第四話
それからは、何事もなく平和な時間が過ぎていった。いつも通り授業を受けて、友達と遊んで、卒業までの二ヶ月間を謳歌する。
唯一今までと違うことを挙げるとするなら、卒業を目前として最後だからと告白ラッシュが起こっていることだろうか。みんな、私と同じようなことをしようとしている。
婚約者をドロドロに溺愛していることが有名な第一王子などの婚約者がいる人たちを除く(婚約者がいるとわかっていながら告白をする猛者もいるが)、未だに婚約者がいないアルフレッド(王弟)や隣国から留学している王女、学園三大美姫を筆頭に連日呼び出されている。と言うことは、その三大美姫とやらの一人である私は…
「リシュエンヌ様。お慕いしています!私の恋人になっていただけませんか!?」
絶賛、呼び出し&告白されている。今日何回目…?
顔を真っ赤にしつつそう言うのは子爵家の令息。名前は確か…ベンジャミン・モース。同学年ではあるものの、同じクラスであったことは一度もない。だから関わりはなかったはずだが…
「えっと、ベンジャミン様?私の記憶にある限りお話したことはないはずなのですが…」
「なな名前!?覚えてくれて!?あ、はい!えっと、私が一方的にお慕いしていただけなので!話をさせていただくのは今日が初めてです!」
「そう…」
少し首を傾げただけで見事な狼狽えっぷりだ。自分の容姿が人の目を惹くことは自覚しているが、ここまで顔を真っ赤にして慌てられると、恐ろしいまでに感じる。
「申し訳ないけれど、婚約者がいるので、お断りさせていただきます。ごめんなさい」
二ヶ月前に婚約したことが広まらなかったせいか、いまだに私に婚約者はいることを知らない人が多い。この断り文句を使うのは今月に入って何回目か、そろそろ噂が広まってもいい頃だけどな。
「婚約者、ですか。そうですよね…リシュエンヌ様に婚約者がいないわけがないですよね…お時間いただきありがとうございました…」
そう言ってトボトボと背を向けて帰る姿に今まで振った人たちの姿に重なる。告白を断ったことを後悔はしていないけれど、やっぱり申し訳ない。
(全く、なんでみんなこんな顔だけの、中身35の女を好きになるのかしら)
そうため息を吐きながら角を曲がると、今度は侯爵家の次男が赤いチューリップを持って跪いていた。そしてその体制のまま言った(叫んだ)。
「リシュエンヌ嬢!あなたが王弟殿下と婚約していることはわかってるが!俺はあなたが好きなんだ!だから、俺と付き合ってくれ!」
「は?」
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