第21話 昔の夢

「なんで遊べないの!?」


小学二年生の頃


学校帰り


カイは友達にそんな事を言われた


「ごめん、タっくん

家の手伝いがあるから」


カイも遊びたかったが親に


放課後はすぐ帰って


店を手伝えと言われていた


他の兄弟もそうしていた


「なんだよそれ!

もう知らないカイとはもう絶交だ!」


そうやってタっくんは怒って


帰ってしまった


次の日からタっくんは


口も聞いてくれなくなった


それをクラスのいじめっ子気質の奴らが


面白がってカイ無視し始めた


(なんで無視するんだろう)


だんだん悲しくなって


ある日母親に相談したところ


「どうせアンタがなんかしたんでしょ

いいから仕事手伝いな」


(どうせ...なんかした...僕のせい?)


その頃からカイは学校に行けない日が


週に一回ほどできてしまった


親は学校行かないなら


仕事てつだいをしろと言うだけだった為


週一だった休みが二回、三回と増えていく


ふと、登校できた日に先生が


「最近どうしたの?嫌な事でもあった?

お母さんからは体調不良って聞いてるけど

お店手伝ってるって聞いたから」


先生は、イジメがあるのではと考えていたそうで


原因を探るべくクラスの子供達に


いろいろ聞いて回っていた


「最近みんなに話しかけても

話してくれない

僕はなにかしたんだと思う

お母さんが言ってたんだ

アンタが何かしたから

そういう事になってるって」


実際、登校できた日でも目を合わせてくれない


そういう子供もいる


完全に孤立してしまっている状況


「そっか、わかったなんとか」


すると、男性の咳払い


頭部はツルツル、光り輝いている


「先生、ちょっと」


教頭先生が担任の先生を呼び


校長室へ


「あの、話とはなんでしょうか」


教頭に連れられ


校長室に入る先生


「先生アナタ最近イジメがあるか

生徒に聞いて回っているそうですね」


白髪混じりの校長に続いて


「困るんですよ、我が校にイジメがあるとなると

教育委員会や保護者、PTAなど評価が下がる

なので調べた報告書など我々に提出してください

こちらで選別しますので」


呆然とする先生だったが


その言葉にだんだん腹が立ってきて


「何を言っているんですか!?

子供が無視などのイジメで

困ってるんですよ?

大人が助けないでどうするんですか!」


「それが出来ないなら懲戒処分にします」


子供を助けるために職を捨てる


そんな事出来る人はあまりいない


だが


「わかりました

私の処分はお好きにしてください

私は自分の生徒を守り

間違いを正さないといけない

あのままでは、誰も笑えないです

私は私の請け負うクラスは

みんなが笑えるクラスを目指します」


翌週先生は懲戒処分を受け学校をやめた


辞める間、教師から壮絶な嫌がらせがあったそうだ


辞める時


「ごめんね、私のできる限りの事は

これからするけどもしかしたら何も

変わらないかもしれない」


先生は涙ぐみながらカイに話す


「僕こそ、ごめんなさい

先生クビになっちゃった

僕が何か間違ったことしなければ」


パチン!


カイは頬を打たれた


ジンジンと痛みが広がる


「何言ってんの!バカ!」


先生はカイを抱きしめる


少し強いくらい


「カイくん、先生はね

間違った事をしない為に教えてるんじゃない

間違ってもいい怒られてもいい

その後に気付いてちゃんとした

やり方を覚えて欲しいから

先生怒るし、今怒ってる」


学校は出来ないと怒られる場所


でも先生は違うと言う


学校はわからない、知らない事を


教わる場所


間違える場所


「間違える事は悪い事じゃない

アナタはこれからイッパイ間違える

正解がない時もある、それでも

失敗を恐れちゃいけない

間違って、考えて

やってみて、失敗して

また、やってみる

それを出来るようにするカイくんを

先生は見たいなぁ」


カイもボロボロ泣きながら先生と


抱き合った


その後、別れの挨拶をし


先生は学校を去った


それからカイは





「ごめん!タっくん

土日は遊べないけど

放課後なら遊べるようになったから

遊ぼう!」


タっくんが驚いた表情をして


「なんだよ....いまさら...」


みるみる泣き顔になっていく


「カイ...ごめん..ごめんなぁ....」


「僕こそごめんね、また遊んでくれる?」


くしゃくしゃに泣きはらした顔が


笑顔になっていく


涙は止まらず、鼻水はたれているが


「..うん!!!」


そしてカイとタっくんはやっと仲直りできた








ピピピ ピピピ


ジリジリジリジリ


目覚まし時計を止める


(...朝か、懐かしい夢を見た

タっくんと仲直りした時の

親の都合で

タっくん引っ越して

全然会えてないけど

タっくんなにしてるかなー?

それに先生は元気にしているだろうか)

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