第14話 知らない神様 その1

למה אתה מכוון?

זהו קרב נגד האויב המושבע אנגרה מיינו, שאומרים שהוא מקור הרוע, הכאב, המחלות והמוות.


 「なんだい?この文字は」

 「ヘブライ語っすね……。“教授”なら翻訳出来るんじゃ?」

 「無理言うんじゃないよ。英語やスペイン語なら兎も角、ヘブライ語となると。というか“探偵”君は何故これをヘブライ語だと理解したんだい?」

 「魔術師について学ぶ座学があったじゃないですか。其処で視たような気がしただけです。内容は何が何だか」

 水銀が廊下を這う。

 貸ビルの一室。

 正にその水銀が壁に文字を描いていた。

 意味は解らない。

 解るはずもない。

 「機関に所属するメンバーで語学に長けているのは“サムライ”と“委員長”だが、あの二人はあの二人でコンタクトが出来ない。此処に呼ぶにも二人とも田舎住まいだ。到着まで四時間は必要になる」

 「確かにあの二人なら魔術師連中も素手で倒せそうな気もしますけど。“委員長”の姐さんはお子さんがまだ小さいですし普通に主婦やってます。堅気の世界を楽しんでるのに呼ぶのはちょっと……。」

 最強の女傑である。

 ただ、今は新婚だし新米ママだし。

 現場復帰は先だろう。

 ならば__。


 「じゃあ“サムライ”君なら暇な筈だ。というか彼が忙しい姿を想像出来ない。畑いじりと犬と遊んで一日が終わっているだろ。元は世界的な英雄なのに」

 「“サムライ”の兄さんは別の物語の主人公してます。『居酒屋探偵』、とか始めて所轄の警察と悪巧みをしているとか聴きましたが」


 元・国連平和維持軍医療部隊の隊長だ。 

 ちなみに居酒屋探偵サムライは。

 彼が主役である。

 どうでもいい話だったな。

 普通に宣伝です。


 __閑話休題。


 「重要な証拠になるかもしれない。一応、撮影して保存をしておこうか」

 「というか、魔術師は何処に?これだけ死体があるなら移動速度は遅いでしょう?」

 追えど追えど。

 また最初の地点に戻るを繰り返す。

 

למה אתה מכוון?

זהו קרב נגד האויב המושבע אנגרה מיינו, שאומרים שהוא מקור הרוע, הכאב, המחלות והמוות.


 この文章を観るのも四度目だ。

 ヘブライ語は母音さえ解ればなんとかなる類の言語じゃない。ドイツ語が解ればルーマニア語も解ると“サムライ”の兄さんは話していたが、解るわけねーだろとボクはツッコミたい。

 参ったな。

 完全にロストした。

 ロストした?

 貸ビル全体が巨大な密室みてえもんなのにか?

  

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