本編 第一章 第3話 クラブホテルにて鮮血



「どうせなら名前も決めようよ!」


ベッカの提案によって名前の決めることになった。


赤い幽子光を帯びたイムプロイドの名前は、カリン。


「ええ承知いたしました」


黄色の幽子光を帯びたイムプロイドの名前は、ビー。


「わかったー」


青い幽子光を帯びたイムプロイドは、メテオカミル。


「はいよ!」


黒い幽子光を帯びたイムプロイドは、バオ。


「うむ」


白い幽子光を帯びたイムプロイドは、シスネ。


「・・・わかった」


なんとなく思いついた名前だがなかなか悪くない。


5体の名前が決まった。


「それで決行はいつにするの?」

「今からだ」

「今から!?」

「ああ、君らの機能のテストも同時に行うから準備してくれ」


5人のイムプロイドに準備を促した。


「わたしはいつでも可能でございます」

「あたしもー」

「おれもいけまっせ」

「ワレも可能です」

「うーん」


シスネはなにか足りないのか悩んでいる様子だった。


「どうした」

「此方はーマスターを背負っていきたい・・・ダメ?」

「僕が背負うのでなく君が僕を背負うのか?」

「はい」

「うーん」


さすがに同じ年ほどに見える女の子に背負われるのは恥ずかしすぎる。


適当な理由を付けて断ろうと正面を向くすると、シスネはその大きな瞳でこちらを見つめながらなんと涙を流しはじめたのだ。


「えっ涙!?おい!そんなに背負いたかったのか?」

「いやですか・・・嫌ならいいんです。此方が悪かったのです・・・うぅ」

「ベッカお前こんな機能まで追加していたのか?」

「えっ!?いや知らないよ!」


てっきりベッカがまた勝手に機能を追加したものだと思っていたが・・・。


「マスター大丈夫かと思われます」


カリンはとても落ち着いた様子で後ろから抱き着きながら耳元でささやいてきた。


「何してるんだ?」

「殿方というのはこういうのが好きかと思いまして・・・他意はありません。ただシスネは液体金属を涙のように使ってマスターの気を引いたので、わたしはこれで気を惹いてみようと思いまして・・・」


背中に柔らかい感触を感じる。


「なるほど・・・どうやら液体金属とキミたちの相性はとてもいいみたいだな」

「そうですね・・・それに」


また耳元で囁いてきた。そして肩になにかが触れ濡れる。


「わたしだって流せますよ?、な・み・だ」

「なるほど!マスターに見てほしいときは涙を流せばいいのか!」


と仁王立ちでメテオカミルが大きな声を張り上げる。そして大粒の涙を流し始めた・・・笑顔で。


「そんなんじゃ気は惹けませんよ。それにその男性の身体では無理ですね」

「なるほど!ではこうしよう!」


青く長い髪をかき上げた美少年は、その肉体が波を立て動き出し変化していく。そして髪はそのままにとても立派なスタイルの美少女となった。


「それでこうだ!」


そしてまた涙を流し始めた・・・笑顔で。


「涙とはそんな快活な笑顔で流すものではないのですよ、メテオカミル」

「そうなのか?うーむ」


なんどかメテオカミルは表情を変えようとしてみる。


「うむオレにはむりだ!バオはどうだ?」


快活な笑顔で匙を投げて唐突に隣に立っていたバオに話を振る。


「ワレはよい」


仁王立ちのまま目を閉じてしまった。やらないを態度で示したのだろう。


「うん、そうか!」


メテオカミルも時に気にした様子も無くこの会話をようやく終えた。


────────────────────


「さてさて本題に入るがいいか?」


蛇の巣のデータバンクにアクセスできる場所に集まっている。全員の頷く姿を確認して話を進める。


「今日、廃棄街に巣食う6つの組織を強襲する」

「6つ!?1つずつじゃダメなの?」

「ああダメだ。1つずつだと騒ぎに気付いてトンズラされかねない。もしくは潜伏だ。そうなれば時間が掛かる・・・とてつもなくな」

「そっか・・・なら同時に攻めるの?」

「ああそうだ」


そして作戦とは名ばかりの決死作戦を伝える。


「カリンは、クラブホテルを」

「お任せを」

「ビーは、シャイニーハイを」

「わかった」

「メテオカミルはアックスノックを」

「はいさ!」

「バオは、カムイファミリアを」

「承知」

「さいごは?」


ベッカの質問に答える。


「当然僕だ」

「おまちを」


カリンが割って入る。


「レユ様、あなたに何かあればワタシはどうにかなってしまいます。ですのでどうかわたしたちに任せていただけませんか?」

「ダメだ・・・でももし早く終わったのなら手伝いに来てくれる分には構わない」

「はい、すぐに片づけてまいります」


ベッカの目には確かに映っていた。5人のイムプロイドの瞳が鋭く光るのを。


(これは・・・今日はこの街荒れるなー)


正にその心配は現実になる事を彼女はまだ知らない。


────────────────────


カリンはクラブホテルの前にいた。


クラブホテルは廃棄街の中にあってそれはひと際派手でいた。実際にホテルを経営しており高級な酒もカジノも常備していた。王都からも時折、羽目を外したい乗客が来るほどだ。


しかし一番の売り上げは、エミット銃と幽体干渉麻薬の販売だ。


そしてそれを管理するのがここクラブホテルの仕事であった。多額の金で最近では鉄くず山を権利を少しずつ買収していくほどに売り上げは上々だった。


カリンはバーにいた。カウンター席に座りゆっくりとカクテルを飲んでいる。


「アンタみたいな上玉がなんで一人で飲んでるんだ?」


スーツの男が隣の席に座る。とても分厚い筋肉とこれでもかとおもうほどエーテルが流れる幽子光の筋が刻まれていた。


「あら・・・ならお相手くださるのかしら?」

「ああいいぞ」


スーツの男は同じカクテルを頼んだ。


「それでどこから来たんだ?アンタみたいな上玉一回見れば忘れるわけないんだがな」

「遠くからよ」

「そうかそんで連れはいるのか?」

「一人よ」

「一人?ソイツは危ないなぁ。女が一人でなんて・・・これは誰かが付いてなきゃなぁ?」


スーツの男の腕がすっとカリンの肩に回る。


「わたしそんな安い女じゃありませんわ」


すっと手でそれを拒否する。


「なんだ連れねぇなー俺は好きだぜあんたみたいな女?」

「悪いけど待ってるのよ、人を・・・」

「さっきは連れはいないって言ってなかったけか?」

「そうかしら?」

「それよりなぁ。未だ来ないそんな奴よりよ。俺の来いよ・・・たっぷり楽しませてやるからよ」

「へぇ?どうやって」

「俺はこれでもココの責任者なんだ。このカードがあれば誰も入れないVIP専用の部屋に入れるぞ」

「アナタここの関係者だったのね」

「ああそうだ・・・ほら楽しもうぜ」


カリンの向ける視線に男は確信した。そして今度こそはと腕を回す。そして今度はうまくいった。


「その前に聞かせて下さらない?」

「?」

「クラブホテルのオーナー”マダムクラブ”どこにいるか?」

「お前何者だ?」


さっきまでの妖艶な雰囲気は鳴りを潜め張り詰めた空気が流れ始める。


「あら聞かせて下さらないの?残念・・・ならアナタの記憶に直接聞かせてもらうわ」


そして目にもとまらぬ速さで液体金属の体を動かし男のエーテル幽子光の筋に触れる。そして皮膚を貫き男の情報体に干渉していく。


「見つけた」


その怪しくも魅力的な声で呟き、男の腕から刺した指を抜いた。


「テメェ何者だ!」

「アナタそれしか言えなくなったの?」


腕を鋭利な刃物に変えて一気に斬り裂いた。鈍い音とあげ首が落ち血が流れる。


「きゃー!!!」


とどこかで女性の声が聞こえるとバーは一気に騒ぎになり一目散に皆逃げ始めた。

せっかく着飾った服もスーツもお構いなしに命惜しさに大逃走が起きる。


その中で屈強な男たちがカリンを囲みエミット小銃を構えた。躊躇うことなく目の前の敵に引き金を引いた。


液体金属にはレユお手製の刻印が刻み込まれている。そのおかげでカリンはエミット中から放たれるエネルギー弾に干渉しうることができる。


鞭のように指先をしならせエネルギーの塊を弾き男たちの首を斬り落とす。


「さて向かいましょう。さっさと目的を達成したらレユ様の元へ一番に駆け付けなければね・・・ふふふ。そしたらいっぱい抱き着いて差し上げたいわ」


カリンは先ほどのレユを後ろから抱きしめたその感触が彼女の中にあるなにかを刺激してしまったのか隙があればそのことを考えてしまう始末だった。


関係者専用入り口のドアを開き先を襲いだ。


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カリンはとても華麗に一人残らず敵の首を斬っていった、その魅力的な体を包む艶やかなドレスに血を一滴もつけることなく。


「ああいいわ!どんどんいらっしゃい。もっともっとわたしの手柄になりなさい」


彼女の声は誰にも届くことはなかった。なぜなら敵はカリンからの攻撃を受けるたびに阿鼻叫喚を響かせてしまうためかき消されてしまうのだ。


だが彼女も気にしない。なぜならその思考の中身は功績をたたえられてレユに褒められる自分の姿しかなかったのだから・・・。


どんどんと上へと上り詰めとうとう最上階までやってきた。


そこにはきらびやかな大きな部屋があった。そして例に漏れずエミット銃を持った男たちが構えている。


(まずは一人・・・)


カリンは一番近くにいた男に向けて金属の指を延長した鞭を振るおうとしたとき。


「まちな!」


奥から大きな体の女がやってきた。


「あんたか・・・あたしの可愛い部下たちの首切り落としてる女ってやつは?」

「安心なさい、あなたも時期落としてあげるわ」

「そいつは楽しみだねぇ・・・とりあえず奥に来な」


大きな女はカリンに背を向けて歩き出す。


(敵に背を向けるなんてよっぽど胆力があるか馬鹿か見物ね・・・)


カリンをその女についていくことにした。


場所は奥の部屋。マダムクラブの専用の椅子、テーブル、ソファに食べ物となんでも揃っている。


「それで何の用だい?」


マダムは大きな椅子に腰を掛けると大きなグラスに酒を注ぎ一気に飲み干した。


「アナタを殺しに来たの」

「へぇそいつは大層だねぇ」


マダムは平然と聞き流し酒を飲んだ。そして引き出しを開けてカリンの足元に何かを投げた。


「そこに10万クレジットが入っている。これでこっちに寝返えりな」


マダムはなんと大金を軽く差し出したのだ。


「悪いけど金じゃないのよ。残念ね」

「じゃあ何なのさ?」


マダムは聞き返す。


「尊き御方のためよ」

「ハッ!男かい・・・ハッハッハ!」


マダムは大きな笑い声をあげ部屋中に響かせる。


「アタシから忠告だよ。男に尽くすなんてのはやめときなぁ後で絶対後悔する羽目になるよ」


また酒を一気に飲み干した。


「ご忠告どうも・・・でもアナタが過去に出会った男の誰よりも素敵な方だから安心して」

「それは会ってみたいねぇ。っでソイツはどこにいる?アンタはソイツのためにこんなことまでやって来たってのに!」

「今は”アンハバレット”にいるわ」

「なるほどなら愛する男のためにアンタはヒットマンとしてこんなとこに来たのかい。まったく飛んだ大馬鹿だねこりゃ」


マダムはあきれた様子でカリンを見下した。なおも続く。


「魅力のある女だと思ったのに!アタシも見る目がないねぇったく」

「アンタに見る目がないのは賛同するわ。でも勘違いしているようね。わたしの尊き御方はね”アンハバレット”を潰しに行っているのよ」

「潰しに?まったくそろいもそろって馬鹿につける薬はないか」

「失礼ね・・・そろそろ死になさい!」

「それはアンタの方さ!」


マダムの張り上げた声と共に部屋にある警備システムが動き出し天井から二対のタレットが現れてそのおおきな銃口をカリンに突き付けた。


「これはアンタがこのホテルで相手したちゃちなおもちゃと違ってね。一発撃てば人の半身を吹き飛ばす代物さ・・・まぁそのかわり部屋もめちゃくちゃになっちまうがねぇ。それはアンタの思い人に払ってもらうさ!」


マダムがそういうとカリンはなんと両手を上げた。


「・・・降参よ」

「随分あっさり降参するだねぇ。まぁ許しゃしないけどね!」


マダムは勝ち誇った顔で発射ボタンを押そうとした。だが後ろから突然衝撃が走った。ゆっくりと後ろを振り返る。そこには機械人形が一人その背後から鋭い刃を突き刺していたのだ。


「なんで・・・こんなところに・・・イムプロイドがぁ」

「なんでってあなたを殺しに来たのよ」


そのイムプロイドから聞こえてきたのは今まで対峙していたはずの女の声だった。


マダムの大きな体から力が抜ける。それを見と届けると赤い幽子光を帯びたイムプロイドはカリンを模した液体金属に体にそのまま突き進み通り過ぎる。


纏った金属はそのまま鋼鉄の体に纏わりつきカリンの姿に変形した。


そしてさきほどマダムが投げたデバイスを拾う。


「ふふふ!思わぬ戦利品をゲットね、これでもっと褒めてもらえるわ!」


カリンはスキップしながら部屋を出て、残した仕事をやり遂げに行ったのだった。


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読んでいただきありがとうございます。


誤字脱字があるとおもいます。


お手すきの際に良ければ報告いただければと存じます。


また、応援♡または星★を頂ければ励みになります!


併せて、より良い作品を作っていきたいと思っております。


良ければ、『読んでいてこういう展開を期待していた』や、

面白いと思っていただいている点、

『こうなれば面白くなるかも』という点のコメントなどいただけましたら幸いでございます!


どうかよろしくお願いいたします!

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