エレノアからの手紙集② 「シド」

第1話 シドの話? じゃあ、あの時の…

 初弾の着弾確認!

 次、いくよっ!

 アズライールよ、かの者たちに青き矢の雨を注げ!


 ……って、いつもなら、もう山賊程度、あっという間に殲滅しているわけよ? 秒殺よ。


 それがさ、相手が、もう、避ける、避ける。

 腹が立つほど、当たんないのよ。


 なんだ、こいつらって思ったら、なんか急に旗を振ってくるわけよ?


 あら、殊勝ね。白旗あげて、命だけは助けてくれって言うの? そんな人間同士のルール、エルフには関係ないわ。


 旗を目掛けて、アズライールの青の矢を放つか、それともとどめの白の矢を放つか、迷っていたら、ちょっと旗の様子がおかしいことに気付いちゃったの。


 え? なに? 文字? ……が書いてある?


 って、旗に人間の文字で、「エレノア。シドだ。話し合いを」って書いてあるじゃないの!


 あたし、もう、びっくりしちゃってさ。


 ちょ、ちょ、どういうこと? なになに? シドって、シド・スワロウテイル?

 え? なんで、シドがここに?

 てか、アイツ山賊なんかやってんの? ちょっと前まで傭兵やってなかった?

 それとも、ギルドの討伐情報が間違っていたの?


 ……いや……これってホントにシドなの? えー。私、矢を撃っちゃったよ?


 って疑問符だらけよ。

 ふふ、思い出しても笑っちゃうわ。

 それがホントにあの「弓下手のシド」だったのよ。


 あいつのことを知りたいのなら、山小屋で住んでいた時のことのほうが、いいわよね? 

 それとも銀嶺山荘事件? でも、そっちは詳しくないのよね。

 それより、あいつが作った、変わったモノのこと、知りたくない?

 なんだっけ? 異世界の遺物って奴? 変なの作ってたわよ。


 もちろん、私も使わせてもらったわ。

 なんか、あんまり、面白くはなかったけどね。でも、多分、この世界で最初に、アレを使ったエルフよ?


 聞きたい?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る