第2話

政府の人間達から逃げてきた俺らは、安堵のため息をついていた。

「ここまで来ればもう大丈夫だろ…はぁ~疲れた~!」

獅子國は大きく伸びをしながらそう言う。

上半身を伸ばしたことによって大きな胸が強調されている…目のやり場に困るなぁ!?

そんな時だった―

「ビーッビーッビーッビーッ」

町中にあるサイレンがけたたましく鳴り出す。

「緊急警報発令、ステージ4の怪異を美宇市内に発見、怪異出現地帯近辺のアルマーは至急怪異を迎え撃つように」

この町ではよくあることだ。

怪異というのは、元は獣人だったものが何らかの原因で化物と化し、人間を補食する狂暴なやつらのことを言う。

怪異が街中で発見されるとこのようにサイレンが鳴るのだが…にしてもステージ4か。

怪異の大きさ、強さによってステージが決まる仕組みがあり、ステージは最小で1、最大で10だ。

ステージ4は決して大きい数字ではないが、怪異としては侮ってはいけない。

もっとも、最近は怪異の出現は少なく、町の住人も平和ボケしていたことだろうから、今頃都市部では大パニックになっていることだろう…

「…ボーッとしてる場合じゃねぇ!美宇市ってここじゃねぇか!!早く逃げ―」

獅子國を連れて逃げようと振り返った時、俺は息を飲んだ。

凶悪な眼、鋭い爪と牙、やたらと大きく屈強そうな体格、

怪異だ―

俺が唖然としている中、獅子國は既に応戦をしていた。

俺も助けにっ!…いや、今怪異を目の前にして膝が震えている俺に何が出来るのだろう。

俺には結局、ただ眺めて臆病に武者震いすることしか出来ないんだ…

自分の無力さに情けなくなる。

それにしても、獅子國は戦いが得意なようで、自分の体格の倍はある怪異の猛激をいとも容易く受流している。

それになんだ獅子國のあの手は?妙に赤い光を放つオーラを纏っている…なんだあれカッケェ!

考えている内に獅子國はとどめを刺そうとしていた。

その時―攻撃に夢中になっている獅子國は怪異の後ろからの攻撃に気づいていない。

おいおいマジかよっ、あんなデケェやつの攻撃なんて食らったら一溜りもねぇぞ!!

「避けろっっ!!」そう言ったつもりが、恐怖で声が出ない。何してんだよ俺、何突っ立ってんだよ、動けよ!動けって!!

獅子國の背後に迫り来る怪異の手。

グジャッ――

血飛沫が飛び散り、獅子國の悲鳴が聞こえる。

貫かれたのは、俺だった。

「あ、れ…なんで俺…」

知らぬ間に体が勝手に動き、獅子國を庇ったらしい。

状況が理解出来ない俺を強烈な痛みが襲う。

「優人!優人ぉっ!!」

怪異を倒した獅子國が走ってこちらに寄ってくる。

「優人!お前何でこんなっ…馬鹿野郎!見ず知らずの俺をっ…なんでそこまでしてっ…ひぐっ…」

震える声で俺に訴え掛けてくる。

あぁ…獅子國はこんな表情もするんだな…ははっ、よく見たら、結構、可愛いじゃねぇか…

遠のく意識の中で、呼び掛ける獅子國の声がこだまする。

こんな可愛いやつに看取られるのなら俺 は…

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