第2話 切り札
『1時間後に、長跳躍ワームホール帯に突入する。各員、ワープ準備』
ワームホール帯を使って光速を超える恒星間航行を可能にするワープ航法が実用化されて360年。気づけば人類は1万4千光年もの広範囲な領域に進出し、1000を超える人類生存惑星を見つけるに至った。
が、その一方で、それら1000の星々は2つの勢力に別れて、人類同士がこの広い宇宙で慢性的な戦闘状態を継続し続けている。
どうして、こうなってしまったのか?その原因の大部分は、我々、
「……おい! カズキ!」
と、僕を呼ぶ声がする。
「なんだ、レティシア」
「なんだじゃねえぞ。何ボーッとしてるんだよ?」
「別に、今はまだ気を張ってなきゃならない時じゃないからな」
「だがいいのかよ。そろそろ艦橋に行かなきゃいけねえんじゃねえのか?」
こいつ、軍属にはなりたくないと散々ごねて民間人にとどまったくせに、なぜか僕の任務の心配をしてくる。
「大丈夫だ。問題ない。まだ1時間はある」
そう言いながら僕は、まだベッドの上にいる彼女に背後から抱きつこうと、両手を広げて襲いかかる。
が、レティシアの右手が僕の左腕に触れる。と、同時に、彼女の持つ力が発揮される。
僕の身体が、フワッと宙に浮く。勢いよく浮いた身体は、まるで無重力状態に放り出されたように制御を失う。天井に足が届いたので、僕は「着地」して彼女の方を見る。
「……おい、いきなり襲うこたぁねえだろう」
「何言ってるんだ。これが楽しくて、一緒にいるようなものだ」
「はぁ!? 何を言ってやがる!」
出会った時は、どちらかといえば僕とレティシアはぶつかり合う仲だった。新鋭艦のテストに立ち会うことになった民間業者の従業員の一人だった彼女は、その頃はどちらかといえば「嫌な奴」ぐらいにしか思っていなかった。
それが、たった数ヶ月でここまでの関係になるのだから、人生とは面白いものだ。
「さてと、そろそろ行くか」
僕は天井に足をついたまま、左手で襟を整える。そして、僕の右手に触れている人物に向かって言う。
「ということでレティシア、そろそろ下ろしてくれないか?」
「……で、下ろした途端、また襲いかかるつもりじゃねえだろうな?」
「まさか。今まで僕が、そんな下劣なことをしたことがあるかい?」
「両手の指じゃ数え切れないほど、やられた覚えはあるぜ」
と言いつつも、僕をゆっくりと下すレティシア。ようやく僕は天井ではなく、床に足をつく。
で、下りた途端に、やはりレティシアが愛おしくなって、背中に抱きついてしまった。おそらく通路にまで響くほどのレティシアの叫び声が、部屋中をこだまする。
2、3発、張り手を食らって赤くなった頬をかかえながら、僕は部屋を出て艦橋へと向かう。エレベーターに乗り込むと、中には1人の女性士官が乗っている。
「はぁ……閣下、またやらかしたんですか?」
彼女は主計科所属の士官で、グエン・ティ・リエンという。階級は准尉。この艦内では数少ない女性士官の1人であり、レティシアの1番の話し相手である。
「ああ、グエン准尉。これはだな……」
「下手な言い訳は、私には通じませんよ。まったく、これが軍大学を首席で卒業し、20代で将官にまで上りつめた軍人のすることですか……」
「いやあ、普段は男勝りなレティシアが、バックハグした時に見せるあの恥じらいの顔がたまらなくて……相手の意表を突き、その隙を誘うは、用兵家としての本能みたいなものだ。」
「用兵と夫婦生活をごっちゃにしないで下さい! まったくもう、レティシアちゃんがいつも食堂で愚痴ってますよ。おかげでこの艦内で、閣下の悪行を知らぬ者はいないくらいですから」
主計科のいち士官から散々な言われようだ。もっとも、僕も女性に対していつもこういう態度を取ってるわけではない。レティシアだけは、何故か僕はいつもああなってしまう。もしかすると、あれも「魔女」としての彼女の力なのではあるまいか?
艦橋に入ると、すでにワープ目前だった。艦長席の横に設けられた司令官席に向かう。艦長のオオシマ大佐が、僕の赤い頬を見て一瞬、顔を曇らせるも、起立、敬礼して僕を迎える。僕は艦長に返礼し、そのまま席に座る。
「ワープアウト先付近にいる哨戒艦からの報告は、どうなってます?」
「はっ、哨戒艦からは特に何も。ただ、近くを航行する第1艦隊が敵艦隊を捕捉したものの、見逃したとのことです」
「……数は?」
「およそ1000隻。現在、全力で捜索中とのことです」
僕の倍ほどの年齢のこの艦長からの報告を受けて、いきなり嫌な予感に襲われる。連盟艦隊が向かうとすれば、どう考えても
幸先がよくないなぁ……そもそもこの旗艦がポンコツな艦の艦隊だ。1000隻の敵艦隊と遭遇などしようものなら、勝ち目はあるのだろうか?
我が新鋭艦隊300隻は、すべて同じではない。
実は、旗艦である駆逐艦0001号艦だけは、ほかの299隻とは異なる作りをしている。
機関は同じ3倍の出力を持ち、すべての艦は全長450メートルという、駆逐艦としての規格ぎりぎりのサイズを持つ。その長い船体である理由は、大型の冷却装置を載せるためだ。
従来型の艦と同じサイズの重力子エンジンを持ちながら、従来以上の出力を出す機関だけに、熱問題は避けられない。そこでこの新鋭艦には従来より大型の冷却機が取り付けられ、熱問題を解決した。
ただ一隻、旗艦を除けば、だが。
この0001号艦だけは、従来型機関用の小型の冷却機しか取り付けられていない。このため、この艦だけはあの魔女の力を借りなければ冷却もままならないという事情がある。
機関の冷却と言っても、ただ水をかければ良いというわけではない。機関室を水浸しにすれば、電装類のトラブルが避けられない。繊細かつ大胆な水冷却をするには、手元に大きな水玉を作って加熱部だけ局部的に水を押し当てることができる、あの魔女の力に頼る他ない。
これが、この旗艦にだけあの魔女が乗り込んでいる理由だ。
で、その冷却機能を犠牲にする代わりに、この艦だけにはあるものが載せられている。それは、まさに我が新鋭艦隊の「攻め」の切り札というべきもので……
「まもなく、ワームホール帯に突入します! 突入まで、あと1分!」
「全艦、砲撃準備! ワープ直後の遭遇に備え!」
まもなくワープというところで、この艦橋内もにわかに騒がしくなってきた。ワープ直後というのは、実は最も危険な瞬間でもある。もしワープ先で敵艦隊が構えていた場合、超空間から通常空間に戻ったばかりの艦隊はいとも簡単に狙い撃ちされてしまう。実際、過去にはそういう戦闘が起きたことがあった。だから、ワープ航法というのは油断できない。
ましてや、1000隻との遭遇が予想される宙域へのワープだ。警戒しないわけにはいかない。僕は軍帽をかぶり直し、艦長ともども、想定される遭遇戦に備える。
もっとも、ワープ直後に戦闘が始まるなどとは、めったにないことではあるが……
「ワームホール帯に到達、超空間ドライブ作動! ワープ空間に突入します!」
オペレーターの掛け声とともに、周りの星々は消えて、真っ暗な空間に突入する。この先は、7000光年も先にある白色矮星域だ。
我々が勢力を広げているのは、銀河系の端にある1万4千光年の円形の領域だ。その半分に相当する距離を、一気に
その最重要な航路を潜り抜け、通常空間に出る。
直後、緊迫した報告がもたらされる。
「レーダーに感! 距離32万キロ、艦影多数! 数、およそ1000!」
「光学観測、赤褐色! 連盟艦隊です!」
正面モニターには、レーダー画面が映される。モニターいっぱいに表示された無数の光点に、僕も艦長も一瞬、言葉を失う。こんな出来過ぎたピンチは、想定外だ。従来型駆逐艦の射程ギリギリ近くに、いきなり3倍もの敵が現れた。しかもよりによって、我が艦隊のワープアウト直後に、だ。
「全艦、戦闘配置! 砲撃戦、用意!」
静寂を破るように、僕はすかさず号令をかける。艦橋内は、一気に騒がしさを取り戻す。
「全艦に伝達! 砲撃戦、用意!」
「敵艦隊、我が艦隊に向け回頭! 横陣形をとりつつあり!」
「こちらも横陣形に転換する。全艦に下令、直ちに横陣形に転換!」
「了解!」
通信士が、300隻の艦艇に向けて僕の命令を伝える。モニター上の光点が、慌ただしく動いている。敵も味方も、横一線に広がり始めていた。と、ふと僕は傍にいる幕僚のジラティワット大尉に尋ねる。
「ジラティワット大尉、第1艦隊の位置は把握しているか?」
「はっ、先ほど第1艦隊よりこちらに、暗号通信がありました。現在、我が艦隊より距離320万キロの位置。こちらに向けて、急行中とのことです」
「そうか。接触予定時刻は?」
「およそ、1時間かと」
つまり、1時間は我々だけでこの3倍の敵に対処しなければならない。この幕僚の言は、僕にそう告げている。
逆にいえば、1時間持ち堪えれば、一個艦隊、1万隻の援軍が駆けつける。正面にいる敵艦隊の10倍、形勢は一気に覆る。
しかも、よりによって敵も運が悪い。我々は
「全艦に下令! 砲撃開始!」
「砲撃開始! 撃ちーかた始め!」
まだ31万キロの距離にいる敵艦隊に向けて、我々の攻撃が始まる。通常の駆逐艦の主砲は、射程が30万キロ。だが
この射程距離の差が、3倍以上の戦力差を補う。
キィーンというエネルギー充填音が、この艦橋内に響く。と、数秒間の充填ののちに、我が艦の主砲が火を噴く。雷音のようなガガーンという音が、この艦橋まで到達する。
敵はおそらく、こちらの砲撃に驚いていることだろう。まだあちらは射程外だ。にも関わらず、こちらの砲撃が始まる。
「初弾の命中確認! 3隻撃沈!」
「そうか。全艦、そのまま砲撃を続行せよ、と」
「はっ!」
アウトレンジからの不意打ちで、たったの3隻か……こちらの練度がどうこうではなく、彼方は最初から、アウトレンジ砲撃があるとかかっていたな。
考えてみれば、この宙域には、
敵艦隊はその後、急速に接近し、ついに砲撃を開始する。青白いビーム光が、我が艦の横を通過する。
こうなると、数の少ない我が艦隊が不利だ。尋常ではないくらいのビーム束が、我々を襲う。
「後退し、距離を取る。全艦、後退せよ」
「はっ! 全艦、後退!」
一旦、敵の射程外に出て、アウトレンジ攻撃できる位置に艦隊を動かす。通信士が僕のこの命令を打電している間に、僕は意を決して、艦長に告げる。
「艦長、特殊戦、用意!」
「閣下、まさかここで、あれを使うのですか!?」
「実戦テストの機会でもある。盾役の0002から0005号艦にも伝達、特殊戦用意!」
「はっ! 艦橋より砲撃管制室、特殊戦、用意!」
『砲撃管制より艦橋! 特殊戦、用意に入ります!』
これ以上後退すれば、敵にあの長跳躍ワームホール帯に飛び込まれてしまう。そうなれば、
「総員、特殊戦に備え!」
艦長が艦内放送で乗員に呼びかける。艦橋内でも、各乗員が大急ぎでシートベルトを着用するのが見える。僕も、司令官席にある腰ベルトをつける。
と、その直後、ガコンという衝撃音が響く。と同時に、身体がフワッと浮き上がる。慣性制御が切られた。機関室からの報告が、艦橋内に響く。
『機関室より艦橋! 左右機関へ特殊砲撃用伝達回路接続! 特殊戦用意、完了!』
『砲撃管制より艦橋! エネルギー充填、開始します!』
訓練通り、特殊戦用意の号令から30秒以内で充填開始まで漕ぎつけた。が、ここから魔の時間が始まる。
この「特殊戦」には、3分間ものエネルギー充填時間を必要とする。その間、この0001号艦は、生命維持用を除くほぼ全ての動力をその充填作業に回す。ゆえにその間、我が艦は慣性制御すらも失う。
キィーンという充填音だけが艦橋内に響く。僕はちらっとモニターを見る。画面右端には、残りの充填時間画表示される。
……まだ2分以上あるのか。長いな。カップ麺が出来上がるまでの短い時間だというのに、命がかかるとなると異常に長く感じられる。
その間も敵は接近する。一旦は敵射程から5000キロほど離れたものの、その距離はみるみる縮む。そこに0002号艦から0005号艦が、我が艦の前で密集隊形を取る。
この3分間は、我が艦はバリアすら張れない。ゆえにこの4隻には「盾」になってもらう。やがて敵の砲撃が再開し、ビーム束が再び我々のそばを過ぎる。
時折、前方の4隻に敵ビームが着弾し、眩い光で照らされる。だが、モニター右端の時計はいやらしいほどに遅い。まだ1分もある。この時計、壊れてるんじゃないのか?そんな疑問が頭を過り、自分の腕時計でも確認する。いや、すこぶる正確だ。
3倍もの敵を相手にするため、敢えて特殊戦を選んだ。
だが、もしかして僕は、判断を誤ったのか?
そんな不安が脳内に浮かぶ頃、ようやく充填時間が終わりを告げる。
『充填完了!』
砲撃管制室からの報告で、僕は下令する。
「前方の4隻に連絡! 軸線上より退避! 回避運動しつつ発砲用意! 目標、敵艦隊中央!」
僕の号令と同時に、化学スラスターが噴射され、艦が動き始める。
まだ、バリアが使えない。前方の4隻が軸線上から離れるまでの、最も危険な瞬間を迎える。
傍に敵ビームが通り過ぎる。頼りない化学スラスターで、この重い船体を動かしつつ狙いを定める。
『照準よし!』
「総員、衝撃に備え! 特殊砲撃開始、撃てーっ!」
艦長の号令とともに、ついに我が艦の砲身からビームが放たれる。通常の砲撃音以上の衝撃音に加え、慣性制御が効かないため、その衝動がダイレクトに伝わってくる。
激しく揺れるシートにしがみついたまま、その砲撃に行方をモニター越しに見守る。
特殊戦砲撃。この攻撃は、早い話が通常の砲撃の3倍の威力のビームを、10秒間持続的に放つというものだ。その威力は驚異的である。
一度放たれたビームは、軸線上の敵を粉砕する。バリアシステムなど効かない。バリアもろとも、敵艦を跡形もなく吹き飛ばす。
化学スラスターで艦首を振って、ビームを敵艦隊の陣形に沿ってなぞると、ビームの軸線上にいる敵の艦を次々と消滅していく。これが10秒の間、続く。
この特殊砲撃のための装備、これを載せるために、この艦は冷却装置を犠牲にしている。この絶大な攻撃力と引き換えに。
ただしこの攻撃は、敵だけでなく味方にもその影響は大きい。
まずは、自艦内だ。この攻撃中は、慣性制御が効かない。このため、砲撃により発生した衝撃を緩和することができない。
テスト時にも、食堂の椅子やテーブルがひっくり返ったり、身体をしっかり固定していなかった乗員の中から怪我人が出ることもあった。
僚艦にも負担が及ぶ。敵の射程内でこれを使う時は「盾」役を必要とする。バリアシステムが使えないから、その間、代わりに敵ビームを弾き返してくれる盾がないとやられてしまう。そして砲撃中は逆に、その盾役を我が艦の前方から即座に退避させなくてはならない。さもなくば、この砲撃の巻き添えに遭う。
そんな苦労をしてまで放ったこの大出力攻撃は、我々にその見返り以上の戦果をもたらす。砲撃による
「敵艦隊中央、多数の撃沈を確認! 数、およそ150!」
たった一撃で、多大な戦果が得られ、艦橋内から一瞬、歓声が沸き起こる。だが艦長がそれを諌める。
「まだ戦闘中だ! 特殊戦より通常戦に移行! 慣性制御および各システム、戻せ!」
「了解、通常戦に移行! 各システム、もどーせー!」
艦長が通常戦への移行を指示すると、無重力だった艦内に重力が戻る。浮かんでいた一部の書類やコップなどがバタバタと床に落ちる。
と、同時に、再び砲撃が始まる。いつもの充填音が響き、数秒後にはビーム光が艦橋内を照らす。
こちらは通常に戻ったが、敵はむしろ混乱状態だ。いきなり100隻以上が撃沈されたことが相当ショックだったのだろう。陣形が乱れ、一部の艦艇が後退を始める。
考えてみれば、たった一発で1割以上の艦艇が消滅した。動揺するのが当然だ。我々のこの攻撃の狙いも、そこにある。
「敵艦隊、さらに後退!」
「追撃戦へ移行! 全艦、前進!」
機関音が高鳴る。我が艦隊は横一線の横陣形のまま、敵の艦隊を追い込む。
まだ数の上では2倍以上いる敵艦隊が、300隻の艦隊に追われて後退を始める。しかもその後方には、友軍である
このまま我々を突破して長跳躍ワームホール帯を抜けて、
というわけで、少数が多数を追いかけるという、変な追撃始まる。しかし先ほど、派手な砲撃を行ったばかり、機関の負担が大きい。またあれが、起こらなきゃいいが。
と、僕のこれはもしかしてまた「フラグ」を立ててしまったのだろうか?いつもの事態が、発生する。
ガタンと、船体が揺れるのを感じる。一瞬、慣性制御が切れる。すぐに復帰するが、フォーンという明らかにおかしな唸り音が艦橋内に響き渡る。
ああ、なんてことだ……せっかく我が艦隊の初陣での武勲をさらに広げるチャンスだっていうのに、なんでこういう時にトラブルが起きるかなぁ。
『おい! 右機関室だ! 今から冷却を開始する!』
だが、それをすでに想定していたレティシアの声が艦内放送を伝って響き渡る。モニターを見ると、すでに大きな水の玉を作り始めていた。
そしてそれを、重力子エンジンの上部のあたりに押し当てる。ジュワーッと音を立てて、蒸気が機関室内を覆う。
特殊戦砲撃の後に行った全開運転で、また機関がオーバーヒートしてしまった。これはテスト時でも起きていたことだから、想定内の事態ではある。
しかしだ、150隻もの敵艦を消滅したこの艦が、機関の冷却不調で魔女に頼るというのもおかしな話だ。だがこの艦は事実、ポンコツだ、仕方がない。そしてそれはある意味、僕のせいでもあるのだが。
やはりこの船にはいろいろと、押し込み過ぎた。
そんな旗艦を置き去りにして、より戦果を広げようと息巻く他の299隻は、そのまま前進を続けて敵艦隊を追う。こちらも機関を再起動し追いかけるが、敵はすぐに反転し、離れていってしまった。
やや不満の残る戦闘だったが、ともかく今度の戦いで、実戦でも「特殊砲撃」が有効であることが証明された。それだけでも、この戦闘には意味がある。もちろん、いくつかの課題は残されたままだが、彼女がいる限り、何とかなるだろう。
「全艦、後退! 陣形を再編し、このまま第1艦隊との合流を果たす!」
僕は300隻の艦艇に後退を命ずる。遭遇戦という形で始まった我が艦隊の初陣は、僅か20分の戦闘で、3倍もの敵艦隊を相手に155隻を撃沈、一方で味方の損害はゼロ。実に華々しい戦果だ。
やはり僕の唱えていた「決戦兵器理論」は、間違ってはいなかった。この数字の意味するところは、そういうことだ。
「第1艦隊より入電! 敵艦隊と接敵、交戦中!」
我々の足止めで、ようやく敵に追いついてきた第1艦隊が、先ほどの敵艦隊を捉えたようだ。だが、敵は攻撃を受けながらも撤退を継続し、多数の損害を出しつつも辛くも我々の追撃を逃れ、去った。
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