第5話 ヴァイオリン

放課後、部活が共になかったから蓮と一緒に帰ることにした。誘ったのは僕だ。


校門を出る。蓮は今日顧問の先生に用があるらしく職員室に寄ってから来る。


5分ほど待っていると、職員室に用があった彼がやって来た。



「お疲れさん」


「おう、よし帰ろう〜」


夕焼けが煌めいている。特別なことはなにもなかったのにも関わらず、まるで僕らを包むような橙色の光が照らしていた。



「そういえば気になったんだけど、蓮の使ってるバイオリンってあの写真の時の物そのまま使ってるん?」


「そうだね、途中で変えちゃうと顎あてに違和感感じたり、少し弾きづらかったりするから」


「へー、でもバイオリンってボディ木だからすぐ劣化したりしそうだけど、それは大丈夫なの?」


「それは上手いことうちで管理してるよ、バイオリンって凄くてさ、他の楽器よりも寿命が長くて、今は作れないストラディバリウスのバイオリンなんかは300年以上保管されてるからね」



やっぱり長年やっている人は違うな。ちゃんと実技のコツだけじゃなくて歴史の知識も豊富だ。



「なるほど、為になるねー」「ちなみに最近弾いてるあの曲はなんて言うやつなの?聴いてるだけでもめっちゃ難しそうだけど...」


「あーあれは『チャルダーシュ』っていうやつだよ、同じメロディの繰り返しなんだけどとってもむずくて...」


「それ知ってるわ、『リズムの達人』にアレンジで入ってる」


「絶対難易度高いでしょ」


「まあね」



そんなことを話し、今日を終えた。明日6時間目はHR(ホームルーム)。いわば学活のようなものだ。その時に文化祭の案を募るらしい。楽しみだ。

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