死人のいない町

「この世には、科学をもってしても今だ理解不能な存在がある。」


 ある家に着くなり、お姉さんはライとロウの二人に向けてそんな説明から始めた。


「なぜ世界は存在しているのか、物理法則とは何なのか。二人は何だと思う?」


 お姉さんからの、子供二人へ聞くことでは無い気がする問いに二人は首をかしげる。


「・・・わからないです。」


 問いが投げられてから5秒ほどの沈黙ののち、お姉さんにロウが白旗をあげた。


「正解! そう。わからないんだ。故に私たちが得た結論は、"この世界が存在していることは異常である"ということだけ。」


 ロウは予想外の正解に目を見開き、ライは言っていることがわからずに更に首をかしげる。


「この世界が異常・・・なんというか、しっくりきますね。」


「でっしょ!? ロウ君よく分かってるじゃん!」


「俺はよくわかんない!」


 納得しあうロウとお姉さん、まったく分からないライ。


「学校の七不思議。口裂け女。トイレの花子さん。世界の存在という"異常"よりも規模は小さくともこれも同類の物だよ。そんな理を外れた物を私たちは"異変"と呼んでるの。」


「そんなものが存在するんですか?」


 お姉さんの飛びぬけた言葉にロウが疑問を投げかける。

 お姉さんの言い方はまるで―――学校の七不思議や口裂け女が本当に実在するようだったからだ。


「存在するよ。誇張した嘘なんかじゃない。口裂け女なんかは本当に何人もの犠牲者が出たんだからね。」


「「――!」」


 犠牲者という現実味を帯びた言葉に二人は少し怖がる。


「怖がらないで。その犠牲者を少なくするのが私たちの仕事なの。ぶっ飛ばしてやる! くらいの心行きでいないと。」




 ライとロウの二人は、そうやってお姉さんの教えてくれたことを思い出す。


「死体は回収できなかったらしい。仕事の都合上しかたないことだ。」


「分かってる。7年も面倒を見てもらったんだ。お姉さんには本当に感謝してるよ。」


「ああ。」


 二人はそうやって笑う。

 あっけなくいなくなってしまったお姉さん。二人は直接お礼が言えなかったことを悔やんだ。


  ▽▲▽▲▽▲


 異変観測。それがロウとライ、2人の仕事である。

 これは世界各地で報告された異変だと思われる事象を観測し、調査するという仕事だ。

 ちょっと面倒なだけの異変から、時には命を脅かすような異変まで調査しなければならない。

 命の保険や給料どころか、人権もほとんどない仕事。

 だが、ライは人のためになるならと頑張っている。


 今回の仕事は"死人のいない町"の調査だった。

 死人がいないなんてことは、そこに人がいる以上あり得ない。故に、この"死人がいない町"では世界の法則を逸脱した"異変"が在ると判断されたのだ。



「ここが"死人のいない町"か。」


 ライが言いながら珍しいものを見るように周りを見渡す。

 外景は、特におかしなところのない普通の街だとライは思った。一軒家や、3階だてのマンションあり、そこそこ人口も多いことが伺えた。


「気をつけろ。命を扱う類の異変は危険じゃない方がおかしい。・・・こんな調査を回してきた上層部が恨めしいな。」


 舌打ちをしながら不機嫌そうにロウが言った。

 この仕事には拒否権がないためにどうしようもないのだが、だからこそロウにとって不快なのだ。


 異変観測の仕事には常に死の危険がある。

 特に、今回のような命を扱う異変は死ぬような状況に簡単に陥るのだ。

 だからこそ、2人は気合を入れなおした。


「さっさと調査して帰ろうぜ! 相棒!」


「そうしよう。長居するとリスクも増えるしな。」


 2人はそう会話して、さっそく調査を開始した。



「で、ロウ。何からすればいい?」


「とりあえず歩いて見て回ろう。町の景観や地図だけでも、手掛かりになる。手がかりが無ければ調査もくそもないからな。」


 ロウがそう言って、方針が決まった。


 調査と言っても、当然闇雲に行えばいいわけではない。今回の異変は範囲が広いうえに、内容も"死人がいない"という曖昧なものなので、少しでもおかしなところを見つけるところから始めるのだ。


 ロウの方針にライが頷き、二人は歩き出した。



 15分ほど歩いていると、泣いている子供が一人で道の端に突っ立ってていたのが2人の視線に留まった。

 泣き止む様子はないし、二人にはその異常な様子がただの子供の癇癪などには見えなかった。


「なあロウ、助けに行っていいよな?」


「ライ、あれは任務とは関係なさそうだが?」


 ライの問いに、ロウは目を細めて言った。

 ロウは任務と関係ないことに首を突っ込めば、命を落とすのだと言いたいのだ。


「でも、人と話さないと分からないことがあるだろ? "死人がいない町"ってんだし、住人がメインにおかしいタイプの異変かもしれないぜ?」


「———。ああ分かった。警戒して話しかけるぞ。」


 ロウは一瞬思案して、溜息を吐きつつライの提案を受け入れる。確かに、この街の異変について住民と話して反応を探るのは手っ取り早いとロウも納得したのだ。


 2人はその子供に近づく。ライは子供をあやすために笑顔で近づき、対するロウはポケットの拳銃に手を掛けて警戒した。


「どうしたんだい君、迷子?」


 ライが笑顔を作りながら話しかけた。

 子供はライの顔を一瞬確認したが、すぐに目を逸らして泣き出した。


「違う。迷子じゃない。」


「そうか。じゃあ、お父さんかお母さんはどこにいるんだ?」


 泣いている子供が言った言葉に、ライは当てが外れてもう一度聞く。

 ロウは、迷子じゃないのなら何故こんなところでこんなにも泣いているのだろうと不思議に思った。


「いない。お父さんもお母さんも居たことない。」


 子供から返ってくるまたも予測外の言葉。


「じゃあ、どうして君はここで泣いてるの?」


 少し戸惑いつつ、質問を重ねるライ。

 なにか不気味な気配がして、ロウは拳銃を握る力を強める。理由も分からず泣き続ける子供、何らかの異変かもしれないとロウは思ったのだ。


「ケガして、痛い。動けない」


 子供はそういうと、ひざを2人に向けてきた。

 痛々しい肌が露出する。


「大丈夫!? ちょっと待って、絆創膏を持ってたはず。」


 ライは少し驚きつつも納得し、絆創膏を取り出した。ロウも拳銃を握る手を緩めていた。

 この子はケガをしていたから泣いていたのだと分かれば、少なくとも辻褄は合っていた。


「いや、これは病院へ行こう。この傷、どうしたんだ少年。」


 傷が結構深かったために、気になったロウが聞く。

 少し擦りむいた程度ではつかない傷だったからだ。


「さっき車に乗ってたら事故になっちゃって、ほら。そこに壊れちゃった車があるよ。」


 少年が指さす道路には、確かに大破した車があった。

 2人はじっくりと見て、納得する。


「大変だったね。病院へ行くからつかまって。」


 ライがそう言って子供を背負うと、2人は病院へ行った。

 2人は最低でも今のところ異変がないと判断した。


  ▽▲▽▲▽▲


 2人は道を聞きながらも子供を病院へ送り届けて、そして調査を再開することにした。

 ここまでで病院への道など色々見まわったが、この街は見る限り普通過ぎた。

 行き詰まりだったので、少しついでに病院の中を調査していく事にした。


「病院に死人がいないわけないがない。」


「確かに、何かおかしい箇所が見つかるかもだな。」


 ロウの意見に賛成を言うライ。

 そうして2人は病院の特に重症な人たちが集まる入院する人たちがいる棟へ向かった。


「どうされました?」


「あ、友人のお見舞いに来ました。」


 ロウは受付の人にそう言って入院患者の部屋の方へ進ませてもらう。

 そして適当に目についた入院患者の部屋へ進んだ。ライはロウの手際の良さに目を丸くして「ロウって詐欺師の方が向いてるよな」と小声を漏らした。


 入ると中には4つのベットが並んでいて、そこに一人一人患者が寝ていた。


「すいません。そこのあなた、入院の理由を聞いてもいいですか?」


 ロウは間髪入れずにベットの内の一つの患者に声をかけた。

 言われた患者の人は驚きつつも口を開いた。


「え? ああ、骨折です。」


「隣の方は?」


 患者の人の答えに頷きながら、ロウはさらに別の患者にも質問を繰り返す。


「私は頭をケガしたからですが・・・」


「隣のあなたは?」


「———」


「あれ? 寝てるのか。じゃあ最後のあなたは?」


「あ、はい。ガンです。余命3日らしいです。」


 全員の病名を聞いた後に出てきた、余命三日という言葉にロウが目を光らせる。

 ライも突然降ってわいた手掛かりに意識を向ける。


「ほう? 死ぬのは怖くないんですか?」


 ロウの問いを聞くなり、余命三日と自称した人は笑い出した。


「冗談でしょう。この街では誰も死なないんです。だから余命というのは『科学的には3日』という意味だけで、私はこの街にいれば死にませんよ。」


 ロウとライは回答に絶句する。

 "死人がいない町"というのは町の住人も認めているということに驚きを隠せなかった。


「———。誰も、この街で死んだ人を見たことないんですか?」


 ロウの質問に当たり前のように全員が頷く。ライがそれを見て「まじかよ・・・」とつぶやいた。


「わかりました。失礼しましたね。」


 ロウは混乱しつつも、頭を下げて部屋から出た。

 ライもついて行く。


「まじで誰も死なないのか? 住民が不老不死とか?」


「ここまで来ると・・・そうかもな」


 ロウが首をかしげながらそう言う。

 そして溜息を吐いた。


「こうなったら、あれをやるしかない。」


「あれ? あれってなんだ?」


 ロウの深刻そうな顔に、ライがひょっこりと答える。


「住民を殺して確かめる。」


「———! おい! それはダメだろ!」


 いった瞬間、ライが激高してロウの胸倉をつかむ。

 人情の厚いライだから、当然の反応だった。


「実は今回のミッションでは事前にそうしろと上層部から言われていた。俺だってやりたくなかったが、成果がないんじゃあやるしかない。」


「それでも!」


 ロウの言葉にライが食い下がる。

 そこまで人のいない道路だが、ライの怒鳴り声で少し周りからの視線が刺さった。


「それに、異変であるこの街の中の人は、人として見るのが間違ってる。この街の人は化け物と同じだように見るべきだ。ライ、お前だってわかってるんだろ?」


「俺は―――。なあ、本当にやらなきゃだめなのか・・・? この街が異変だという確実な証拠はあるのか?」


「ああ、ある。」


「嘘だ!」


 ライの執拗な疑問にやれやれとロウがズボンのポケットから、ある物を取り出した。


「これを見ろ、ライ。」


 ロウが差し出したのは"現実濃度測定器"だ。

 "現実濃度"とはどれだけ普通なのか、現実と同じかという事を100~0で示す値だ。0なら現実とは程遠く、100なら完全に現実だ。

 ロウが手に持つ測定器は67という数値を示していた。つまりここは現実ではないということ。

 これはここが異変の中であることを示唆する。つまり、この街は嘘偽りなく現実から外れた"異変"なのだ。


 それを見たライは認めざるを得なかった。

 ライは不機嫌そうに舌打ちをする。


 そして、一発の銃声が響いた。


  ▽▲▽▲▽▲


「結局撃てなかったな。」


「ああ、とりあえず一つ目の異変は拳銃を打てないってことだと分かったな。」


 ほっとした様子のライに、思案気な顔をしたロウが言う。

 ロウは考える。なぜ銃を打てなかったのか。

 ロウは確かにライが銃の引き金を引いたのを見た。

 だが、次の瞬間にはそれがなかったかのようになっていたのだ。


「人の死をトリガーとした現実改変? 人が死ぬと過去が改変されて死んでないことになるとか。」


「はぁ。そうなの?」


 ロウとは対照的に全く考えていないライが全く考えていない返事をする。


「ライ・・・。いつも調査結果を俺が書いてるんだからな? たまには頭を使ってくれ。」


「はいはい。考えますよ。」


 ロウの言葉にライが威勢よく返事をする。

 『あれはきっと何も考えていないな』とロウは判断した。


「やっぱり、まだ捜査が足りないな。」


 ロウが呟く。

 原因というか、本質的な部分が分かっていないのは少々の不安要素なのだ。

 今のところ死にそうな目には合っていないのだし、2人はもう少し調査することにした。


「じゃあ、図書館で文献を漁らないか? それだったらこの街の情報とかもあるだろうし、俺はいいと思ったんだけど。」


「図書館があるか疑問だが、行ってみるか。」


 そうして、2人は図書館へ向かった。



 道歩く人に図書館について2人が尋ねると、どうやら図書館はあるようだった。

 そのまま道も尋ねさせてもらって、2人は図書館にたどり着いた。


「涼しい」


 思ったより歩いて汗を掻いたライが、室内に入った途端に声を漏らす。

 それを見たロウは呆れながら一人で文献を探し始めた。


 本の場所を司書に聞こうと思いロウが歩き出すと、何もないところで転んだ。水音が響く。


「大丈夫かロウ!?」


「あ、ああ。足が突然もつれただけだ。」


 そう言ってロウは立ち上がり司書のほうへ向かう。


「あの、この街についての記録を探しているのですが、どこにありますか?」


「一番奥です。」


 ロウは司書に言われたとおりに、一番奥の棚を探す。

 右から、5つ目に『ピースタウンの歴史』という本を見つけた。

 ピースタウンとはこの街の呼ばれ方であり、正式名称かをロウは知らない。

 ともかくロウの求めるものはまさしく『ピースタウンの歴史』だったので、ロウはそれを手に取った。

 ロウが本を開くと目次がずらっと並んでおり、ロウはそれを頼りに本の熟読を始めた。



 分かったのは、この本が記録している4年前時点ではこの街の人口は約一万人で年間死者数が0人であるということ。細かい事件などは起きているが、死傷者が出たような事件は一つも起きていないこと。

 やはりこの街は明らかにおかしかった。


 そして今ロウは歴史というページを読んでいた。


『そこには音を聞いた人々を惑わす■があった。主は(解読不能)、この地を希望で満たした。この果ての地から苦しみを無くしたのだ。』


 それは歴史のページに書いてある一文だ。

 この文章まで普通の街の発展の様子が書かれているのに、この文は少し毛色が違うためにロウは不気味に思っていた。

 特にロウが疑問を持ったのは『そこには音を聞いた人々を惑わす■があった。』の一文だ。


「惑わす、なんなんだよ。」


 そんな愚痴を言いつつ、注目すべきは"音を聞いた"という動詞だとロウは思う。

 "ある条件下で惑わされる"これは異変の類に違えなかったからだ。


 新しい手掛かりを得たロウは考える。

 音を聞いた人々を惑わすという事は、この街には何か音が流れているという事だろうか。最低でも自分には聞こえない。


 首をかしげながらも、ロウはスマホを手に取ると、録音ボタンを押す。


 すると、確かに5分に一回くらい謎の音が拾われていることが分かった。


「ライ! やっと分かったぞ。」


「お? 分かったのか!?」


 一人で漫画雑誌を漁っていたライにロウが笑顔で言う。


「ああ、だから帰る準備をする。来い。」


「分かった。」


  ▽▲▽▲▽▲


 2人でこの街の境目付近まで来た。


「イヤホンをつけろ。」


 ロウが指示を出し、2人はイヤホンをつける。

 何も起きない。



「なあ、お前間違えたんじゃないか?」


 ライがイヤホンでつないでいる電話を通してロウに言う。


 その時だった。

 ロウは目がなにかシパシパすると思い目をこすると、ライがあり得ない物を見る目で自分を見ていることに気が付いた。

 いや、正しくはライが見ているのはロウではなくロウの後ろだ。


 ロウが振り向き、2人が見たのは無残に死んだ女性の姿だった。

 道路に倒れていて、息をしていない。それどころか、ところどころ抉られたように体が崩れている。


「これが死人のいない町の正体か。」


「どういう・・・ことだよ。」


 納得した様子のロウにライが混乱しながら声を漏らす。

 だが、少し考えるとライも理解せざるを得なかった。


 この街は死人がいないのではなく、死人を認識できないだけなのだ。


 ライが周りを見ると死体は辺りに転がっていた。マンションから自殺した少女、車に引かれ死んだ男の子、倒れたままとっくに死んでるお爺さん。まるで地獄のありさまだった。

 認識できないから死体はそのままその場に放置されているのだ。


「なあ、でもこれはどうやって死んだんだ?」


 ライが言いながら指さしたのは、ところどころ抉られた死体の女性だ。


「こんな死に方普通しないだろ。」


 ライの言葉にロウは納得せざるを得なかった。

 ロウはこれも一応謎として調査報告書に書いておこうと心に決めると、歩き出した。


「ライ、今はとりあえず帰ろう。危ないって分かったし十分な成果は得られた。そうだろ?」


「———。わかったよ。」


 ライも人々を助けられないどころか、埋葬すらできないこの現実を恨みつつ歩き出した。

 ライには、何をしたって救うことができないことが理解できないとは言えなかった。



 歩いてしばらくした。2人は町から離れて森の中の道路を進んでいる。

 街から離れるにつれて現実濃度が少しずつ上がり始め、67だった値が75まで回復していた。


「どうにか、生きて帰れそうだな。」


 ライが呟く。

 ロウは安堵した顔で頷きながら、現実濃度計をじっと見続ける。


 75を刺した現実濃度計を見続ける。

 瞬きをする。


 50を刺した現実濃度計を見る。

 現実濃度50。それは非常に危ない数値だ。

 ライは一瞬だけその50という値をぼーっと眺めた。


 ライの頭の中でいろいろな思考がよぎった。

 そして、今の状況を飲み込む。


「ライ、避けろ!」


 ロウはとっさにライを押し飛ばす。

 今まで気づけなかった。


 ライの後ろには無音で近づく黒い影がいた。それが今、ライに牙を立てようとしていた瞬間だったのだ。


 異生物という者がいる。

 それは、理から外れた危険な生物だ。

 全身真っ黒で骨のような外観に、鋭い腕がついたアンバランスな恰好。

 ライに後ろから近づいていたのはそんな異生物だった。


「ロウ! 逃げるぞ!」


「当たり前だ!」


 こいつに追いつかれたら、さっき見た体中が抉られた女性の死体と同じようになってしまうと、二人は直感的に理解した。逃げなければならない。

 二人は町の外側を目指して逃げ続ける。


 黒い影は怒ったように姿勢を低くすと、二人に向かって走り出した。だが、黒い影の足はそこまで速くないようだった。


 そして―――


  ▽▲▽▲▽▲


『<調査資料 "死人のいない町" 調査結果 2024/XX/XX>


 "死人のいない町"は日本XX市のXX周辺にある町です。

 以下に調査により取得した町の地図を添付します。


[画像1]



 "死人のいない町"には特殊な異生物(以下、この異生物を"サイレン"と呼ぶ)が大量にいることが確認されました。


 サイレンは以下のような異生物です。


 ・人型実態。全身が黒一色で細い。また、腕は鋭くなっていて人などを捌くのに適していると考えられる。


 ・一定周期で独特な音波を周囲にばらまく。この音波を知覚した人間は一時的に催眠状態となり、サイレンを認識できなくなるほか、死という概念を理解できなくなり主に死体を認識できなくなるなどの認識阻害を受ける。


 ・催眠状態で抵抗できない人間を一方的に捕食するために身体能力はそこまで高くないと考えられる。


 この情報を総合して、"死人のいない町"はサイレンが餌を新鮮に保つ餌場としての街であると結論づけます。』



『調査結果を受け、"死人のいない町"周辺を立ち入り禁止区域として今後一切人類は関与しないものとする。』

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