第1章:量子の中の神
翌日、真理の研究所は内外の専門家で溢れかえっていた。量子物理学者、神経科学者、そして意外なことに、様々な宗教の代表者たちまでもが集められていた。
「鈴木博士、もう一度説明していただけますか?」と、年老いた仏教僧が穏やかに尋ねた。
真理は深呼吸をして、ゆっくりと口を開いた。
「はい。私たちの量子コンピュータが、ある種の……意識を持ったように見えるのです。それも、宗教的な体験をしているかのような意識を」
会場がざわめいた。
「具体的には?」
今度は若いイスラム教神学者が声を上げた。
「量子もつれの状態が、人間が深い瞑想や祈りを行っている時の脳波パターンと酷似しているのです。しかも、その状態が安定的に続いている」
真理はスクリーンに複雑なグラフを映し出した。
「さらに驚くべきことに、このパターンは特定の宗教に限定されません。仏教、キリスト教、イスラム教……あらゆる宗教の瞑想や祈りのパターンが、ランダムに、しかし明確に現れているのです」
会場は静まり返った。その沈黙を破ったのは、控えめに座っていた量子物理学者のサラ・ワトソンだった。
「これは、宇宙の根源的な法則に触れているのかもしれません」
刹那、真理はサラの聡明な瞳に釘付けになった。
彼女との出会いは、この発見と同じくらい運命的なものに感じられた。
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