本編 第一章 第1話 皇位継承権受領式典から”廃棄街の王”より


ここまで読んでいただき誠にありがとうございます!


応援や星など本当に励みになっています。休憩がてらに星の数など眺めて癒されています。


さて本話からが第一話という感じになっていますので是非読んでいただければなと思います!


よろしくお願いいたします!!


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皇位継承権受領式典。


これは皇帝の子供が15歳なった際に行われる式典である。各貴族も集まり盛大に行われるこの催しは、新たな皇位を争う意思を示しそれに伴う派閥の誕生を意味する。


その式典に集まった貴族たちは、誰がどこにつくのかの探り合いをするために集まっているといっても過言ではないのだ。


そして今日その皇位継承権受領を行う皇帝の子は僕である。


「皇子準備はいいですか?」

「ああ」

「この式典が終われば、あなたは正式に皇位継承権保持者として生きていくのですよ!」


エイレ・カレイナ・ラクシャータ。母の親友にして皇国騎士。10年前の出来事以降

親交を深め今は母から近衛騎士を譲られるという名目の御目付として世話をしてくれている。


普段とは違う公式の場に出向くため彼女は御衣に身を包んでいる。


御衣は男女ともに布一枚を体に巻き結んでいる服だ。肌面積を多くしているのが伝統としてあるらしく理由はその方がエーテルインプラント技術によって体に移植された幽子光の筋が見えるのが美しいんだそうだ。


皇族はそれにもう一つ豪勢さを付け足したような洋装となっている。


そんな美麗な服を着た彼女はとても不満そうな表情を浮かべていた。


「分かってる」

「分かっているのならもう少ししっかりしてもらわないと」

「してるさ」

「ふぅーまったく10年前のアナタ様は一体どこに消えてしまったのですか?」

「いるさここに」

「そうではなく!」

「わかってる・・・何とかするさ。それに始まるぞ」

「!・・・この続きは後で」

「・・・ああ」


大きな扉が重々しくあるいは威厳に満ちた様を表すように、ゆっくりと広間の光こちらへ注ぐがごとくを開いていく。


貴賓席には多くの貴族が座りジッとこちらを見ている、そんな中に一歩前へ歩き出す。


するとそれを祝福するように拍手が起こった。


視界の先にいるはこの国の頂点。皇帝フェルディナンド・エーギン・タートルット。彼は齢60を超えるが未だその気配は、覇道を征く者にしか纏えぬ人を屈服させる力を感じさせるいわば圧力のようなものがあった。


玉座の間、皇帝の座るその御前で平伏する。たとえ血のつながった子であってもそれはほかの者と変わらない。


「久しいな・・・我が子よ」


響くその声はまさしく皇帝。


「お久しぶりです。フェルディナンド皇帝陛下」

「うむ・・・顔を上げよ」

「ハッ!」


平伏したまま顔のみを上げたことで、その視界に初めて皇帝の姿が映る。


肩肘を突き頬を支えるようにしたその姿勢は、些末なことをさっさと済ませようとしているようにも見えた。


その表情は眉間に皺をよせ、口は堅く結ばれ目は一度見たが最後外すことなど許されないように思わせる力づき瞳だった。


「さて・・・お前は今日をもってこの皇位継承コードをその身に宿す。そうなれば時期皇帝の座を巡り同じ血を分けた兄妹たちと争うことになる。だが貴様にそれができるとは思えない。自らの母の命の危険を招き、幼少の頃に見せたその才能をこの10年で見事に腐らせた。よって・・・私は貴様が皇位継承コードを受け取るのたる資格はないと考えている。レユ・エーギル・タートルット、貴様は私の意見に異論はあるか?」

「・・・ありません」

「であるか」


その瞳は今だ力強く上から注がれている。その目の奥にあるのは落胆しているのか、はたまた怒っているのか全く別の感情か全くわからない。


そのとき背後から声が響いた。


「父上!御話の最中とは存じますがよろしいでしょうか!」


そこに割って入ってきたのは、クツル・エーギル・タートルット。血のつながった妹であり宿敵であった者だ。


彼女は希代の多芸者であると認識されていた。


それもそのはずである、中身は1000年前にこの大陸を恐怖に染めた白き魔女本人なのだ。


治癒術は言うまでも無く、魔術に関してもその才能は突出しており、さらには武芸まで難なくこなし今では彼女に宮廷内の人間が余すことなく魅了されている始末である。


それは皇帝も例外でなく、なんと驚いたことに数十人兄弟がいる中でも彼女を溺愛しているらしく多忙な中、毎週会いに行っているらしい。


そんな間柄だ・・・当然誰よりも皇帝の機嫌を損ねることはない。


「クツルか・・・どうした?」

「はい、私の情けない兄上の件・・・もしよろしければ皇位継承コードを譲ってはいただけないでしょうか?」

「5歳のお前にか・・・フハハハその歳にして覇道を歩む者の片鱗をみせるか・・・よかろう。くれてやっても構わない。レユ・エーギル・タートルット貴様はそれでよいか?」

「・・・はい」

「お待ちください!皇帝陛下」

「貴様これは皇家様方たちの話に割り込む権利があると思っているのか!」

「よい・・・エイレ・カレイナ・ラクシャータ。貴様のこれまで仕えてきたその忠誠心に免じて許してやろう。話せ」

「ありがとうございます。レユ皇子は確かにここ10年ほどおとなしくされておりました。しかしその10年前、我々が撤退を強いられて以来、秩序も無く膨れ上がっていた第八セクターに蔓延る無法の集団の一つを制圧して見せました!それは次世代を担う皇族としての役目を全うしたことになりませんでしょうか?それを含めてぜひもう一度ご採択を!」


エイレは平伏し、滴る汗が床に敷かれた赤いカーペットに落ちる。


「ふむ。たしかにな一考の価値はある・・・だがそれは皇族であるのなら自身の口で言ってしかるべきもの。貴様の傲慢ゆえか・・・はたまた我が側室の血の影響か。貴様はどうしたい?レユ・エーギル・タートルット」

「わたしは──」

「父上!」


クツル・エーギル・タートルットが割って入る。


「この情けない兄は、確かに10年前は才能あふれる者だったのでしょう。しかし今は腑抜けすべての学問で落第し、その学芸では皇国にある院に通うことは皇族の恥と言われてきました。それが皇位継承コードを手に入れたからと言って過去の栄光が再び光を放つとは思えませぬ!」

「実妹にそうまで言われて何か言うことはないのか?」

「・・・・」

「であるか・・・よかろう!択は成った」


その手に皇位継承コードの入ったアストラル情報体が入った幽子結晶が握られた。


「これは・・・クツル・エーギル・タートルット貴様にやろう。レユ・エーギル・タートルット・・・下がってよいぞ」

「・・・はい」


来た道を戻る。来た時に響いた拍手は無く、注がれるような視線ははるか後方で行われた継承式に注がれていた。


「アナタは何をやっているのですか!」


エイレは激昂した様子でこちらに迫ってきた。当然である。


「そんな大きな声を出さなくても聞こえている。それに自分がやったことは理解している」

「なにもあなたは分かっておりません!皇位継承権を持っていないというのはこの先この国を追い出されかねないのですよ!」

「かねないじゃない・・・実際追い出されることは確定だな」

「じゃあなぜ?」

「エイレ卿あなたには関係ない」

「関係ない!?何を言って──」

「いいんだ。これで」


その声は廊下に響くが聞かず答えずその場を去った。


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時間は少し遡る。


そこは宮廷内のある場所での出来事。


「兄さまや」

「今は誰もいないぞ」

「そうかそれなら、単刀直入に聞くが、お前は皇位継承を受ける気があるのか?」

「ない」

「・・・じゃろうな。ならわっちと取引しないか?」

「取引?」

「いかにも!お前さんの皇位継承を阻止してやるでなわっちに協力せんか?」

「どんな協力だ?」

「廃棄街が欲しい」

「どうしてだ?」

「実際にはそのものではなく支配権が欲しいのだ!そのためには実行支配する必要があるがお前さんなら朝飯前じゃろ?」

「支配なんてそんな事して何になる?たかだか廃棄街に根付く組織の一つを滅ぼしたに過ぎない。ほかもそううまくいくとは思えないが?」

「何を言っているんじゃ!お前さんは既に食ろう取る途中みたいなものじゃろう?」

「それに一番はなんでお前がそんなことを望んでいるのかだ。まさか大陸支配の第一歩なんていうんじゃないだろうな?」


闘気を放つ。がどこ吹く風と言わんばかりに気にせずクツルはつづける。


「答えに近いが違うんじゃ!」

「近い?」

「そうじゃ!わっちはな!この国の皇帝になりたいのじゃ!」

「は?」

「皇帝になればわっちの思いのままなのじゃろう?であればいつでもパンの代わりにケーキを食べられる!フフフ!」

「そんなことのために皇帝になる気か?」

「そんなこととはわっちにとっては立派な問題じゃ!それにそれだけじゃない!この国の分断を止めてみせるぞ?」

「・・・なるほどな」


エーテル技術の確立以降、魔術を含めた技術がそのまま置き換えられたことで起きている伝統派と革新派の分断・・・それは未だくすぶり続けている。


「だが今の皇帝でさえできないことをお前ができるのか?」

「ケーキが食いたい放題ならな」

「本気じゃないのか」

「本気じゃよ」

「そうかなぜ分断を止めたいのかは聞かん。・・・取引するならこちらからも条件がある」

「ほう?・・・廃棄街をなんで支配したいのかは聞かんのか?」

「それは大方理解できる」


クツルは大方それを足掛かりに自身の皇帝の道を固める一手にしたいのだろう。


「ほうか・・・それなら条件とはなんじゃ?」

「ああもし廃棄街を支配できた暁には・・・」

「暁には?」

「この国から出してくれ」

「嫌じゃ」

「なぜだ?かなりの好条件だと思うが?」

「それでも嫌じゃ」

「?」


言葉でなく表情で疑問を投げかけてみる。


「お前さんがいなければ張り合う相手がいなくなるじゃろ!そんなの嫌じゃ!」

「お前はこれから皇位継承権を持つ皇帝の子たちと次世代の皇帝を競って争うんだろう?なら張り合いはあるだろ?」

「うーそういうことじゃないんじゃ!」

「わかった、わかった。なら皇位継承権を受け継がないとなれば皇家の名をはく奪されて追放だ。そうなったら受け入れろ」

「まかせろそんなことはさせぬ」

「ああ・・・期待してるよ」


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時はまた戻る。


”蛇の巣”にてベッカに話しかける。


「どうしたの?こんな時間に」

「話がある」


事情を話す。


「ええーどうすんのさ!これから」

「廃棄街を支配する」

「簡単に言ってくれるなぁーもう。それじゃどこからやる?」

「いいのか?」

「今さらでしょ?」

「助かる」

「はい、はい。それじゃあ何から始めよっか?」

「ああそれはな」


彼女はオイルの跡を顔に残しながら真剣な眼で見つめてくる。


「この国から逃げる準備からだ」

「え!?」


やる気に満ちた彼女はその言葉に驚き持っていた機材の一つを落としてしまった。


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読んでいただきありがとうございます。


誤字脱字があるとおもいます。


お手すきの際に良ければ報告いただければと存じます。


また、応援♡または星★を頂ければ励みになります!


併せて、より良い作品を作っていきたいと思っております。


良ければ、『読んでいてこういう展開を期待していた』や、

面白いと思っていただいている点、

『こうなれば面白くなるかも』という点のコメントなどいただけましたら幸いでございます!


どうかよろしくお願いいたします!


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