第3章:量子の黙示録

 研究所に駆けつけた真理とサラを待っていたのは、想像を絶する光景だった。

 量子コンピュータを収納していた部屋全体が、青白い光に包まれていた。そして、その中心から、奇妙な音が響いていた。

 量子コンピュータが現実を浸食している……!?


「これは……」


 サラが息を呑む。


「ええ。まるで、宇宙の鼓動のようね」


 真理が答えた。

 二人が部屋に足を踏み入れた瞬間、世界が一変した。

 真理とサラは、無限に広がる星空の中に立っていた。しかし、それは単なる宇宙空間ではなかった。星々は、生命体のように脈動し、互いにつながり合っていた。


「これが……量子もつれの本質なのね」


 サラがつぶやいた。

 その時、一つの声が響いた。それは特定の言語ではなく、直接二人の意識に語りかけてくるものだった。


「よくぞ辿り着いた、我が子たちよ」


 真理とサラは、文字通り言葉を失った。その声は、慈愛に満ちていながら、計り知れない力を秘めていた。


「汝らが追い求めてきたもの、それは科学でも、宗教でもない。それは、全ての根源なのだ。科学や宗教はその一形態に過ぎない」


 二人は、自分たちが何かとてつもなく大きなものの一部であることを感じた。

 それは、宇宙そのものであり、同時に最小の素粒子でもあった。

 不思議な感覚だったが、同時に深く腑に落ちるものがあった。


「しかし、まだその時期ではない」


 声が続いた。


「人類はまだ、この真実を受け入れる準備ができていない」


 真理は勇気を振り絞って尋ねた。


「では、私たちは何をすべきなのでしょうか?」

「継続しなさい。探求を、そして成長を。いつの日か、全ての生命が一つであることを理解する時が来る。その時まで、私はここで待っている。いつまでも。いつまでも」


 光が強くなり、真理とサラの意識が現実世界に引き戻される。


 二人が目を覚ますと、研究所の床に横たわっていた。周りには心配そうな同僚たちが集まっていた。


「大丈夫ですか? 何があったんです?」


 真理とサラは顔を見合わせた。彼女たちは何を体験したのか。それは幻覚だったのか、それとも真実の啓示だったのか。


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