第9話 魔術師殺し その2

 まず大前提として、水銀を使役している場合に起こる事象と現象は『術者から離れた遠隔操作は予めプログラミングされた動きしか出来ない』である事を忘れてはならない。それは逆説的に『術者から離れていなくともプログラミングされた動きは可能だ』との論拠にもならないだろうか、と。

 ボクは考えた。

 マニュアル操作をしている時であっても、空でオートパイロットを使わないパイロットは存在しない。面倒な部分だけを電子制御させるのは旅客機だけじゃなく、身近なスポーツカーにも採用されているのだから、魔術師が採用している可能性は高い。

 それが、魔術師を見つける手段。

 手段というには乱暴だし粗暴だったがね。


 「ん?どういう意味だい?水銀を使役しつつ面倒な部分だけをオートパイロットにするって?」

 「つまり防御を自動で行うようプログラミングされてる可能性は頗る高いと考えました。なにか驚異に対して自動迎撃なり障壁展開なりを行えるならば、理論上はスナイパーから暗殺される事はなくなるわけです」


 向こうの世界の魔術師殺しは狩猟用ハンドガンで特殊な弾丸を使っていたが、コッチの魔術師殺しは武装が認められていない。使える武器は『イメージの具現化』と『遊び粉を持った大人の悪戯』だけである。

 しかも殺人の痕跡を残しちゃダメと来たもんだ。

 「そうか。大衆に紛れ込んだ魔術師であっても、大衆を巻き込むようなデカい危険を与えれば自動で水銀は術者を護ろうと反応する。水銀が護ろうとした者が標的、というわけだ。しかし大衆を巻き込むような作戦立案となれば、“探偵”のコードネームが泣くよ?」

 「こうしたやり方は“少佐”から学びましたからね。今回も“少佐”がいればボクの出番は無かったと思います。機関でも珍しい完全戦闘タイプのプレイヤーですし」

 「だが、“少佐”は日本に居るのが稀有だ。既に入っている国内の魔術師ではなく、これから入ろうとしている魔術師を狩っているのだったかな?」

 「だから代わりに“殺人鬼”か“殺し屋”を呼ぼうかなとも考えたんですが、両名とも連絡が取れないっつーかなんつーか。魔術師を殺し過ぎて狙われてるのも呼び難いっつーか」

 「皮肉な話だ。狩る側が追われるとはね。なら、非戦闘員である私が頑張らなくちゃならないわけだ。けど、どうすんだい?我々は武器を使えない。魔術師を炙り出すにもだ。クレイモア地雷もC4爆薬も無しなんだよ?」

 「ですから、其処はボクが。“質量のあるイメージで三秒ぐらいで消えるもんを喚ぶ”程度の力でも、使い方次第ですね。まずはこのビルに入るテナントや事務所が日常生活に溶け込むまで待たなくてはなりません。無論、退職者や休職者の有無にも注視です」

 

 「……民間人への被害は出来るだけ少なく、だからね?」

 「努力はしますけど」

 

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