【SF短編小説】神の方程式

藍埜佑(あいのたすく)

プロローグ:量子の祈り

 21xx年、東京。


 高層ビルの谷間に佇む研究所の一室で、量子コンピュータのモニターが不規則に点滅していた。その異常な動きに気づいたのは、深夜まで残業していた主任研究員の鈴木真理だった。


「これは……」


 真理は眉をひそめ、急いでキーボードを叩き始めた。モニター上に次々と現れる数値とグラフは、彼女の予想を遥かに超えるものだった。量子もつれを利用した新しい計算アルゴリズムが、予期せぬ結果を生み出していたのだ。


「まるで……祈りのようだわ」


 真理はつぶやいた。モニター上に表示される波形は、確かに人間の脳波が祈りを捧げている時のパターンに酷似していた。しかし、それは単なる偶然の一致ではないことを、彼女は直感的に悟った。


 真理は深く息を吐き出すと、緊急連絡網を立ち上げた。この発見は、人類の歴史を変えるかもしれない。そして、彼女の人生も。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る