第16話 最強の助っ人
話は昨晩に遡る。
猿を掴んで飛び出してきたエディは、エインとオーウェンに何が起こったのか説明した。
「たった今、ゲートからこの猿が飛び出してきたんだよ!!」
「この猿が……」
「ああ、向こう側の誰かが、お前が言ってたのと同じように、猿で生体実験したんだよ」
エディとエインが異世界転移ゲートを完成させたとき、次の問題が生体実験だった。
いきなり人間が飛び込むのは危険過ぎるため、エインはまず猿を送り込むことを考えたが、心理的に抵抗があり、保留となっていた。
だが、ゲートの向こう側の何者かがエインと同じことを考え、この猿を送り込んできたようなのだ。
「見た限り、コイツはぴんぴんしてる!!」
エディが掴んでいた猿を離すと、猿は元気に周辺を走り回った。
「次は、人体実験だ」
エディはオーウェンに視線を向けた。
「世界初の異世界転移だ。挑戦してみる勇気はあるか? オーウェン?」
再び現在。
「くそ!? こういうことか!?」
エディたちの発表内容を聞き、Mr.トールマンはエディたちの目論見を瞬時に理解した。
すなわち、あの転移ゲートを使ってオーウェンを異世界に逃がそうとしているのだ。
「どうします!?」
「今すぐ確保だ!! 全隊突入!!」
トールマンが無線でそう指示し、控えていた警察の機動隊が一斉に会見会場になだれ込む。
報道各社の記者たちは、状況が理解できながらも、これは巻き込まれるとまずい判断し、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
会見の舞台を全方向から機動隊が包囲し、トールマンが拡声器で呼び掛ける。
『エディ・トンプソン!! エイン・アルブライト!! そして、オーウェン・ロバートソン!! 君たちは完全に包囲されている!! 悪いようにはしない!! 今すぐ投降しなさい!!』
その警告が発された次の瞬間、空から鋼鉄の巨人が降ってきて、舞台の前に着地する。
「なっ!!」
思いがけない物体の乱入に機動隊の面々が混乱するなか、巨人の頭部から銀髪の少女が姿を見せる。
「ふははははははっ!! この実験は、この世界最強の発明家、ステラ・コニールの協賛だ!! 凡人の雑魚どもに邪魔はさせんぞ!!」
その名を聞いて、トールマンは混乱する。
「ステラ・コニールだと!? なぜだ!? エディ・トンプソンと敵対しているはずでは……」
エディとステラが前世からのライバル同士であることは、転生者の情報に精通している者たちの間では有名な話であった。
「昨晩、エディ・トンプソンが私の軍門に下ったのだ!! E&Eは今日から私の配下だ!!」
ステラは胸を張ってそう言い放ち、その内容にエディとエインは小声で突っ込む。
「そうは言ってない……」
「なんで私まで……」
とんでもなく厄介な危険人物が敵に回ったと判断し、トールマンは強硬手段に出る。
「くそ!! 発砲を許可する!! 撃て―!!」
トールマンの指示で、周囲にいたエージェントたちが懐から拳銃を取り出し、構える。
「くくく……そんなモノが、この私に効くと思っているのか?」
ステラのそんなつぶやきがエージェントたちに聞こえたかどうかわからないが、エージェントたちは引き金を引き、銃弾がステラに向けて放たれた。
が、同時に、鋼鉄の巨人の両肩にそびえているアンテナ状の鉄塔から凄まじい量の雷が放出される。
雷はステラに襲いかかろうとする銃弾に絡みつき、そのことごとくの威力を削ぎ、ばらばらと地に落下させる。
「空中放電で銃弾を無効化した……バカな……」
政府側の一同は、目の前で起こった現象が信じられず立ち尽くす。
「くくく……私を誰だと思っている?」
ステラは両手を広げ、大音声で名乗りを上げる。
「私の名はステラ=コニール!! 電流を統べ、電流で世界を革命した偉大なる発明家の生まれ変わりだ!!」
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