第4章:信じることの重み
その後の数ヶ月間、真理とサラは自分たちの体験をどう扱うべきか悩み続けた。公表すれば、狂人扱いされるか、新たな宗教の開祖として祭り上げられるかもしれない。しかし、隠し通すことは科学者としての良心が許さなかった。
「私たちには責任があるわ」
ある日、真理が決意を込めて言った。
「この体験を、科学的に検証可能な形で世に問うべきよ」
サラは不安そうな表情を浮かべたが、同意した。
「あなたの言う通りね。でも、どうやって?」
二人は、量子コンピュータの異常な挙動を再現することから始めた。何度も失敗を重ねながら、少しずつデータを集めていった。
そして、ついに論文を発表する日が来た。
「量子意識仮説:宇宙の根源的意識と人間の精神活動の相関性」
論文は学界に衝撃を与えた。賛否両論の嵐が巻き起こり、真理とサラは世界中から招待講演を依頼された。
ある講演会の後、一人の若い女性が二人に近づいてきた。
「私……信じます。あなたたちの言っていることを」
その言葉に、真理とサラは複雑な感情を覚えた。彼女たちが目指していたのは、盲目的な信仰ではなく、科学的真実だった。しかし同時に、この若い女性の目に宿る希望の光を消し去ることもできなかった。
「信じることは大切です」
真理は慎重に言葉を選んだ。
「でも、それ以上に大切なのは、問い続けること。探求し続けることです」
サラが付け加えた。
「私たちの研究は、まだ始まったばかり。これからも多くの謎が待っているでしょう」
若い女性は頷き、感謝の言葉を述べて去っていった。
その夜、ホテルの一室で、真理とサラは互いの腕の中で安らぎを感じていた。
「私たちは正しいことをしているのかしら」
サラが不安そうに呟いた。
真理は優しくサラの髪を撫でながら答えた。
「正しいかどうかは分からないわ。でも、真実を追求することは決して間違いじゃない。それに……」
真理は言葉を切り、サラの目を見つめた。
「あなたと一緒なら、どんな困難も乗り越えられる気がするの」
二人は優しくキスを交わし、明日への勇気を分かち合った。
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