元隊長@殉職中

理不尽(´・ω・`)

 

75:名無しの悪党@荒らし活動中

実際アレなんなん?

 

76:名無しの悪党@荒らし活動中

四節二重詠唱にしても威力ヤバヤバやんな

 

77:名無しの悪党@荒らし活動中

熱そう(小並感)

 

78:名無しの悪党@荒らし活動中

あれかブーストか

 

79:名無しの悪党@荒らし活動中

最後は完封されたとはいえ結界ぶち壊したんはマジで凄いと思う

 

80:元隊長@殉職中

何ってめっちゃ単純やで

火力上げる為に周りマントルで囲んでメチャクチャ圧力かけただけ

副隊長が復活した時点で魔術が発動しとって、あの間ずっと中で爆発しとったんよ

 

81:名無しの悪党@荒らし活動中

??

 

82:名無しの悪党@荒らし活動中

ふーん

 

83:名無しの悪党@荒らし活動中

ほぉ

 

84:名無しの悪党@荒らし活動中

超高圧、超高温の火球って、こちょ?

 

85:名無しの悪党@荒らし活動中

地球の核的な?

 

86:名無しの悪党@荒らし活動中

普通に外郭溶けるのでは

 

87:名無しの悪党@荒らし活動中

火力を上げる→外郭が溶ける→圧力をかける→外郭が固体に戻る→火力を上げる→以降繰り返し

 

88:元隊長@殉職中

そー

 

89:名無しの悪党@荒らし活動中

ほーん(鼻ほじ)

 

90:名無しの悪党@荒らし活動中

とりあえず凄い事はわかった

 

91:名無しの悪党@荒らし活動中

要は地球型惑星の内臓をめっちゃコンパクトにしたんやな

 

92:名無しの悪党@荒らし活動中

太陽ちゃうやん

 

93:名無しの悪党@荒らし活動中

流石隕石落とすだけはありますわ

 

94:名無しの悪党@荒らし活動中

アイツも驚いたったし功績は十分やな

 

95:元隊長@殉職中

やったぜ

 

96:元副隊長@爆発系男子

実際あれ無かったら一瞬で溶けてました

 

97:名無しの悪党@荒らし活動中

相手が悪い(確信)

 

98:名無しの悪党@荒らし活動中

隊長とかアレとか見てて感覚狂うけど四節二重詠唱とか三節三重詠唱とか普通出来んから

 

99:名無しの悪党@荒らし活動中

三節二重で挫折したワイ

 

100:名無しの悪党@荒らし活動中

そもそも魔術使えない定期

 

101:名無しの悪党@荒らし活動中

論外で草

 

102:名無しの悪党@荒らし活動中

あんな通常攻撃みたいにポンポン使わんとって欲しい

 

103:名無しの悪党@荒らし活動中

単独の四節詠唱でも魔力循環が追いつかないんやが?

 

104:名無しの悪党@荒らし活動中

どいつもこいつも人間辞めすぎでは()

 

105:名無しの悪党@荒らし活動中

まあそんなたいちょうのかんがえたさいきょうのひっさつわざも一発で返された訳ですが

 

106:名無しの悪党@荒らし活動中

 

107:名無しの悪党@荒らし活動中

アレはレギュレーション違反ですね間違いない()

 

108:元隊長@殉職中

何あれ、知らん

 

109:名無しの悪党@荒らし活動中

もはやキモい

 

110:名無しの悪党@荒らし活動中

いきなり初見殺しはどうかと思うんすよ

 

111:名無しの悪党@荒らし活動中

正義側が初見殺ししてええの?

 

112:名無しの悪党@荒らし活動中

??「勝てば良かろうなのだぁー!」

 

113:名無しの悪党@荒らし活動中

それ悪の権化やろ

 

114:名無しの悪党@荒らし活動中

まあ言うてワイらが観察してきたのなんか一世紀も無かった訳やしそりゃ見た事ない技もあるでしょうよ

 

115:名無しの悪党@荒らし活動中

もっと曝け出せ

 

116:名無しの悪党@荒らし活動中

脱げ(直球)

 

117:名無しの悪党@荒らし活動中

あ、衛兵さんちゃすちゃす

 

118:名無しの悪党@荒らし活動中

連れて行きなさい(デスゲームマスター風)

 

119:名無しの悪党@荒らし活動中

でもコレでまだワイらが見た事ない技が他にもある可能性が出てきたな

 

120:名無しの悪党@荒らし活動中

うへぇ

 

121:名無しの悪党@荒らし活動中

はぁー(クソデカため息)

 

122:名無しの悪党@荒らし活動中

戦式魔術だけにしとけ〜?

 

123:名無しの悪党@荒らし活動中

戦うための魔術以上に強い魔術があって良いの?

 

124:名無しの悪党@荒らし活動中

ダメです(断言)

 

125:名無しの悪党@荒らし活動中

何のための戦式なのか

 

126:名無しの悪党@荒らし活動中

言うて戦式も破壊に特化しとるけどあんまりにもエグいやつとかは全部禁術行きなんやろ?

多分殺すための魔術とかも意外とあると思うで

 

127:名無しの悪党@荒らし活動中

そういうやつに限って侵入できひんレベルで厳重に管理されとるんよなぁ

 

128:名無しの悪党@荒らし活動中

ケチんぼ

 

129:名無しの悪党@荒らし活動中

あれもそうなんかね

 

130:名無しの悪党@荒らし活動中

情報公開してけー?

 

131:名無しの悪党@荒らし活動中

>>129

いや、アレはオリジナルやろ

 

132:名無しの悪党@荒らし活動中

反則

 

133:名無しの悪党@荒らし活動中

失格!退場!(世界から)

 

134:名無しの悪党@荒らし活動中

引きニキ効きそう

 

135:名無しの悪党@荒らし活動中

意外と相性悪い、かも?

 

136:名無しの悪党@荒らし活動中

引きニキは素であの生命力やしなぁ…あーでもあの技やとワンチャンヤバいか?

 

137:名無しの悪党@荒らし活動中

この感じやとほぼ100パーエンカウントする

 

138:名無しの悪党@荒らし活動中

出来ればチーム主人公に殺ってもらいたいんやけど

 

139:名無しの悪党@荒らし活動中

統括でも流石に止めれんやろし

 

140:名無しの悪党@荒らし活動中

此処で統括に死なれるんは痛い

 

141:統括@組合就業中

呼んだ?

 

142:名無しの悪党@荒らし活動中

 

143:名無しの悪党@荒らし活動中

来ちゃ

 

144:名無しの悪党@荒らし活動中

あれ、思ったより早い?

 

145:名無しの悪党@荒らし活動中

噂をすれば何とやら

 

146:名無しの悪党@荒らし活動中

付き人ちゃんどうしたん?

 

147:名無しの悪党@荒らし活動中

なんか思った以上にしぶとかったっぽいけど

 

148:名無しの悪党@荒らし活動中

両足欠損からの即興義足捩じ込んたらしいやん?

 

149:名無しの悪党@荒らし活動中

ドン引き

 

150:名無しの悪党@荒らし活動中

うわぁ

 

151:名無しの悪党@荒らし活動中

実況する余裕あるの草

 

152:統括@組合就業中

正直舐めてたわ

 

153:名無しの悪党@荒らし活動中

やーいやーい

 

154:名無しの悪党@荒らし活動中

良いもん一発貰ってやんの

 

155:名無しの悪党@荒らし活動中

??「余裕♪」

 

 

156:名無しの悪党@荒らし活動中

クソワロタ

 

157:名無しの悪党@荒らし活動中

所詮組織の面汚しよ

 

158:統括@組合就業中

お前ら全員ダルマな

 

159:名無しの悪党@荒らし活動中

ごめんやん

 

160:名無しの悪党@荒らし活動中

すまんて

 

161:名無しの悪党@荒らし活動中

それは違うくない?

 

162:名無しの悪党@荒らし活動中

あ、ふーん

 

163:名無しの悪党@荒らし活動中

すまんやで

 

164:名無しの悪党@荒らし活動中

可愛い部下の冗談です(五体投地)

 

165:統括@組合就業中

ままええわ

付き人ちゃんやけど、とりあえずあんまりにも噛み付いてくるから手脚だけ砕いて捨てて来た

流石にアレなら動けんと思う

 

166:名無しの悪党@荒らし活動中

うっわ

 

167:名無しの悪党@荒らし活動中

( ・᷄-・᷅ )

 

168:名無しの悪党@荒らし活動中

最低

 

169:名無しの悪党@荒らし活動中

人間のする事じゃない

 

170:名無しの悪党@荒らし活動中

こーの人で無し!

 

171:統括@組合就業中

まあでもそれぐらいせんと四肢引きずってでも来るし

 

172:名無しの悪党@荒らし活動中

だから引き摺る四肢ごと潰したと

 

173:名無しの悪党@荒らし活動中

でも義肢があるんやろ?

意味なくね?

 

174:名無しの悪党@荒らし活動中

ホンマやん

 

175:名無しの悪党@荒らし活動中

後ろ見てみ

おるかもやで

 

176:統括@組合就業中

いや、多分欠損部分の組織ほぼ死んどるし、体力的にも自力じゃ回復できんのちゃう?

 

177:名無しの悪党@荒らし活動中

え、それだいじょぶなん?

 

178:名無しの悪党@荒らし活動中

死んじゃうよ〜?

 

179:名無しの悪党@荒らし活動中

今死ぬとちょっと面倒やからどうにかせえよ

 

180:名無しの悪党@荒らし活動中

おいおいおい死んだわアイツ

 

181:統括@組合就業中

どうせ助け来るしそんな簡単に死なんやろ

少なくとも全部終わるまでは間違いなく生きとるから助かるには助かる

 

182:名無しの悪党@荒らし活動中

まあ壊死ぐらいなら

 

183:名無しの悪党@荒らし活動中

そもそも四肢切り落としても自力で何とかしとるしね

 

184:名無しの悪党@荒らし活動中

ほなええか

 

185:名無しの悪党@荒らし活動中

流石に相手が統括なんは付き人ちゃんも不憫やな

 

186:名無しの悪党@荒らし活動中

ドンマイ

 

187:名無しの悪党@荒らし活動中

かわいそう

 

188:名無しの悪党@荒らし活動中

付き人ちゃんがダルマになってるとこ見たかったなぁ(しみじみ)

 

189:名無しの悪党@荒らし活動中

うわ

 

190:名無しの悪党@荒らし活動中

レベル高ぇ…

 

191:名無しの悪党@荒らし活動中

欠損はちょっと…

 

192:名無しの悪党@荒らし活動中

縁がちょ!縁がちょ!

 

193:名無しの悪党@荒らし活動中

人の不幸で興奮できるワイらの鑑にして人間の屑

 

194:名無しの悪党@荒らし活動中

変態は帰ってどうぞ

 

195:名無しの悪党@荒らし活動中

美人が死に体で頑張るのは良いもんや

 

196:名無しの悪党@荒らし活動中

うーんこのw

 

197:名無しの悪党@荒らし活動中

流石此処にドヤ顔で居座るだけはある

 

198:名無しの悪党@荒らし活動中

ところでどうやら全体的に動きが出てきたようですが

 

199:名無しの悪党@荒らし活動中

そろそろこの章も終わりか

 

200:名無しの悪党@荒らし活動中

なげぇわ、いやマジで

 

201:名無しの悪党@荒らし活動中

言うて暴れただけやん

 

202:名無しの悪党@荒らし活動中

それが長いって言っとんやろがい

 

203:名無しの悪党@荒らし活動中

で、結局この章で引きニキは死ぬん?

 

204:名無しの悪党@荒らし活動中

いやぁ

 

205:名無しの悪党@荒らし活動中

うーん

 

206:名無しの悪党@荒らし活動中

結局な

 

207:名無しの悪党@荒らし活動中

でも勇者ちゃんも何か変化は見えるっぽい

 

208:名無しの悪党@荒らし活動中

らしいな

 

209:名無しの悪党@荒らし活動中

ヒきニキ は キョウミを シメした

 

210:名無しの悪党@荒らし活動中

何かしらあったんやろな

多分王子くん関連やけど

 

211:名無しの悪党@荒らし活動中

王子くんチョメチョメしたからじゃね?

 

212:名無しの悪党@荒らし活動中

やっぱ怒りか?

 

213:名無しの悪党@荒らし活動中

そんな黄金の戦士じゃないんやから

 

214:名無しの悪党@荒らし活動中

あと一歩かな?

 

215:名無しの悪党@荒らし活動中

愛ですよ愛

 

216:名無しの悪党@荒らし活動中

かわいいですね

 

217:名無しの悪党@荒らし活動中

可愛いのは間違い無いけど

 

218:名無しの悪党@荒らし活動中

さっきも言ったけど、出来れば勇者ちゃんらに自力で倒して欲しいからアレと直接やり合うのは別の機会にしたい

 

219:名無しの悪党@荒らし活動中

でもあっちから来るやん?

 

220:名無しの悪党@荒らし活動中

引きニキが勇者ちゃんとか王子くん逃す訳ないし、二人がおるなら戦いにくくはなるんでね?

 

221:名無しの悪党@荒らし活動中

せっかく来たし殺っちゃわん?

 

222:名無しの悪党@荒らし活動中

でも一緒におったら成長しそうではある

 

223:名無しの悪党@荒らし活動中

うーん

 

224:名無しの悪党@荒らし活動中

イレギュラーほんま…

 

225:名無しの悪党@荒らし活動中

森にお帰り!

 

226:名無しの悪党@荒らし活動中

mnd

 

227:統括@組合就業中

もう引きニキに任せれば良いのでは?

 

228:名無しの悪党@荒らし活動中

それでええか

 

229:名無しの悪党@荒らし活動中

投げやりで草

 

230:名無しの悪党@荒らし活動中

現場の引ニキさーん

 

231:名無しの悪党@荒らし活動中

おなしゃす

 

232:名無しの悪党@荒らし活動中

見てるか知らんが頼んだ

 

233:名無しの悪党@荒らし活動中

とりあえず勇者ちゃんか王子くんが引きニキ殺せそうならヨシ

ダメなら適当に撤退で

 

234:名無しの悪党@荒らし活動中

此処までやってきて結局コレですか

 

235:名無しの悪党@荒らし活動中

ままエアロ

インパクトはあったし、此処で引きニキがどっか逃げてもそれっぽくはある

 

236:名無しの悪党@荒らし活動中

逃げれるかなぁ…

 

237:名無しの悪党@荒らし活動中

厄介なババアめ

 

238:名無しの悪党@荒らし活動中

ロリやろがい異論は認めん

 

239:名無しの悪党@荒らし活動中

完封はされんと思うけど…

 

240:名無しの悪党@荒らし活動中

鳳は任せたぞー

 

241:名無しの悪党@荒らし活動中

幹部らしさ見せとくれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ァ……グ……ッ」

 

 

 ユラは銀と化した平原に倒れ伏していた。

 

 鋼で出来た四肢の内二つは潰れ、一つは霜に侵され感覚さえ死んでいる。

 冬でもないのに吐く息は白く、冷気に包まれた身体は小刻みに震えていた。

 

 それは果たして単に凍らされた弊害か、それともすぐそこまで来ている死へと向かっているからなのか。

 

 漠然たした思考では考えることもできなかった。

 

 

「…殿…下……」

 

 

 痛いくらいに冷たい喉を震わせながら主人を呼ぶ。

 聞こえるはずもないその声はフッ、と夜空に消えて行く。

 

 虚空へと伸ばす手は、しかし力も入らずピクリとも動かない。

 

 

「———これはまた…随分と手酷くやられたね」

 

 

 耳がガラスの破片を砕くような霜を踏む音と共に、そんな幼い声を拾う。

 

 

「じっとしていたまえ…とは言っても、動けないだろうが」

 

 

 声の主がそう言えばユラの肉体が仄かな温もりに包まれる。

 そうして次の瞬間には失っていた筈の四肢とその感覚が戻って来た。

 

 

「…どうだい、問題無く動くかな?」

 

 

 尋ねられたユラは体を起こし、呆然としながらも自身の掌を握り込み、また開き、思い通りに動くことを確認する。

 

 そうして確認ついでに腰を上げる。

 

 

「…助けて頂き誠に感謝いたします」

 

「うむ、良かった良かった」

 

 

 顔を上げたユラの視界の中安心したように微笑むのは寒気がする程に整った顔立ちをした少女であった。

 

 白のローブに身を包み、金緑の髪を足元まで伸ばした姿は妖精の如く、女性らしい起伏は無くともむしろそれが少女の可憐さを際立たせている。

 

 そしてユラが何よりも最初に捉えたのは———

 

 

「———森人エルフ、でございますか」

 

 

 ———その特徴的な尖った耳だ。

 

 森人エルフと呼ばれる種は人間が文明を築くよりも更に古代よりこの世界に暮らしていた、いわば先住民である。

 彼等は人間と姿形は似ているがそのルーツが全く別であり、それを表すようにその寿命も人間とは比べ物にならない程に長い。

 

 古くは森の深部にて暮らしており、自然を奪いその領域を広げて行く人間を敵対視していたとされている。

 

 しかし、ある日突如として現れた災厄である魔王を討伐したことを機に少しずつ友好を築いてゆき、今では外界でも交流しているところをチラホラと見かけるような関係となっている。

 

 ユラの目の前にはそんな生きた化石のような存在がこちらを覗き見るようにして立っていた。

 

 

「そうさ。少し用事があってこちらの方に出向いて来たんだけど…どうにも穏やかじゃないね」

 

「はい。先日の動乱に続き、またしても何者かによりこの事態が引き起こされたようでして…我が国の第二王子も、現在行方不明となっております」

 

「…ほぅ」

 

 

 彼女の言葉に少女は目を細め、その柔らかな表情を険しいものへと変える。

 

 

「大変失礼ながら、助けて頂きお礼をさせて頂きたいところではございますが…」

 

「…あの森に向かう、と?」

 

 

 ユラの向かう視線から、察したままに尋ねる少女にユラは静かに頷いた。

 

 すると少女はその目を伏せ逡巡し、ユラへと告げる。

 

 

「———止めておきなさい」

 

 

 諭すような、優しげな声でそうバッサリと切り落とすように言う。

 

 

「…」

 

 

 ユラはその言葉に反発するでも、また頷くでもなく、ただ黙って少女を見つめる。

 

 少女はその視線に気付きつつも受け流すことなく、むしろ受け止める。

 

 

「この先…あの森に居るのは、正直私でも手に余る存在だ」

 

「入ってしまった者は仕方ないが、これ以上アレと鉢合わせるリスクを負わせる訳にはいかない」

 

 

 犠牲を出さないため、と少女は言う。

 

 ユラとて彼女の力をその身に受けた者として、彼女が己よりも遥かに力ある存在であることは理解している。

 

 そして、そんな彼女が危険だと言うのであればきっとそうなのだろう。

 

 

「…ッ」

 

 

 ユラは鋼の指、そして再生した指が掌を破かんばかりに握りしめる。

 

 それはつまり、己では主人一人脅威から守れないと、そう言われたのだ。

 

 

「出来れば君には王都の鎮圧をお願いしたいんだ。…任されて、くれるかな?」

 

 

 穏やかなれどまるで自分のことのように辛そうな、申し訳なさそうな顔で少女はそう問うてくる。

 

 

「…畏まりました」

 

 

 ユラは砕けそうな拳を解き、胸に添え感謝を兼ねて深々と頭を下げる。

 

 無力感に苛まれるその瞳を隠すように。

 

 

「はぁ…そう落ち込むんじゃない」

 

 

 そうお辞儀をする彼女を見下ろす少女は徐に膝をつき、顔を伏せるユラの頭へと手を添えた。

 

 そうして、まるで子供をあやすように優しい手つきで撫でる。

 

 

「君は十分に強いよ。あんなになるまで挑んだんだ、弱いわけがないだろう」

 

 

 ゆっくりと動く掌は、ユラの紫紺の髪を崩さないようその髪を解くように廻る。

 

 

「人の強さとは必ずしも力ばかりではない。でなければ、彼の厄災だって討ち取れなかったさ」

 

 

 まるで体験したように、その眼で見て来たかのように言う少女の目には此処ではない何処かが映っていた。

 

 彼女は置いた手を下ろすとユラを起こすようにし、彼女の瞳にその金緑を映しながら言う。

 

 

「強大な敵に挑むという勇気。他者の命を、想いを背負い戦う覚悟。生き残りたいという本能を押し除け抱く、それこそが人間が持つ最たる強さだ」

 

「どれだけの時が経とうとも人が変わろうとも、それだけは変わらないよ。ずっと見て来た私はよーく知っているとも」

 

 

 三百年前より人類に寄り添う愛しき隣人が朗らかにそう語る。

 

 その声に、その顔に、溢れる母の如き慈愛が微風のような魔力と共に平原を覆った。

 銀に染まる平原は生命の緑を取り戻し、その首を押さえつける銀の蓋を溶かし去る。

 

 

「力では負けた…だが、守護者としては死んでなどいない。君はその己の強さを信じたまえ。それこそが君の主人への最大の忠誠となるさ…きっとね」

 

 

 生い茂る草花は悦びを表すようにさざめき、夜風は帰って来た彼等を迎え入れるように緩りとその身を靡かせる。

 

 やがて暖かき金緑はスッと消えれば、まるであの争いが嘘であったかのように傷一つ残っていない平原がその姿を表した。

 

 

「さぁ、此処から先は私に任せなさい。帰る場所を守るのもまた従者の役目だろう?」

 

 

 少女はその魔力を抑えると、自身とユラを風によって浮かせる。

 人を浮かせる程の強風は、しかし決して両者を傷つけはしない程に繊細な操作の下その力を振るう。

 

 

「では、頼んだよ———」

 

「———ッ、はい」

 

 

 ユラが風に目を細めながらもそう確かな返事をすれば、少女は満足げに頷きユラへ翼を与えるとともに王都の方へと飛ばした。

 

 ユラは空中にて僅かにバランスを崩すも、即座にその体制を整え風の翼を己がものとすれば一直線に王都へ向かって飛び立った。

 

 

「ふぅ…さてさて」

 

 

 少女はその光景を見送ると、一転して鋭い視線を森の———その奥に居る存在へと向ける。

 

 

「…気色の悪い」

 

 

 嫌悪、忌避、怒り———負の感情を隠そうともせずその神秘的なまでの魔力を身に纏う。

 

 

「…あの子が護ったこの世界を脅かす罪は重いぞ…」

 

 

 そうして質量を思わせる程に重い声でそう呟いた少女は、暴風のように荒れる魔力と共に森へと向かった。

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