第二章

第八話

「初めまして、レイモンド様。ルナ伯爵家が娘、リシュエンヌと申します。不束者ですが、これからよろしくお願いします」


無事学園を卒業し、私はクリスフォード公爵家に嫁いだ。今は、夫となるレイモンド様と初の顔合わせだ。


「あぁ、お初にお目にかかる。クリスフォード公爵家が嫡子、レイモンドだ。君の夫になる。レイと呼んでくれ。よろしく」


そう、七歳という年齢に似合わないほど大人びた様子で自己紹介したのは、レイモンド・クリスフォード公爵令息。クリスフォード家特有の真っ直ぐな黒髪に、好奇心が見え隠れるするルビーのような瞳。未だあどけなさが残るものの、将来は美人まっただ無しであろうほど整った容姿。まぁ、前世じゃお姉様方がお好きそうな美少年ショタであった。


(私はショタ好き…というか歳下好きとかではないけれど、綺麗ね)


「私はフィーネ。前公爵夫人で、今はレイモンドの後見人です。私のことは、是非お義祖母ばあ様と呼んでください?リシュエンヌさん、ようこそ我が家へ」


前公爵夫人…お義祖母様は、なにがなんでも孫を公爵にしようとする、厳しいご夫人。という私のイメージに反して、とても親しげに接してくださった。


「はい。ではお言葉に甘えて、お義祖母ばあ様と呼ばせていただきます」


(よかった。とてもいい人そうね。なんか前世のおばあちゃんを思い出すなぁ)


前世の実の祖母も、こんな感じで温厚で優しげな雰囲気を纏っている人だった。


(おばあちゃん元気かな?)


「リシュエンヌ?ボーッとしているが、大丈夫か?体調が悪いのか?」


なんだか懐かしくなって感傷に浸っていると、レイモンド様が心配そうに顔を覗き込んできた。


「あ、えぇ。すみません。少々考え事を…」

「そうか、ならよかった。じゃあ、屋敷を案内するぞ!」


レイモンド様は嬉々として私の手を引いて歩き始めた。さっきはすごい大人びてる印象を受けたけれど、やっぱり子供らしい一面もあるようだ。


(可愛い…)


一生懸命屋敷を案内する様子に思わず私の頬がゆるむ。


一時はどうなることかと思ったけれど、案外楽しくやっていけそうだ。

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