本編 第一章 第4話 イエロー・ハイ


ビーはとても不機嫌だった。


なぜならマスターであるレユと仲良くできる機会を自らの羞恥によって失ってしまったからである。


「カリンも!シスネも!みんなイチャイチャしすぎだよ!ボクだってマスターと仲良くしたいのにぃー!」


同じ型番で作られたはずだがカリンやほかの者より幼く変形したビーはスポーティーな格好をしていた。


シャイニーハイは、廃棄街の若者が行くクラブハウスであった。そこではもちろんほかに負けず劣らず麻薬や違法武器などが横行していた。


耳を破壊するほどの音量が響きわたるダンスホールの中を人を掻き分けて奥へと向かう。


VIP専用と書かれた両開きのドアの前には屈強な男二人が立っていた。


その前にビーは立つ。


「お嬢ちゃんこんなことろに来ちゃダメだよ。悪い大人に悪い遊びを教えられちゃうよ~」


と二人の大男が揶揄ってきた。


「そうなんだ?いったいどんな遊びなの?ボクに教えてよ!お・じ・さ・ん」


ビーは煽り返すと返答を待たずに行動に出た。


彼女は〈遍くは万雷〉というスキルを搭載されていた。それを端的に言えば電気を操るスキル。それを使って大男を二人まとめて関電させた。


「〈操雷:小〉」


液体金属の体に溜めた電気を操り気絶程度の威力を放つ。


バリバリィ!


電気が流れて少し焦げた匂いがあたりに漂う。


「くっさ」


ビーは倒れた二人の男をゴミでも見るようにしながらそれをまたいで奥へと進んでいった。


当然ながら異変を察知した警備兵がビーを取り囲みなおも増え続けている。


「おじさんたちそんなにボクと遊びたいの?」


彼女の〈遍くは万雷〉スキルは、一度使用すると少し大胆な言動してしまうところがありまさにいまそれが出ていた。


大勢の敵を前にしてビーは液体金属をシャボン玉のように宙を浮かばせはじめた。


「〈雷球〉!」


周りに浮かぶ液体金属の球に電気が走った。電気を帯びた金属球はゆっくりと動き出し電気を放つ。


ビーを取り囲んだ警備兵はそれから逃げようとするが敢え無く接触し倒れていく。


「アッハハハ!ボクに負けるなんておじさんたち、ざっこ!」


そう煽り散らかすビーに反抗する者はこの部屋に限って誰もいなかった。


極彩色に光る階段を登るとスタッフ専用のフロアへとたどり着いた。


上に上る度に警部兵の質はどんどんと良くなっていくが、ビーも電気の量が増えていき止められる者は誰もいない。


「雑魚ばっかで詰まんないよぉ!ボクは!」


高揚とした笑顔でフロアを駆けていく。傍目に見れば外で遊ぶのが大好きな元気な女の子にしか見えないがその実は屈強で装備も万端の男たちを一掃していた。


管理フロア、警備兵の準備フロア、そして最後は責任者フロア。


階段の最後の段を足を掛けて、最上階まで辿り着いた。


「おじさんがぁここの責任者さんですか?」


ハイになったビーは少し甘ったるい声で奥の席に座るふくよかな男に話しかけた。


「ああそうだよ、お嬢さん♡僕ちんがここの責任者さ☆」


その体についた肉は服に納まることなく溢れた状態で立ち上がりビーに近寄ってきた。


特殊装備に身を包んだ警備兵が彼を囲んでいる。


「おじさんはねぇーキミみたいな子にはお仕置きが必要だと思ってるんだ☆」

「へぇ・・・じゃあさーその周りにいる人どっかに寄越してくれないかなぁ?そしたら二人っきりでお仕置きできるよ。お・じ・さ・ん」


ビーのあおりは止まることなく目の前にふくよかな男に浴びせる。


「そうないいじゃないか、みんなで一緒に遊ぼうぜ!お嬢さん♡」


男はズボンを上げて周りの警備兵に声を荒げた。


「お前たちあの女を捕まえろ!絶対に殺すんじゃないぞ!大人をなめるじゃねぇってこと教えてやらないとなぁ!」


合図とばかりに警備兵は散開しビーに迫る。


「〈雷球〉」


電気を帯びた金属球を無数に出して接近を阻止する。そしてどんどんと拡がり空間を占拠していく。


「どうしたの、来ないのかな?」


警備兵は腕につけているモジュールをタップすると身に着けている鎧は黒く変色した。警備兵は電球の舞う中を歩きだしビーに迫ってきた。


「へぇ絶縁体かぁ、おじさんたちもやるねぇ」


ビーはそれでも余裕そうにしていた。


「じゃあボクも少し頑張っちゃおうかな」


〈電球〉が突如として姿を消した。あたりは一気に暗くなった。代わりにビーが電気を帯びだし暗い中を明るく照らしていた。


「〈迅雷・操〉」


電気を帯びた彼女はその身体機能を120パーセント引き出すことができる。すべてのステータスが上昇した彼女に追いつく者はこの場所にはいなかった。


「ぐはぁ!」


警備兵の一人がその腹を抉るようにしてビーの拳がめり込んだ。


「まだぁまだぁいくよぁー!」


一瞬の走破で背後をあるいは懐に接近し拳をお見舞いする。


電気が走る度に誰かが悲鳴を上げて吹き飛んでいく。


手に持つエミット銃を構えることができずに次々と吹き飛ぶ警備兵に焦るふくよかな男。


急いで奥へと戻り自分専用の机から自分専用の金ぴかエミット改造銃を取り出した。


「どうしたの?お・じ・さ・ん」


背後から聞こえる高揚とした声。その主は侵入者。急いで振り返り銃を向ける。


「俺はまだ20歳だぁー!」


そう叫びながらビーに銃口を向けた。


バリバリバリ


電気が鳴り響き閃光が煌めく・・・と思った時ビーが帯びていた電気が消えた。


「あれ使い過ぎたかな?」


その言葉に男はにやける。


「動くなお嬢さん♡いままで散々めちゃくちゃにしてくれちゃって!今からは僕ちんがお嬢さんをめちゃくちゃにする番だぎゃー☆」


銃口は向けたまま男はビーに近寄り、全身をねめまわすようにその少し控えめな体を眺めた。


男にとっては禁断の行為に近いその背徳感に思考はピンク一色となっていた。


「そこに座れぇ!そして脱げぇ!」


興奮で大きくなった声を響かせながら目の前にいる少女を脅した。


先ほどまでの威勢はどこに行ったのか少女は指示に従い自分の服に手を掛けた。


「ふぅーふぅー」


鼻息も荒くなる。


(あれだけ暴れた少女をまさか自分が支配してしまうなんて!)


銃口を向けたその先にあるモノに視線を全力で向ける・・・と突然の閃光。


「なんだぁべぇ!!」


光が消えて目が慣れると眼前にいた少女がいなくなったいた。


「どこだ!逃げても無駄だぁ!おとなしくいうことを聞けぇ!」


男は叫び銃口を振り回し探す。


「ここだよ」


耳元で囁かれ息がかかるが驚きが勝り『ひっ!?』と飛び退いてしまう。


「ひどいなぁ、あんなに求めてきてたのに逃げるなんて」


立ち上がろうにも腰が抜けて立てずにその場に往生してしまう男にビーは近づいた。


「ボク知ってるよ。おじさんがしたかったこと」


その細くしなやかな足を片方上げた。


「ここを強く刺激してほしいんだよねぇ!」


ビーは電気を再び帯びる。そしてその力を合わせて振り下ろされたその衝撃と電気は同時に襲い掛かる。


「ぎゃああああああ!!!」


フロア中、いやその建物を抜け一帯周辺に男に声が響き渡った。


「くっさ」


焼け焦げた太った男を見下ろして侮蔑の言葉を浴びせると帯びた電気を消えた。


「ふぅー思ったより時間かかっちゃたな。ううこれじゃあレユ様に褒めてもらえないよぉー」


ビーは先ほどとうってかわって嘆くと急いでその場を後にしようとしたとき男の机に近い壁が開いた。


そのに立っていたのは歳がそういかない少女たちだった。


みんな生まれた時に状態でいる。


「助けてお姉ちゃん・・・」


その涙声にビーは気持ちを落とす。


(えぇーこれ助けないといかないよねぇーうわぁーもう絶対間に合わないやつじゃんかー)


内心で嘆きながらもここは優先すべきものを判断する。


「わかったーまかせて!・・・とりあえず着る服さがそっか!」


そうして少女たちに優しく声を掛けて微笑んだ。


────────────────────

────────────────────


読んでいただきありがとうございます。


誤字脱字があるとおもいます。


お手すきの際に良ければ報告いただければと存じます。


また、応援♡または星★を頂ければ励みになります!


併せて、より良い作品を作っていきたいと思っております。


良ければ、『読んでいてこういう展開を期待していた』や、

面白いと思っていただいている点、

『こうなれば面白くなるかも』という点のコメントなどいただけましたら幸いでございます!


どうかよろしくお願いいたします!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【転生×魔法×剣×SF×追放×主人公最強】末子として生まれた王子。実は元剣聖であり、元賢者であり、元錬金術師であり、元治癒術師である 新山田 @newyamada

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画