第13話 行動開始
エディとエインの研究所に何人もの作業員が出入りし、分解された機材が次々に搬送車両に積み込まれていく。
「しかし、何もこんな派手なやり方にしなくても……」
「どうせだったら、世界中に大々的に知らせてやらねーと」
エディは意気揚々と作業を指揮し、横からエインがちくちくと非難する。
「メディアを集めると、当然、政府やゲルムラント、他にも潜伏してる各国のスパイが嗅ぎつけて集まってきますよ。彼らの相手はどうするんですか?」
「いるだろ。うってつけの番犬が」
そう言ってエディはニヤリと笑った。
そこは、エディたちの研究室によく似ていた。
窓がなくて薄暗く、様々な作りかけの機械がそこかしこに乱雑に放置されていた。
ただし、雰囲気は似ているが、エディたちの研究室よりも遥かに広く大きく、部屋の中央には全高10メートルの鋼鉄の巨人が佇んでいた。
その巨人の足元で、フェイスガードを被った小柄な少女が溶接機で火花を散らしていた。
エディの前世からのライバル、ステラ・コニールである。
「エディ・トンプソンのやつ、次こそはこの手で、ぎったんぎったんのぼっこぼこに……」
エディの放った冷凍弾から抜け出すときに、ステラのロボットの足にいくつか亀裂が入ってしまい、その傷口を必死に溶接しているところであった。
そんな修理作業のさなか、備え付けの電話が鳴る。
「なんだ、この忙しいのに……」
ステラは溶接機を置き、フェイスガードを外して電話に出る。
「はーい、こちら、ステラ・コニール研究所♡ 発明のご依頼はまず報酬のお話から……」
顔はめんどくさそうにしながらも、精一杯可愛らしい営業ボイスを発する。
そんなステラの耳に、世界で一番聞きたくない声が飛び込んでくる。
『よう、ステラ、俺だ。エディ・トンプソンだ』
「なっ、エディ・トンプソン!? お前、なぜここの番号を!?」
『いや、なぜって、お前、電話番号付きの研究所の広告、街のあっちこっちに出しまくってるだろ……』
呆れ切ったエディのツッコミをスルーし、ステラはさらに語気を荒げる。
「そんなことはどうでもいい!! それより、お前がいったい何の用だ!?」
『お前に頼みたい仕事があるんだ』
「は、何を言うかと思えば!! この私がお前の頼みなど聞くわけがなかろう!!」
「お前にしか頼めないことなんだ」
その言葉にステラの表情が固まる。
『俺はお前の才能に勝てない。俺にはおまえ才能が……いや、お前が必要なんだ!!』
その言葉にステラの胸の奥できゅんと小さな音がする。
しばしの沈黙のあと、ステラは満面の笑みを浮かべて笑い声をあげた。
「……く、くく、くははははははっ!! とうとう認めたか!? そう、私は天才だ!! そして、お前は凡人だ!! 凡人のお前には天才の私が必要なのだ!!」
『ああ、お前の言う通りだ。だから協力してくれ、ステラ』
「しょうがないなー!! お前がそこまで言うんだったら、聞いてやらんこともないぞ!! さあ、何でも言ってみろ!!」
すっかりデレデレになっているステラにエディは依頼内容を伝えた。
ガチャンと受話器を置き、エディはぽつりと呟く。
「アイツ、やっぱ、ちょろいなー」
「女の敵ですねー」
極悪ホストのような悪い笑みを浮かべるエディを、エインはジト目で睨む。
が、エディは気にすることなく、ぱんと両手を合わせて、高揚した声を発する。
「役者は揃えた。舞台の準備にとりかかろう!!」
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